愛知民報

【15.06.21】中学校歴史・公民―育鵬社、自由社版 侵略戦争正当化教科書 若者を再び戦場に送らないために― 「採択許さない」

 県内市町村の教育委員会は今年8月、来年度から4年間使用する中学校の社会科(歴史・公民)教科書を採択します。その対象には、安倍首相肝いりの、過去に日本がおこなった侵略戦争を正当化する教科書が含まれています。戦争肯定の教科書採択を許さない県民運動が急速に広がっています。

右翼勢力が主導

 中学校で使う教科書は4年毎に市町村の教育委員会が決定します。愛知県内では、名古屋市は単独で、同市外の市町村は8つの地区に分かれて共同採択しています。
 問題になっているのは、右翼勢力が主導する育鵬社と自由社がつくった歴史と公民の教科書。いずれも文部科学省の検定済みで、侵略戦争を正当化し、戦前の大日本帝国憲法を美化し、改憲へ誘導する点は共通しています。
 安倍政権が海外での自衛隊の武力行使や集団的自衛権行使ができるようにする憲法違反の戦争立法をたくらむもと、今回の教科書採択に関心と不安が広がっています。

戦前の専制政治を美化

 育鵬社版の歴史教科書(『新編新しい日本の歴史』)は、日本軍の東南アジア占領について「長く東南アジアを植民地として支配してきた欧米諸国の軍隊は、開戦から半年でほとんどが日本軍によって破られました。この日本軍の勝利に、東南アジアやインドの人々は独立への希望を抱きました」とあたかも日本軍がアジア諸国の独立に貢献したかのように描いています。
 大日本帝国憲法については「天皇は実際には政治的権限を行使することなく」と記述。天皇が「神聖ニシテ侵スヘカラス」とされ、絶対的な権限を持っていた事実にはほとんどふれていません。
 同憲法のもとでの言論、集会について「自由が保障された」と書き、治安維持法などによる国民弾圧の事実を隠しています。

改憲へ教育支配 安倍首相、日本会議が狙う

 「戦後レジーム(体制)からの脱却」をめざす安倍首相の改憲戦略の柱が、日本の侵略戦争と植民地支配を正当化する教科書によって子どもたちの教育を支配することです。
 安倍首相は、自民党幹事長だった2004年当時、「国家的重要課題」として、侵略戦争肯定の教科書採択に全力をあげるよう、同党の地方組織に通達。前回の11年教科書採択では「育鵬社版が一番いい」と推奨しました。
 安倍首相の歴史逆行を支えているのが改憲右翼団体の日本会議。前回の教科書採択の際には日本会議系の名古屋市議が議会棟内で侵略戦争肯定の教科書採択を求める集会をおこなっています。 

県民運動広がる

 県内の小・中・高校教員や学者らでつくる「戦争を肯定する教科書の採択を許さない愛知県実行委員会」は13日、育鵬社、自由社の教科書採択に反対する県民集会を行いました。
 集会では両社の歴史教科書について「愛国心教育を推進する安倍政権の意図を体現した戦争する国の戦争する子ども・国民づくりのための教科書」とするアピールを採択。
 「近代の戦争を正当化・美化し、過去の侵略戦争と植民地支配の加害の事実を記述していない」「大日本帝国憲法を賛美し、日本国憲法をGHQ(米占領軍)に押し付けられたものと否定している」などと指摘しています。
 

意見提出を 新日本婦人の会県本部が呼びかけ

 新日本婦人の会愛知県本部は、戦争を肯定する教科書を採択させないために、見本教科書の展示会の見学や、意見提出を呼びかけています。
 名古屋市緑区の女性は「私は2児の母親です。平和憲法9条が生きる内容の教科書を与えたい」と意見提出します。