「市民から企業参入に強い不安の声がある」―。保育所の待機児童対策を検討する名古屋市保育施策検討会議が8月31日に開かれ、市民が傍聴に駆けつける中、委員から営利企業の保育事業参入に反対する意見が続出しました。
名古屋市の待機児童数は全国最多で、前年比約2倍の1275人(4月1日現在。うち3歳未満児は1050人)にのぼります。
市は待機児童の解消と、国がねらう「子ども・子育て新システム」への対応を検討するために、民間保育所関係者や学者、弁護士らで構成する検討会議を設置。これまで5回の会合を重ねてきました。市はこの日、現在認められていない株式会社の保育所設置認可を盛り込んだ最終報告を見込んでいました。
しかし委員からは「企業参入の犠牲になるのは子どもたちだ。企業参入は認められない」「営利企業の参入に否定的な意見が多く、一定の結論を出すことは難しい」などの意見が相次ぎました。
銀行シンクタンクの委員は調整案について「『企業参入を認める』との文言に変えるべきだ」と発言すると、複数の委員から「市民は企業参入への強い不安感や危惧をもっている。それがある以上、企業参入が必要とは絶対に言えない」などと反論する一幕もありました。
結局、この日確認したのは、?保育所の整備は社会福祉法人等(市が認可しているNPOおよび学校法人を含む)を中心にすすめることが望ましい?社会福祉法人だけでは十分な整備ができない場合を想定し営利法人の参入を視野に入れ、認可するうえで必要な条件を検討する―との内容。これをもとに座長が最終報告案をつくり、全委員の了承を得たうえで正式に市に提出する予定です。
市は、「報告を受けてから内容を踏まえ、議会や市民の意見をきいて、市の方針を決めたい」としています。
検討会議にはこの間「もうけ本位、効率優先の企業に子どもの命を預けることはできない」など、父母や保育関係者ら2000人を超す市民から意見書が寄せられていました。
会合当日も、「公立保育園父母の会」や「愛知県小規模保育所連合会」などでつくる「保育をよくするネットワークなごや」が市に対し営利企業の参入を認めないよう要請。検討会議終了後には会場前で傍聴者による報告集会を開きました。
傍聴した服部公一・全国福祉保育労働組合東海地方本部副委員長は「親たちの切実な声と運動が委員を動かし、市の企てを押しとどめることができました。9月議会に向けて、企業参入に反対する請願署名を大きく広げ、必ず阻止したい」と話しています。
日本共産党は待機児童解消に向けた提言を発表し、営利企業参入ではなく、公立保育所と社会福祉法人の認可保育所の大幅増設を市に申し入れています。(9月3日)