愛知民報

【10.02.21】トヨタ車リコール 利益優先が背景 ユーザー、労働者、下請け業者 安全軽視に批判

 環境に配慮した“エコカー”として、国の支援を受けながら、増産に増産を重ねてきたトヨタ自動車は9日、プリウスなどハイブリッドカー4車種について、ブレーキ制御システムの不具合を理由にリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出ました。対象車両は国内だけで約22万3千台。全世界では40万台を超えます。

社会的責任を

 「トヨタは内部留保を労働者、下請け、地域に還元し、社会的責任を果たせ」と愛知県労働組合総連合(愛労連)が民主団体と共同して11日、豊田市内で第34回「トヨタ総行動」で総決起集会を開きました。

 あいさつに立った榑松佐一愛労連議長は「他社に比べてトヨタ自動車だけがリコールを増加させている。リコールの要因に利益優先のコストカットがあります。ばく大な内部留保がありながら賃上げ抑制と下請け単価切り下げを行っています。トヨタは国民の批判を受け止め、利益より安全の体質に変えるべき。自社の利益追求だけではなく社会的責任を果すべきです」と厳しく批判しました。

 参加したトヨタの関連部品メーカーで働く労働者は「繁忙期に期間工や派遣の外国人など大量採用して十分な教育や訓練を十分に受けずに働かされている。景気が悪化すれば解雇される。技術が品質管理が継承されず不十分になってくる」と語ります。

 「以前はモデルチュンジや新車発売は5年とか10年とか期間が長いサイクルだった。今は数年おきになっている。開発期間が短いので走行テストなどの安全性の実験が十分やられているか心配だ」というのは販売店で働く男性です。

下請けいじめ

 トヨタ総行動実行委員会は8日、トヨタ自動車、トヨタ車体、デンソー、アイシン精機、トヨタ紡織、豊田自動織機のトヨタグループ6社に労働環境の改善、下請け単価の引き上げを要請しました。

 同委員会は豊田市周辺の下請け中小業者800社に対してアンケートを実施。相次ぐ単価切り下げで廃業・撤退を余儀なくされています。

 総行動に参加した岡崎民主商工会の事務局員は「会員の売り上げは前年の3分の1です。廃業に追い込まれる会員が増えています。トヨタの単価切り下げが続けば、中小業者は生きていけません。トヨタがため込んだ内部留保・余剰利益金を社会のために活用すべきです」と訴えます。

 名古屋市内の4次下請けのラジエター部品工場の経営者(65)は「一昨年の世界不況以降、なんども元請けから単価を切り詰められる。安い単価でも品質を落とさないように何とか頑張っているが、もう限界に近い」といいます。

消費者の安全を

 長年にわたりプリウスに乗っている女性(73)は「人の命を預かる自動車を作る企業は惜しまず安全への投資をしてほしい。本来ならばテストコースで徹底的に不具合を洗い出してしかるべきなのに、今回のリコール騒動には怒りを覚えます。あってはならないこと」と怒りの声をあげています。