愛知民報

【12.06.10】居所不明児童生徒 愛知 全国最多 

 「居所不明児童生徒」(きょしょふめいじどうせいと)――。文部科学省は、住民票を残したまま1年以上所在不明になり、就学が確認されない小・中学生をこう呼んでいます。同省の2011年度学校基本調査では、「居所不明児童生徒」は全国で1,191人(小学生855人、中学生336人)。そのうち、愛知県が272人で、全国最多となっています。
 

 居所不明のケースは―。小・中学校に入学した後、突然、一家そろって行方不明になる、小学校の入学予定者名簿に載っていても入学せずに行方不明になる場合があります。
 借金による「一家夜逃げ」や、夫の暴力から母子が身を隠すなどの経済的、家庭的な問題も指摘されています。

 

通知したが

 文部科学省は昨年4月、「義務教育諸学校における居所不明児童生徒への対応について」という通知を都道府県や指定都市の教育委員会あてに出しました。

 学校や教育委員会が民生委員や児童相談所と連携し、情報を共有し対応するよう求めています。

 神奈川県相模原市では教育委員会が、学校から居所不明の連絡を受けると学校まかせにせず、同教委の職員が訪問調査しています。職員が2人ペアで、数回に分けて時間もずらしながら分かるまで訪問するとのこと。

 訪問調査の結果、手続きをせずに海外に転居したことが判明し、居所不明数が減ったケースもあります。

理由つかまず

 全国最多の愛知県はどうか。

 愛知県教育委員会は「県として行方不明になった理由は調査していない」。名古屋市教育委員会も「個別理由の調査はしていない」といいます。

 文科省の通知はどうなったのでしょうか。

乳幼児は

 子どもの健康維持のために、行政支援がより必要な就学前の乳幼児の状況も深刻です。

 名古屋市子ども青少年局の担当者は「就学前の子どもの正確な把握はきわめて困難」と困惑しています。

 保健所に出される出生報告をもとに、児童委員が出産した家庭を訪問する仕組みになっています。

 市担当者は「児童委員が繰り返し訪ねても不在で会えないケースや住民票があるのに家がないこともあります」と話します。

 名古屋の市営住宅で児童委員を務めた女性は「団地内でも子育て世帯の状況把握はむずかしいと感じていたが、地域はいっそう大変では」と言います。

人間の尊厳

 愛知県で居所不明になった子どもは、どこで、どんな日々を送っているのでしょうか。

 他県で居所不明になった子どもが愛知に来て、どんな暮らをしているのでしょうか。

 一宮市の舟橋一男さん(64)=印刷業=は言います。「行方不明の子どもたちの悲鳴が聞こえてくるようです。人間の尊厳を大切にする国や社会にしなければ救われません」

国は実態つかみ援助を 日本共産党参院愛知選挙区予定候補 もとむら伸子さんの話

 「行方不明の子ども、愛知が全国最悪」―。ショックを受け、すぐに調査を開始しました。

 愛知県の教育委員会は理由を調査していない状態です。名古屋市は「学校だけで把握することは困難」と回答しました。

 日本共産党議員団が調査に動き、岡崎市の2人は行方不明ではないこと、豊田市の8人のうち6人はインターナショナルスクールに通うか、海外におり、残り2名は行方不明と判明しました。

 国は、省庁を超えて居所不明の子どもの実態をつかみ、必要な援助に真剣に取り組むべきです。

 配偶者への暴力や虐待などの暴力を許さず、安定した正規雇用の確保や社会保障の充実が必要です。

 日本共産党愛知県委員会は6月下旬に、政府の関係省庁に対策を申し入れます。

根っこに親の貧困 石井拓児 愛知教育大学准教授の話

 児童生徒が居所不明になる根っこには、雇用の不安定化、親の貧困があります。製造業が大きな割合を占める愛知ではとくに、生産の縮小は雇用を直撃します。親が派遣・請負といった非正規労働者で勤務先を転々とする中で、子どもの転校手続きをせずに転居してしまうことも考えられます。

 地域で子どもの把握を強めるために、民生・児童委員、学校、市町村の連携を強める必要があると思います。