愛知民報

【13.08.04】リニア中央新幹線 大義なき計画 日本共産党は「撤回」を主張

 JR東海が開発を進めてきた最高時速500??で東京―大阪間を走るリニア中央新幹線。国の「建設指示」を受け、JR東海は2014年度着工、27年に名古屋までの開業をめざしています。この秋には具体的なルートや駅の位置を発表します。必要性、安全性、環境影響などのまともな国民的議論がないままの?見切り発車?に批判の声が上がっています。(本紙・村瀬和弘)
 

国民的要望も必要性もない

 東京、神奈川、山梨、長野、岐阜、愛知の1都5県をほぼ直線ルートで結ぶ東京―名古屋間は全長286??のうち約256??がトンネル。深さ40?の大深度地下トンネルと南アルプスを貫く山岳トンネルで、地上区間はわずかです。
 JR東海が約9兆円の建設資金を?自己負担?しますが、長大トンネルなど難工事は必至。建設費の膨張がJR東海の経営を圧迫すれば、税金投入や運賃値上げで国民にツケが回される危険があります。11年5月、当時の民主党政権は「輸送力の限界」「東海道新幹線の老朽化」というJR東海の主張を追認し、建設を指示しました。
 輸送力は本当に限界か。東海道新幹線の輸送需要はこの20年間横ばいで、09年度の座席利用率は55・6%にとどまっています。
 東海道新幹線の老朽化や地震対策をいうなら、リニア建設ではなく、すぐに同新幹線を大規模改修すべきです。 日本共産党は、国民的要望も必要性もないリニア新幹線計画に反対し、撤回を求めています。

安全に脱出できるのか

 
 リニア中央新幹線は、電磁石の吸引・反発作用を利用し、U字形断面の軌道上を約10??浮上して走ります。運転士は乗車せず、遠隔操縦で運行されます。
 JR東海は7月16日に名古屋市で行った説明会で「最新の耐震基準にのっとって建設する」と述べました。
 しかし、地震の揺れに軌道が耐えられたとしても、トンネル内で列車が緊急停止した場合、乗客を無事に救出できるのか。同社は「煙の浸入を防止した避難通路を作る」「5??置きの非常口(立坑)からエレベーターと階段で地上に脱出できる」と説明しました。
 説明会参加者から、「何??も避難通路を歩くことが可能か」「地下40?から地上に脱出するエレベーターが止まったら本当に逃げられるのか」という疑問が出ました。

環境破壊に大きな懸念

 リニア新幹線が消費する電力は従来の新幹線の3倍。原発をなくし省エネルギーをめざす方向に逆行します。
 リニア新幹線が通過する南アルプスには自然環境の厳重な保全が求められる国立公園の区域が含まれます。トンネル掘削や工事車両の走行、その取り付け道路の設置による自然破壊が懸念されます。
 沿線の岐阜県土岐、瑞浪両市付近には「ウラン鉱床」(天然ウランを含む地層)などがあり、掘削で有害物質が流出する危険も指摘されています。JR東海は岐阜県での説明会で、黄鉄鉱を含む地層から酸性の水や重金属が流出する可能性を認めました。
 トンネルが民有地の地下を通過することによる騒音、振動や超電導磁石から発生する強力な磁場による影響の検証も必要です。
 リニア新幹線計画はきっぱり断念すべきです。