JR東海のリニア中央新幹線計画に批判が噴出しています。同社の環境影響評価(アセスメント)の準備書は、名古屋市が公式文書で「記載内容の間違いが多い」と指摘するほどずさん。愛知県と同市の公聴会では、否定的意見が相次ぎました。自民、民主、公明などの建設推進勢力の政治責任が問われています。
指摘されている問題
国民的要望や必要性がない▽大深度トンネルによる自然破壊▽電磁波による健康への悪影響▽事業採算性の危うさ▽在来新幹線の3倍の電力大量消費▽関連地域開発の暴走▽巨大地震や運行事故の危険
不安相次ぐ
リニア新幹線の環境アセス準備書について、愛知県が1月11日に開いた公聴会では、応募した11人が発言。「電磁波による健康影響が心配」「地下工事で、災害時の水源となる井戸の水脈が変わる」「リニア建設ありきのアセスで不十分」など、不安の声が相次ぎました。
否定的意見
1月18日の名古屋市の公聴会では、出席した7人全員が、リニア新幹線の必要性と採算性への疑問、膨大な電力消費と温室効果ガスの発生、大規模な自然破壊など否定的意見を述べ、「計画の白紙撤回」を求める意見もでました。
公聴会で、中川武夫中京大学教授(医学博士)は「JRの準備書は、事業の必要性や路線選定の考え方が表明されていない重大な欠陥がある。事業計画があいまいで、基本的な予測条件が記載されていないなど準備書とは言えない」ときびしく批判しました。
間違い指摘
名古屋市は2月20日、準備書について同市長の意見を大村知事に提出しました。
そのなかで、事業計画や、予測条件の記載内容の不足や予測に用いた数式や出典の記載の不正確を指摘。「記載内容に間違いが多い」と、準備書のずさんさを批判しています。
大義なき計画
大村知事がJR東海に出した意見書でも、「環境影響を把握するために必要な情報が十分に示されていない」と指摘しています。
同知事はリニア新幹線沿線の知事でつくっているリニア中央新幹線建設促進期成同盟会の会長。
その知事が、準備書の不備を指摘しなければならないところにも、リニア新幹線計画に大義がないことが現れています。
沿線各地で、リニア新幹線問題を考える住民運動が広がっています。
トンネルで名駅に
愛知県内は全線地下トンネルです。名古屋市中区の堀川東岸から岐阜県境の手前までの約20??は深さ40?をこえ、地権者への補償が必要ない「大深度地下」を利用します。40?より浅いところにトンネルを掘る名古屋駅周辺は用地を買収します。
需要予測、人口減少加味せず
日本共産党の辰巳孝太郎参院議員は3月13日の参院国土交通委員会で、リニア新幹線計画の予測のずさんさを追及しました。同氏は、「リニア開通で利用者が増える」とする予測について、2045年には現役世代人口が2400万人減少するとする国の人口想定を突きつけ、リニア新幹線計画の見直しを主張しました。国側は人口構成の変化を加味した試算を行っていないことを認めました。
リニア計画に不安 広がる運動
リニア中央新幹線をめぐる問題点の学習会開催や、JR東海や自治体に意見を述べる沿線住民の取り組みが広がっています。
リニア新幹線の地下トンネルが建設予定の春日井市では、日本共産党の伊藤建治市議が議会で、同市内に無数に残っている亜炭坑跡への工事影響で地盤の沈下や陥没が起きる危険を指摘しました。
日本共産党尾張中部地区委員会は春日井市でリニア問題をテーマにシンポジウムを計画しています。
2月8日、日本共産党名古屋市議団主催の市民学習会が行われ、同党の寺澤亜志也政策委員会副責任者が講演。「白紙撤回」を求める同党の見解を紹介しました。
同月18日には「公共交通としてのJRのあり方を考える愛知懇談会」も結成されました。
革新県政の会は2月23日、名古屋駅周辺などリニア関連の大型開発事業を調査しました。
日本共産党名古屋北西地区委員会は、名古屋市西区、北区の地下をトンネルが貫く地図を印刷したビラを沿線に配布。住民から「とんでもない計画だ」という声が寄せられています。