名古屋市昭和区で20日、子どもの命を守るために、「児童虐待」を考え合うシンポジウムが開かれました。元教員や学生ら26人が参加しました。
主催は、あいち県民教育研究所。年数回、教育や子育てなどの学習会やシンポジウムを開いています。
折出健二・愛知教育大学名誉教授、山田麻紗子・人間環境大学特任教授、萬屋育子・CAPNA(子どもの虐待防止ネットワークあいち)理事の3人が報告しました。
折出氏は、児童虐待の状況や虐待死の具体的事例を報告。「養育者(親)が孤立し、窮地に立たされている時に暴力が発生しやすい。『子どもの権利擁護』の立場から見る必要がある。児童相談所と医療、警察、弁護士などの日ごろの連携がカギ」と話しました。
元家裁調査官の山田氏は、名古屋市児童相談所に寄せられる相談や事例から実態を紹介。虐待が増加するなか、身体的虐待に比べて、心理的虐待やネグレクト(育児放棄)の比率が増えていると強調。「声明の聞きにかかる重大なものから軽微なものまで広範囲にわたる。発見が難しく常態化しやすいネグレクトへの適切な対応が課題。子どもの問題行動はSOSサインかもしれないと受け止め、保護の手をさしのべるべきだ」と語りました。
萬屋氏は、児童養護施設内の暴力・性暴力について報告。外部を入れて風通しを良くし、組織をあげて子どもを守る「安全委員会方式」を紹介。導入施設では暴力の減少、再発防止につながっていると指摘し、「導入数はまだ少ない。保護した子どもを加害者にしない。施設内の暴力、性暴力を放置しては、子どもを保護したことにならない。子どもの安心・安全を最優先にすべき」と述べました。
榊達雄研究所長は「子どもも一人の人間で人権があることを親が認識する必要がある。虐待を身近な問題ととらえ、虐待が生じない社会をつくろう」とあいさつしました。
三重県から参加した対馬あさみさんは、「私も虐待を受けていました。その経験から子ども食堂など、子どもの居場所づくりをしています。境遇を自己責任だとする風潮をなくしたいし、近いところで気軽に相談できることが大事。専門家ではなく、一市民としてできることをやっていきたい」と語りました。
(10月25日 しんぶん赤旗)