大企業に法外な利益 応能負担原則の税制に
税理士の浦野広明・立正大学客員教授を招いた学習会が1日、名古屋市で開かれました。消費税をやめさせる愛知連絡会が主催。浦野氏が「消費税は社会保障財源にならない」「世界に類のない異常に高い日本型消費税」と訴えた部分など一部を紹介します。
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消費税は福祉の財源とならず、自動車、電機などの巨大輸出製造業に法外な利益をもたらします。
トヨタ自動車の2009年の売り上げは8兆5978億円。そのうち6割を占める輸出分には消費税はかかりません。4割の国内分の消費税は1760億円。そこから、部品の仕入れにかかった消費税3866億円が引かれ、トヨタは消費税を1円も払わずに2106億円の還付金を受け取りました。10%の税率になれば還付金は2倍です。
また、リストラで正規雇用をやめて外注、子会社にすると、そこに払った金は控除の対象になります。だから派遣労働者比率は自動車産業は17%、電機産業で13%と高率です。消費税は、究極のリストラ促進税制です。
日本の消費税率はヨーロッパよりも低いから上げてもよいという論調がありますが、とんでもない。イギリスは17・5%の消費税率ですが、食料品、上下水道、住宅建設、医薬品、子供服などは0%です。日本は何にでも5%をかけます。
その結果、国税収入に占める消費税の割合は日本26%で、イギリス21・5%を上回っています。日本の消費税は今でも世界最高水準です。
力のある大企業は売り上げに消費税率を上乗せできますが、大企業の下請けはどんどん単価を下げられ、儲けが出ないけれども5%を払わされます。大企業は消費税率が上がっても構わないのです。
国民本位の応能負担原則の税制改革を行なえば新たな財源は出てきます。1990年の所得税・法人税の合計は44兆4000億円でしたが、2011年度は21兆2820億円。大企業・大資産家減税で21年前と比べると1年当たり23兆円余も減っています。これは消費税10%分に相当します。応能負担の税制に変えれば消費税はなくてもやっていけます。
「不公平な税制をただす会」が4月に発表した試算では、大企業の株式発行差金の非課税、受取配当金の益金不算入、各種引当金・準備金廃止、高額所得者の配当所得などの優遇制度をやめ、元に戻すだけでも国税・地方税で28兆円以上の財源が確保できます。
運動の基本は、憲法が明記している平和大国、生活(福祉)大国、人権大国、民主主義大国を実現すること。これらの課題が税制問題と結びついています。
勤労者・年金者は、納税者の権利を実現するために、その階層的利益の代弁者を国会に送り込むために、最大限の努力をしなければなりません。応能負担の原則は、憲法13条の「幸福追求に対する国民の権利」なのです。