愛知民報

【15.06.07】国民健康保険の都道府県化 “酷保”さらに

 国民健康保険(国保)の財政運営を現行の市町村から都道府県に移すなどの医療保険改悪法が5月27日の参院本会議で可決され成立しました。日本共産党は反対しました。国民健康保険は自営業者、退職者、非正規労働者などの命と健康を守る国民皆保険制度の根幹です。都道府県化は高すぎる保険料など?酷保?と呼ばれている状態をさらに悪化させるおそれがあります。

滞納世帯16万余

 国民健康保険への国庫負担が削減されるなかで、加入者の負担能力を超える保険料(税)の高さに悲鳴があがっています。
 愛知県内の昨年6月時点の国保料(税)の滞納世帯は16万6140。国保加入世帯の15%を占めています。
 医療費負担の重さは、受診抑制や重症化につながっています。

県が?司令塔?に

 都道府県化には、保険料の住民負担を増やす仕組みが盛り込まれています。都道府県が市町村に「標準保険料率」を示したり、「納付金100%納付」を義務付けることは、市町村に保険料を上げさせる圧力になり、過酷な保険料徴収が強まるおそれがあります。
 日本共産党の小池晃参院議員は国会審議のなかで「都道府県を司令塔にした強力な医療費削減の仕組みづくり」と、安倍政権のねらいを追及しました。

国保料引き下げを

 2018年度からの国保の都道府県化実施に向け、国・県・市町村で具体化と調整がはじまります。
 減らされた国保への国庫負担を増やし、保険料・税の引き下げを求める運動が大事になっています。
 愛知県社会保障推進協議会は6月13日、国保改善運動交流集会を開き、国や県市町村にたいする運動の強化をはかります。

国保都道府県化のポイント

 2018年度実施予定。都道府県が国保の財政運営の主体となります。保険者は引き続き市町村。
 都道府県は市町村に「標準保険料率」を示します。市町村は保険料の賦課・徴収を行い、県が市町村に割り当てた「納付金」を納付します。
 収納率が悪ければ、市町村は納付金を納められなくなるので、保険料の引き上げ、徴収強化の圧力になります。

生存権を破壊 愛知県社会保障推進協議会事務局長 小松民子さん

 今回の医療法改悪は、国会での十分な審議もないままに可決されました。医療から国民を遠ざけ、さらなる負担を国民に押し付けるものです。
 国民健康保険の都道府県への移管は、いまでも高すぎる国保料(税)のいっそうの値上げを招くことになります。未納者が増え、今以上に保険証取りあげが広がる危険があります。
 病床の削減は、入院が必要な患者を無理やり在宅に追いやるものです。保険がきかない診療が広がります。お金のあるなしで命を左右するものです。
 憲法が保障する国民の生存権を壊し、自己責任へと追い込んでいく改悪は許せません。

過酷な徴収強化に 愛知県商工団体連合会副会長 服部守延さん

 多くの市町村はこれまで一般会計から国保会計へ「法定外繰り入れ」を実施して、住民負担の軽減をはかってきました。国保の都道府県化で繰り入れができなくなれば、保険料(税)負担はさらに重くなるでしょう。
 都道府県は市町村に対して納付金の100%上納を求めることになり、市町村は今以上に過酷な徴収強化に走ることは目に見えています。
 愛知県地方税滞納整理機構などによる差し押えや脅しなど、人権侵害といえる取り立てに泣かされている中小業者の仲間がいます。
 国は、国保財政に対する国費の投入を大幅に増やし、保険料負担を軽減すべきです。