愛知民報

【15.08.30】派遣法の改悪を許すな トヨタや派遣会社は「歓迎」

 「生涯ハケン」をねらう労働者派遣法改悪案が衆議院で強行採決され、現在、参議院で審議がおこなわれています。同法案は、企業が派遣労働者を受け入れることができる期間制限=最長3年をなくし、無期限で派遣労働者を受け入れることができるようにするものです。2008年の世界金融危機(リーマンショック)による減産を理由に大量の?派遣切り?がおこなわれました。参院厚生労働委員会は9日、名古屋市内で同法案の地方公聴会をおこない、日本共産党の小池晃参院議員が質問にたちました。

 公聴会では同法改悪案について、賛成、反対の4人が意見陳述をおこないました。
 元派遣労働者のTさんは三菱電機に派遣切りされた経験を陳述しました。日本労働弁護団常任幹事の樽井直樹弁護士は労働者派遣の規制を求めました。
 トヨタ自動車の人材開発部長は「期間制限が緩和され、派遣労働者に仕事をもっと任せられる」と歓迎する態度を示しました。
 テンプスタッフ・ピープル(人材派遣会社)の専務取締役は「人材派遣は社会に必要な需給調整機能。期間制限の緩和で業務が広がる」と期待を表明しました。
 質疑をおこなった小池晃参院議員は「不安定雇用を広げる法案の問題点が浮き彫りになった。廃案をめざす」と表明しました。

廃案求める 

9日、名古屋市内でおこなわれた参院厚生労働委員会の地方公聴会での意見陳述(一部)を紹介します。

「生涯ハケン」になる 元派遣労働者

 派遣切りに遭った当事者です。2009年1月、5年2カ月働いてきた三菱電機名古屋製作所から解雇通告を受けました。
 母子家庭です。生活できなくなる恐怖と不安から親子心中も考えました。
 「使い捨ては許さない」と三菱電機を提訴しました。裁判所は三菱電機の派遣の受け入れ実態が違法なものと認定しました。
 今回の労働者派遣法改正案は大企業優遇の大改悪です。労働者は「生涯ハケン」になってしまいます。
 真に労働者を守る法律をつくってください。

常用代替の防止こそ 日本労働弁護団常任幹事 樽井直樹弁護士

 派遣切りの最中、「反貧困ネットワークあいち」を仲間とともに立ち上げ、派遣村相談会などに取り組み、裁判も行いました。大量派遣切りの悲劇を繰り返してはならないと強く思っています。
 今回の労働者派遣法改悪案の説明で需給調整機能を国が評価しているのは派遣切りを受容せよというに等しいものです。この法案が成立すれば実質的に派遣が自由化され、派遣労働の拡大に道が開かれます。
 常用代替防止の原則に立つ労働者派遣への規制強化こそ必要であり、本法案の廃案を求めます。

全国最悪の5万人 愛知で起きた大量派遣切り

 08年10月~11年3月の非正規労働者の雇止めは、全国約30万人。愛知は約5万人で全国最悪の派遣切りがおきました(厚労省資料)。
 トヨタなど輸出大企業は、好況時には全国から労働者を集めましたが、世界金融危機が起きると減産を理由に解雇しました。労働者は、職を失うと同時に寮からも追い出され、野宿生活などを余儀なくされました。
 「住む所がない」「何も食べていない」という人たちを支援する「派遣村相談会」が各地で行われました。名古屋市中村区役所では生活保護を申請する行列ができました。

違法行為を認定 三菱電機派遣切り裁判

 三菱派遣切り裁判は、同社の名古屋製作所で働いていた派遣労働者が派遣先の三菱電機との黙示の労働契約の成立と各派遣会社との派遣切りに対する損害賠償請求を求めて2009年に3月に名古屋地裁に提訴したものです。原告・弁護団は、三菱電機がおこなっていた偽装請負・違法派遣の実態を訴えました。地裁判決は三菱電機への直接雇用は認めませんでしたが、違法な労働者受け入れ実態を認定しました。