ニュース

広がるジェンダー学習会 パンフ使って対話型

「介護は長男の嫁」根強く 「男は根性」の世界だった
悩みや葛藤があって当然 自分を見つめ直す機会に

党愛知県委員会が作成した『ジェンダーってなんじゃ?Q&A』パンフレット

 知っているようで知らない「ジェンダー」。日本共産党愛知県委員会がつくった『ジェンダーってなんじゃ?Q&A』(パンフレット)を使った対話型の学習会が、新たな気づきや意見交流の機会となり地方議員や地域の党員の心に変化を生み出しています。

 日進市で1月中旬、地域の党員が「ジェンダー平等を考えるつどい」を開催。40~80代の党員・地域の人、10人余が参加しました。

 「今日のつどいの目的の一つは、『男らしさ』『女らしさ』など、日々シャワーのように降り注ぎ、価値判断の中に無意識のうちに浸透しているジェンダーに気づくことです。それではチェックしてみましょう」。講師を務める党県委ジェンダー平等委員会責任者の、すやま初美さん(42)が参加者に呼びかけます。

つどい参加者とジェンダーについて考える、すやまさん(右端)=15日、愛知県日進市

■ 一緒に考える

 つどいの資料は、ジェンダーパンフや「赤旗」新春対談(1月1日付)など。すやまさんがジェンダーパンフの最初のページをめくるよう促すと、10のチェック項目(別項)が並んだ「ジェンダーの壁」が…。

 「これは、そう思う」「これもそう」と、参加者が苦笑いとともにチェック項目にペンを走らせます。点検を終えるとみんなホッと一息。用意されたお茶とお菓子に手が伸びます。

 「ジェンダーは一般的に『社会的・文化的につくられた性差』と定義されます。自然にできたものではありません。時々の支配勢力が人民を支配・抑圧するために政治的につくり社会的に押し付けてきたものです」と、すやまさんが説明します。

 「これまでの暮らしや生活の中で当たり前だと思ってきたことが実はジェンダーだった?!」―。チェック項目がすべて当てはまった人もいて戸惑う参加者もいます。すやまさんは、内面化されたジェンダーに気づき、自己改革する大切さを訴えます。

 チェックリストのほかに▽ジェンダー平等と男女平等の違い▽日本のジェンダーギャップ指数の遅れ▽コロナ禍で女性の家事負担が増えるなどジェンダー差別が露呈したこと―などを交流。参加者からは、「長男の嫁が義理の両親の介護もしなければならないという意識が根強く、悔しい思いをした」「『男は根性』の世界で生きてきた」などの意見や疑問が出されました。

 すやまさんはさまざまな背景から語られる言葉の一つ一つを丁寧に拾い上げ一緒に考えます。医療・介護などのケア労働については、「人間は一人では生きていけず、誰かの支えを必要とするときがあります。コロナ危機を経て、家族で支える仕組みだけではなく、社会的に支える仕組みを立て直す必要があります」と説明しました。

 この日は賃金格差への憤りなど話題が尽きず、あっという間に2時間が経過。つどいに参加した女性(67)は、「地域の人も参加して、それぞれの思いや経験を話してくれたのが良かった」。

■ 「否定しない」

日進市や豊明市議らと語り合う東郷町議の門原さん(左列奥)=23日、愛知県東郷町

 党県委は昨年1月、綱領改定で中心課題に据えられたジェンダー政策を実践するためにジェンダー平等委員会を発足させ、学習パンフ(1万部)を作成。学習会の講師も積極的に務め、これまで20回の学習会に講師を派遣してきました。

 高橋真生子事務局長(46)は、「この分野は悩みや葛藤があって当然です。私自身、学習会を重ねるたびに認識が深まったり新しくなったりしています。ジェンダー平等の課題に党全体として取り組んでいくために、党員一人ひとりが自分の問題として捉えてほしい」と話します。

 学習会で大切にしているのは、誰かの意見を否定したり攻撃したりしないこと、自分の問題について積極的に話すこと。自身の思いを話せる安全な空間であることが重要だと高橋さんは指摘します。

 知多地区では議会などでのハラスメントをきっかけに昨年5月から今年1月にかけて3回、高橋さんを講師に学習会を実施。地元の議員や党員が参加し、パンフに沿って学習を進めてきました。

 大府市議の久永和枝さん(52)は「自分を見つめ直す機会になった」と話します。「ジェンダー政策を『新しい政策』のように捉えていましたが、一人ひとりを尊重する政治の核になる大本の政策・人権の問題だと改めて気が付きました。議員活動にも通じる考え方をきちんと学べて良かった」

 日進市議や豊明市議らも合同で議員学習会を企画。「性的マイノリティの問題を議会でどう取り上げるか」などの実践だけでなく、「女性候補者を増やすために何が必要か」というテーマから、多忙を極める議員生活について振り返り、それぞれの思いを出し合いました。

 東郷町議の門原武志さん(51)は、自身の家庭や子育てなど個人的な悩みも語り合えたことで「学習会がホッとできる場になった」と笑顔に。「男だから女だからではなくて、誰もが自分の家族と過ごす時間や子育てする時間を保障される社会にしないといけない」

 各地の学習会が、内面化されたジェンダー差別や人権意識のゆがみと向き合い、自己改革に歩みだす党員を支え、勇気づけています。

ジェンダー学習会の講師を務める高橋さん=22日、名古屋市

■ 「ジェンダーの壁」チェックリスト

□ お茶は女性が出すものだと思っている

□ 男の子には青、女の子にはピンクの服を着せたくなる

□ 「長」・「主」がつくものは男性の役割だと感じる

□ 家事・育児を「手伝うよ」と言ってしまう、または言われたことがある

□ 「女に政治は無理」と思ったことがある

□ 男性には言わないが、女性の服装に意見を言いたくなる

□ 女性専用車両は逆差別だと思う

□ 結婚したら女性が名前を変えるのが普通だと思う

□ 選挙のアナウンサーは女性、運転手は男性の役割だと思っている

□ 力仕事は無条件に男性の仕事だと思っている

(2月1日 しんぶん赤旗)