愛知民報

【10.07.18】西尾市・幡豆郡合併 強行に“待った” 住民の意思問え

 西尾市と幡豆郡の一色町、吉良町、幡豆町は、来年3月の合併を目標に合併協議をすすめています。行政トップ主導の動きに、「住民不在」「吸収合併される側は不安」などの批判がおきています。

町が消える

 計画されている合併方式は西尾市への吸収。新市の名前は「西尾市」。新庁舎は西尾市役所。3つの町役場は支所に格下げされます。

 『忠臣蔵』の吉良上野介の領地であり、尾崎士郎の小説『人生劇場』の舞台となった幡豆郡3町は独立した自治体ではなくなります。

サービス低下

 一色町の日本共産党は合併問題で住民の意見を聞くアンケート活動をおこないました。
 同党の前田修・一色町議は「一色、幡豆両町の保健センターを吉良に集約する計画です。両町のセンターには保健師が常駐しなくなるので健康相談や保健教育が切られるのではないかと心配する声がでています」。

農協の二の舞

 「専門職が引き上げ、銀行機能しか残らなかった農協合併の二の舞になるのでは」――。吉良町民も不安をつのらせています。

 加藤康弘町議ら吉良町の日本共産党がおこなったアンケート調査では、「どちらかといえば」もふくめ「賛成」は22%にとどまり、「反対」が58%と多数でした。加藤町議は「合併してもいいことはないというのが町民の共通認識」と語り、合併推進ストップを訴えます。

衰退不安

 「町民に不安や不満の声があっても、共産党以外の保守系議員は『社会的流れ』と行政に追随しています。問題点を追及するのは共産党議員だけ」と憤るのは幡豆町の倉地由子・日本共産党町議。

 同町は西尾市からもっとも離れています。西尾市との公共交通機関は廃線の危機にある名鉄西尾・蒲郡線。「市域が広がれば廃線問題は解決するという議論もありますが、それは問題のすり替え」と倉地議員。

 実際、合併自治体では周辺部の衰退が社会問題になっています。

市民が動く

 今回の合併話の火付け役は、昨年7月に民主党県議から転身した榊原康正・西尾市長。
 合併の住民説明会やアンケートでは、合併の具体的なデメリットの説明はほとんどなし。西尾市の住民アンケートの回答率は43%で半数にも届かず、そのうえ合併に積極的賛成は1割しかないのに、西尾市は合併準備を進めてきました。

 議会では議員24人のうち、日本共産党の牧野勝子、牧野次郎両市議ら9人が合併に問題があるとして住民投票を求めています。

 西尾市民も、合併の賛否を問う住民投票の実施を求める直接請求運動をおこないました。法定必要数の10倍を超す1万8947人分の署名を議会に提出しました。これを受け、7月14日から臨時議会が開かれ、住民投票条例案の採決がおこなわれます。

良いことない

 小泉内閣のもとで強行された「平成大合併」は地方・地域を衰退させ、昨年夏の総選挙で自公政権退場の要因になりました。

 全国町村会は08年9月に発表した報告書『平成の合併をめぐる実態と評価』で、住民サービスの低下、行政と住民相互の連帯の弱まり、財政計画との隔たり、周辺部の衰退などの合併の弊害が噴出していることを指摘。「合併を選択せずに行政と住民の連帯を活かした効率的行財政運営に取り組む市町村を正当に評価することが必要」と、合併しない自治体を評価しました。

 愛知県内の合併自治体の住民からも「良いことは何もない」という声がでています。