愛知民報

【10.11.28】児童虐待 公的セーフティネットを 貧困対策も急務 保育所の役割大事

 20日で児童虐待防止法施行から10年。今も虐待を受ける子どもはあとを絶たず、死亡事件も起きています。2008年度に名古屋市の児童相談所が受けた児童虐待の相談数は720件。07年度の850件と比べて減ってはいますが、03年度の457件と比べると大幅に増えています。1000人当たりの虐待相談対応件数は、5年前より就学前児童で2・72件、小学生2・36件、中学生1・5件と、どの年齢層でも大幅に増えています。

安全未確認

 厚生労働省は9月30日、今年4~6月に虐待通告を受けた児童の安全確認についての調査報告を発表しました。全国の通告総数は1万3469件、うち8月30日時点で安全が未確認のケースが261件あることがわかりました。

 同省は2007年1月、児童相談所に虐待通告を寄せられた場合、48時間以内の安全確認がのぞましいというルールを設定しました。

 愛知県(名古屋市を除く)の場合、今年4月1日から6月30日までの虐待通告件数は307件。8月30日までに全員の安全が確認されました。名古屋市の通告件数は186件。同時点で未確認は1件ありました。

学校や病院からも

 児童相談所が幼稚園や学校に安否確認を依頼するケースもありまます。

 「家に帰りたくない」という子どもについて、学校が虐待と疑い、児童相談所に電話連絡。一時保護にいたった例も。

 病院から児童相談所に「子どもがぐったりしている」「不自然な外傷を受けている」との通報もあります。

 虐待を防ぐ上で、公的なセーフティネットが求められています。

背景に貧困

 児童相談所関係者は、児童虐待と貧困が重なり合っていると言います。

 病気や失業、パート・派遣などの不安定就労で所得が低い保護者の経済的なストレスは虐待の大きな要因になります。

 貧困のため居住環境も劣悪です。

虐待の連鎖

 自分が虐待していることを自覚していない親もいます。暴力に問題意識を持てないから相談せずに事態が深刻化する例もあります。

 虐待を受けている子どもは、不登校、万引き、年齢に合わない性的関心などの問題を抱えたまま成長し、次の代へ連鎖していきます。

予算を厚く

 児童相談所関係者は「児童虐待防止には社会的コストが必要。国や自治体は貧困問題解決のために、雇用、住宅、福祉サービス、保育に重点的にお金を使うべき」と強調します。

 公的な保育サービスの拡充も求められています。保育所は子育ての拠点であり、子育てで悩んでいる親にアプローチができる場です。

 保育関係者は、民主党政権がすすめる保護者と施設との個別契約をうたった「子ども・子育て新システム」では虐待児に対応するのは無理があるとも言います。

 虐待が発生している家庭の親が契約に赴くことには困難があり、結果的に放置してしまうことになるからです。

 保育料のあり方は、経済的困難を抱えている家庭に対応するためにも、「応益負担」でなく「応能負担」を堅持する必要があります。