愛知民報

【14.02.16】寄稿 三菱電機派遣切り裁判 弁護士加藤悠史 三菱の身勝手を批判 雇用責任認めず 派遣法の構造的な矛盾

 三菱電機派遣切り訴訟は、同社名古屋製作所で働いていた派遣労働者が、派遣先の三菱電機との黙示の労働契約の成立及び同社と各派遣会社との派遣切りに関する損害賠償請求を求めて2009年3月に提訴したもの。13年10月17日、最高裁判所が、原告らの上告棄却、上告不受理決定を行い、終結しました。

 裁判を通じて、原告・弁護団は、三菱電機が長年にわたって原告ら労働者を偽装請負・違法派遣のもとで就労させながら、身勝手な派遣切りを行ったことを批判してきました。

 裁判所も、三菱電機が違法な就労をさせていた実態を認め、地裁判決では、三菱電機に対して「もっぱら自社の生産の都合のみで、派遣労働者の就業の機会の確保に向けた配慮をまったくしないまま」「突然に労働者派遣契約を中途解約するに至ったものであり、身勝手にも甚だしいものがある」などと厳しい批判をしました。

 三菱電機派遣切り訴訟をはじめ、全国の派遣労働者の闘いにより、労働者派遣が使用者による労働者の使い捨てにつながっていることへの批判が高まり、労働者派遣法の改正(日雇い派遣の禁止、労働契約申込みなし制度の創設など)へつながりました。また、判決においても、派遣先企業の派遣切りについて、派遣労働者への配慮義務が認められ、一定の場合に損害賠償責任が発生することも認められました。

 このような成果も得られましたが、一方で、派遣先企業による雇用責任について、裁判所は一貫して認めませんでした。労働者を使用する派遣先企業が、直接的な使用者責任を負わないという労働者派遣法が構造的に有している矛盾の現れでもあります。現在の自民党政権下において、労働者派遣を全職種無制限に認めさせようとする改悪の動きがありますが、これを許さないためにも、裁判で明らかになった労働者派遣の実態を引き続き訴えていくことが必要だと感じています。