愛知民報

【18.09.16】北海道地震 泊原発 外部電源喪失9時間半 「停止中でよかった」浜岡原発設計者語る

 6日発生した北海道地震で、北海道電力泊原子力発電所(北海道泊村、207㌔㍗)1―3号機の外部電源が停電により喪失。一時、非常用ディーゼル発電機による電源で核燃料を冷却する事態になりました。
 非常用発電機で電気を供給し、使用済み燃料プールの冷却をつづけたのは約9時間半。原子炉3基はいずれも運転停止中で、原子炉内に核燃料はありませんでした。泊原発は2011年3月の東日本大震災の翌年5月から定期検査のため運転を停止。以降、再稼働していません。
 震源に近い北海道胆振(いぶり)東部の厚真(あつま)町では震度7を記録し、大規模な土砂崩れなど大きな被害が出ました。原発のある泊村は厚真町から直線距離で120㌔㍍以上離れている日本海側にあり、記録された震度は2でした。にもかかわらず緊急事態に陥りました。
 3・11東日本大震災の東京電力福島第一原発の事故から11日で7年半。今回の事態を受け、9月7日におこなわれた原発再稼働反対、原発ゼロを求める各地の「金曜行動」では、「非常電源が作動し、ことなきを得たが、地震大国の日本で原発があるということは原子力災害と隣合わせということが改めてわかった」「原発のある場所が強く揺れなくても、周辺で大規模な地震が起きれば外部電源を失う可能性はありうる、核燃料を冷やすことができなければ、取り返しのつかない事故になっていた」などと声が上がりました。

 

稼働中なら30分しか冷やせない 工学博士 渡辺淳雄さん

 愛知県から一番近い原発は中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)。本紙記者は9日、同県沼津市の市民団体が開いた浜岡原発の廃炉を求める講演会を訪れ、浜岡原発の1―3号機の基本設計をした渡辺淳雄氏(工学博士・山梨地方自治研究所副理事長)の講演を取材しました。泊原発に関する部分を紹介します。

 「原発が動いていれば全面停電はなかった」という意見があるがそれは間違い。3・11以後7年間原子炉が止まっていたから良かった。7年間止まっていて、使用済み核燃料の熱エネルギーは1億分の1になっている。もし稼働中ならディーゼル発電機の非常用電源では30分しか冷やせない。核燃料にはそのくらいの熱量がある。止まっている原発を動かすには点検を含めて半年から1年かかる。火力発電所の代替にはならない。常に最悪の事態を考えるべきだ。

 

浜岡原発は廃炉しかない 政治の意思としてゼロ決断を

 東日本大震災の震源域は海底で、岩盤が7㍍も隆起する地殻変動が起きました。南海トラフ巨大地震でも東日本大震災と同規模の地震が想定されています。浜岡原発はその震源域の真上にあります。活断層を避けるために海側に原子炉建屋、山側にタービン建屋が立地しています。
 前の海は遠浅で、冷却水の取水口は沖合にあります。取水できなれば冷却できなくなります。
 大地震で原発の敷地内に地割れが起きれば、冷却水パイプが破損する可能性があります。自動車で運ぶことができる注水ポンプを用意しても、構内の通路に地割れやでこぼこができれば走れなくなります。
 津波対策も不十分です。中電は浜岡原発に高さ22㍍の防潮堤を造りましたが、国が想定しているマグニチュード9・6の地震で発生する津波高40㍍には対応できません。
 福島原発事故による放射性物質の飛散は、核燃料が冷却できずに溶融した時に発生した水素と大気中の酸素が反応した水素爆発によるもの。「津波とは無関係。余震で配管が摩擦されて起きる火花が着火源」という専門家の指摘があります。
 浜岡原発は中電管内(愛知、岐阜、三重、長野、富士川以西の静岡)唯一の原発ですが、猛暑の今夏、浜岡停止中でも節電の要請はありませんでした。「原発ゼロ」で十分やっていけることが証明されました。
 立憲民主党、日本共産党、自由党、社民党の野党4党は今年3月、全原発の速やかな停止・廃炉を掲げた「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」(原発ゼロ基本法案)を衆院に共同提出しました。政治の意思として「原発ゼロ」を決断するものです。