「学区連絡協」強化が先決では
河村たかし名古屋市長の3大公約(減税、議員報酬半減、地域委員会創設)の一つ「地域委員会」。昨年実施されたモデル事業を検証する意見交換会が9月8日まで、市内8区で開催中です。参加者からは制度の矛盾を問う意見が相次いでいます。
8月末に意見交換会が開かれた千種、西、緑、名東の4区。ここでは「地域委員会などつくらずとも、従来からある学区連絡協議会の補助金と権限を増やせば済むのではないか」という意見が多く聞かれました。
名古屋市はもともと、市政と市民のパイプ役としての「区政協力委員(主に自治会長などが兼任)」や、小学校区内の各種団体の連絡組織である「学区連絡協議会」が住民自治を担ってきました。学区連協は民生委員、消防団、PTA、女性団体などで構成され、災害対策や交通安全などに取り組んでいます。
地域委員会は何をしたのでしょう。2010年1月から実施されたモデル事業の委員は公募と推薦で選ばれ、学区の人口によって定数7~11人。人口に応じて500万~1500万円の予算の使い道を決めました。
一例は「地域マップの作成 525万円」(千種区)、「健康防犯パトロール事業 311万円」(西区)、「通行の安全 400万円」(緑区)、「地域のつながりづくり 493万円」(名東区)―。
地域委員はほとんど学区連協の役員です。市民からは「地域委員会の仕事は、きちっとした学区連協なら今までもやっていること」「地域委員会があったからうまくいったとは思えない。予算を既存の団体に渡せばよいのではないか」との意見が相次ぎます。また「公園整備や街路灯設置は本来、市の仕事ではないか」という指摘が各区で出されました。
活動内容を報告した元地域委員長も「地域委員会をつくるのがいいのか、学区連協に1000万円を渡すのがいいのかは、これから検証していただくこと」(緑区)、「学区連協の補助金はわずか。地域委員会だから予算がついた」(西区)と、必要なのは自由に使える予算であることを明かしています。
地域委員選任の投票率は8・7%でした。「せめて投票率が30%を超えなければ投票箱を開けないなどのルールを決めるべきでは」と民主主義の担保を求める意見に賛同が集まります。投開票事務については、市自ら「全学区での対応は困難」と配布資料に太字で記載しています。
批判相次ぐ事態に河村市長は、瑞穂区(5日)では冒頭あいさつから「補助金には使い道に限界がある」と演説を始めました。「自由に使えるカネにしようとしたら寄付金しかない。そこで『減税』がある。『減税』すれば小学校あたり8000万円、市民税を払わんでええ。その一部を地域活動に寄付する仕組みをつくる。『減税』と『地域委員会』はセットなんです」
日本共産党市議団の田口一登幹事長の話
「地域委員会」を市が行うべき仕事を住民任せにする河村流「福祉の構造改革」の受け皿にしてはなりません。学区連絡協議会など地域団体との連携協力の下に、住民自治を民主的に発展させる仕組みとなるよう、市民的な議論と検証が必要です。今回出た市民の意見も踏まえ、議会でしっかり議論していきたい。(9月8日)