愛知民報

【18.07.01】南海トラフ巨大地震 被害総計1410兆円 土木学会試算公表 耐震強化で減災できる

名古屋被害大

 南海トラフ巨大地震が起きた場合、長期的に1410兆円の被害が発生する推計をこのほど、土木学会が公表しました。「国難」レベルの被害を回避するために公共インフラの耐震化などの対策強化を提唱しています。
 同推計の特徴は、建築物の損壊などによる直接的な被害(170兆円)にくわえ道路・港湾など交通インフラや工場など生産施設が破壊されることにより経済活動が低迷することで生ずる20年間の被害(1240兆円)を試算したこと。
 納税者1人当たり、800万円前後から2000万円以上の所得縮小を予想しています。被災地域でダメージが大きいのは名古屋市で、失われる所得は1人当たり2058万円。1995年1月に発生した阪神・淡路大震災時の神戸市民の損失所得額1168万円を上回ります。
 土木学会は15年以内に道路、港湾、海岸堤防、建築物などの耐震強化に38兆円以上の事業費を投じることで509兆円、約4割分を減災できると主張しています。また、東京に集中する都市機能の分散が必要としています。

死者2万9000人

 南海トラフ巨大地震は、静岡から宮崎にかけて太平洋の海底にある溝で発生する地震のこと。最大の地震が起きれば愛知県では大きな被害が想定されます。最大震度は7。渥美半島の外海側には地震発生から約5分後に津波が到達すると予想されています。
 死者は最大2万9000人。うち、揺れによる建物の倒壊や家具等の転倒による死者は1万4000人と推計されています。県は住宅の耐震改修や家具の固定などの対策を講ずれば死者を6割減らせるとしています。

 

リニア工事中止を トンネル避難に不安

 JR東海は東京(品川)―名古屋間を結ぶリニア中央新幹線の工事を進めています。岐阜県境から名古屋市中区までの約17㌔㍍は地下40㍍より深い「大深度地下」です。トンネルには約4㌔㍍おきに「非常口」が設けられます。
 5月10日に名古屋市内でおこなわれた大深度地下使用の説明会では、地震や車両火災などの非常時に約1000人もの乗客がトンネルから脱出する経路や誘導方法などについて質問や不安の声が相次ぎました。
 JR側は「シールドトンネルは頑丈」「避難スペースを造る」などと回答。工事を進める方針を示しました。
 リニア見直しを求める「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」は6月22日、JR東海の株主総会会場前で工事中止を訴えました。