愛知民報

【09.11.15】名古屋市の「地域委員会」構想 日本共産党が見解 押し付けず議論つくすべき

安上がりの住民利用は困る

 河村たかし名古屋市長の市長選マニフェストに盛り込まれた「地域委員会(仮称)」構想を契機に、小(中)学校区の住民自治の仕組みに関心が高まっています。日本共産党名古屋市議団はこのほど、これについての「見解」を発表しました。

住民自治で地域づくり

 「見解」は、「住民が地域のことを自ら決定する仕組みは、住民のかかわり方と活用次第で、住民自治を発展させる」とし、「委員を公募も含めて選出し、十分に地域住民の要望をくみとって民主的な議論がおこなわれ、地域の問題解決のための予算を決定する権限が地域に与えられるなら、住民本位の自治体と住みよい地域をきづく草の根の力」になると評価しています。

 学区の住民自治の仕組みは、同党が参加する「革新市政の会」が1997年の名古屋市長選で提唱した学区単位の「ライフエリア」構想――高齢者が歩いて暮らせる範囲で福祉・介護、生活必需品の購入など必要なサービスを受けることができるまちづくりの推進役にもなりうると、展望を示しています。

自治ゆがめる河村「改革」

 しかし、「地域委員会(仮称)」構想が河村市長の特異な「構造改革」論と結びついた場合、住民自治がゆがめられるおそれがあると批判しています。

 河村市長は「私の考える福祉は構造改革をともなう福祉」だと言い、地域委員会がおこなう寄付金を活用した共助の福祉を強調しています。

 「見解」は、地域委員会が地域の自己決定を口実に「住民を安上がりに利用する『構造改革』の受け皿」にされかねないと批判しています。

 また、市の「地域委員会(仮称)のモデル実施内容(案)」について、学区の範囲、委員の定数と投票方法、地域予算など、モデル実施前に整理と住民合意が必要な課題が山積していると指摘しています。

 そのうえで、専門家と住民が参加する検討委員会や市議会の特別委員会、学区毎の意見交換会を検討するなど、住民自治の仕組みの議論をつくすことを提言しています。

住民合意のプロセス大切

 「見解」は、議会は市全体の予算や条例の決定、執行機関の批判・監視など重要な民主的権能をもっており、住民自治組織と議会の双方が機能することが大切としています。

 市長が「地域委員会」が通らなければ議会を解散させるという強圧的な姿勢を見せていることを「日本民主主義発祥の地ナゴヤ」の看板に反すると批判。

 市民・議会・行政の民主的な議論と検証をつうじ、新しい住民自治の仕組みを築いていくプロセス(過程)そのものが名古屋の住民自治を発展させていくと強調しています。

名古屋市「地域委員会(仮称)のモデル実施内容(案)」の概要

名古屋市「地域委員会(仮称)のモデル実施内容(案)」の概要

地域の範囲

小学校区又は中学校区

委員の選任

「公募・推薦併用型」。公募委員は立候補者の中から住民が投票で選ぶ。推薦委員は学区連絡協議会が推薦した者に対し住民が信任投票を行う。当選者を市長が選任。

委員は非常勤特別職で任期2年。報酬はなし(費用弁償のみ)

委員の定数

人口規模に応じ7人~11人(過半数が公募委員)。

投 票

 投票人は18歳以上の日本国民。投票方法は事前申込者の郵便等による投票。候補者の投票運動期間は5日間程度。

地域予算

 地域予算は地域の人口規模に応じ限度額500万円~1500万円。使途は安全・安心の確保、地域魅力の創出、福祉・子育てなど地域ぐるみ活動、環境・美化などまちづくり推進など。

委員会が決定した地域予算は市予算成立後、市が責任をもって執行。

会議の運営

 委員の互選で委員長を選出。会議は公開。「諮問会議」・「参与」を設置できる。地域委員会の運営支援のため区役所に一定数の職員を配置。

待機児保育 アパート空室で

 4日、中川区で開かれた「地域委員会」説明会に出席した河村市長は「(保育所への入所)待機児童をアパートの空室で地域の人がみる。どんなに安全で福祉のためになるか」と発言したといいます。

 児童福祉法は「市町村は…児童を保育所において保育しなければならない」と定めおり、市長の姿勢は公的保育責任の放棄につながると批判がおきています。