愛知民報

【09.03.08】ダム・導水路を考える?

 国と愛知県など関係自治体がすすめる木曽川水系連絡導水路と設楽ダムの建設計画に批判が高まっています。

 この導水路は岐阜県の揖斐川上流にある徳山ダムの水を長良川と木曽川に引く長距離パイプライン。事業費は約900億円。国の水資源機構が建設します。

 設楽ダムは国土交通省が東三河の豊川上流につくる総貯水量9800万トン、事業費2070億円の大型ダム。完成すれば愛知県内最大のダムになります。

 政府は2009年度予算に、導水路18億円、設楽ダム19億9千万円の事業費を盛り込みました。今日の経済危機と財政悪化のもとで、愛知県をはじめ関係自治体の巨額負担がはじまります。

 今後、地球温暖化防止の省エネや人口減少の影響から、水利用の減少傾向に拍車がかかるのは必至。

 この大型ダム・導水路は環境変化に対応できない「恐竜」のような計画です。耐用年数の尽きた自民党政治の公共事業版といえましょう。

“水余り”

 水は生活と産業に欠かせません。尾張の木曽川、西三河の矢作川、東三河の豊川にダムを造り、大量の水を確保したことが愛知の経済発展をささえました。水利用量は大幅に増えました。

 しかし、1990年代以降、水使用量は横ばい状態になります。

 県から買った工業用水を冷却や洗浄に大量使用してきた工場が節水型に変わり、使用量が減りました。

 家庭や事業所で使われている水道水もほぼ同様の傾向。1990年には普及率が99%を超え、節水意識の高まりや節水機器の普及と相まって水道使用量の伸びは止まりました。

 いまでは、給水施設能力の“遊び”が増えてきています。

「岩屋まで」

 ところが、実際の水利用のアテもないのに、将来は水需要が伸びるだろうと過大予測して長良川河口ぜきと徳山ダムが造られました。

 長良川河口ぜきの運用開始から今年で14年。開発水量の1割強しか使われていません。名古屋市の水道用水、愛知県の工業用水はまったく使われていません。

 愛知県の水資源開発関係者は言います。

 「数字的にいえば木曽川水系では岩屋ダムまでで足りている」

 その岩屋ダムも名古屋臨海工業用の未利用水をかかえています。水の大量供給・大量使用時代は終りました。

ツケ回し

 ぼう大な売れない水をかかえる県営工業用水事業を救うため、愛知県は2008年度予算で、工業用水の長良川河口ぜき未利用分の65%を県営水道事業に買い取らせました。費用総額はなんと523億円。

 380社程度の工業用水使用企業の負担分を、県営水道を使っている県民に負担させるということです。過大な水資源開発のツケ回しです。

利権の構造

 ダム建設の利水の必要性が失われ、ダムに代わる有効な洪水対策が提案されても、「予備水源」とか「環境ダム」という新たな装いで延命が図られる大型ダムと導水路。

 衆議院の国土交通委員をつとめた、せこゆき子元衆院議員(日本共産党)は、ダム暴走の背景に政財官の利権構造を指摘します。

 国民の血税が、大手ゼネコンのもうけ、天下り官僚の報酬、自民党などへの政治献金に化ける仕組みです。

(林信敏)