愛知民報

【11.03.13】河村「市民税10%減税」とは何か

 河村たかし市長が昨年4月に結成し自ら代表をつとめる地域政党「減税日本」が名古屋を起点に全国の自治体や国会に進出しようとしています。河村「減税日本」が「庶民革命の起爆力」と位置づける「減税」とはなんでしょうか。2010年度に実施された名古屋市の「市民税10%減税」を振り返ってみます。

公約違反の金持ち減税

 河村市長の市民税10%減税は、「定率減税(金持ちはゼロ)」という同市長のマニフェストに反する「大企業・金持ち減税」という評価はいまや定説です。
 所得制限なしの一律減税方式は、もうけている大企業や所得の多い大資産家ほど減税が多くなる仕組み。トップクラスの高額所得者の年間減税額は1000万円を越えます。225万市民の半数は減税ゼロ。
 法人市民税も、納税企業のわずか0・2%に減税額の44%が集中します。最高納税企業は年間2億円を越す巨額減税になります。
 河村減税で、大企業や大資産家ほど税負担が軽くなる、逆累進がひどくなります。
 減税日本は、住民税は所得に関係なく単一税率という地方税法に従って10%の一律にしたと弁解しています。
 これはごまかし。市当局は、税額控除方式を採用すれば、現行の地方税法のもとでも中低所得者のみを対象とした減税は可能と判断していました。

空論の企業誘致

 にもかかわらず、公約違反の一律減税方式を採用したのは、減税を売り物に大企業や富裕層を誘致するねらいがあるからです。
 河村市長は「減税の狙いは企業や新しい住民にどんどん名古屋に来てもらって増収もはかっていくというもの」(『名古屋発どえりゃあ革命!』)と述べています。
 2010年度に河村減税は実施されましたが、誘致効果は見られませんでした。市長は「一年限りでは効果がない」と恒久化を主張します。
 しかし、市の依託で減税の経済的影響を試算した三菱UFJ系調査機関は「今後10年間においては、減税に伴う税収の減少分を補うほどの効果は見られない」と報告しています。

福祉削減の行革強行

 河村市長と「減税日本」は、「減税の財源は行革でまかなった」「減税が行革をうながし、ムダをはぶく」と、減税の「行革」効果を強調しています。
 問題は行革の中身。市長は「減税すると全分野で否応なしに構造改革がはじまる」「福祉にもムダがある。福祉政策の構造自体を変えていくのが私のねらい」(10年9月議会)と発言しています。
 減税実施の2010年度の行革で、市立城西病院の売却、私立高校・幼稚園授業料補助削減、市立保育園の廃止・民営化などの福祉・市民サービス切り下げが強行されました。
減税をテコにおこなう「福祉の構造改革」とは、市がおこなうべき福祉を民間まかせにすることでした。
 海水浴や運動会で交流する補助金を削減された児童養護施設の寮長は言います。「減税する余裕があるなら、子どもたちへの補助まで削らないでほしかった。税金は戻らず、行政の支援を失う、貧しい家庭や弱い立場の人々の存在を忘れていませんか」(「朝日」2月10日付)。

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 ☆岡田邦彦名古屋商工会議所会頭(当時)「減税はいいけど、という程度ではないか。本社機能の移転を節税だけで考えるのはちょっと。そう単純に世の中が動くなら苦労しない」「生きるか死ぬかの企業は税金を納めていないから減税の恩恵はない」(「中日」2010年4月29日付)

名古屋市の2010年度行政改革

 市立城西病院の売却、市立苗代保育園・汐見が丘保育園の廃止・民営化、私立高校生・幼稚園授業料補助削減、学童保育助成削減、民間保育園障害児保育補給金削減、園児寄生虫卵検査補助金廃止、中津川キャンプ場休止、子ども会ボランティア育成事業廃止、骨粗そしょう症予防教室削減、ダイオキシン分析研究センター廃止など。