愛知民報

【14.06.08】残業代ゼロ制度で 年収166万円減 労働総研試算

 安倍政権が、財界の要求を受けて「残業代ゼロ」へ動きだしました。労働時間規制と賃金保障という大原則をブチ壊す希代の改悪です。時代逆行の“企業奴隷”制度づくりに、県内の労働界、学者、弁護士など広範な分野から批判と反対の声があがっています。

「小さく生んで大きく育てる」

 安倍首相は「残業代ゼロ」制度の適用対象となる従業者を「限定」するといいますが、これは“カラ約束”。
 同制度の導入を提案する政府の産業競争力会議のメンバー竹中平蔵慶応大学教授(人材派遣最大手パソナ会長)は“小さく生んで大きく育てる”とねらいを隠しません。
 日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は5月31日付で「『過労死促進』に政府が拍車か」と批判。中日新聞も社説で「結局はなし崩し的に働く人の多くに広がる懸念」と警告しました。
 「残業代ゼロ」制度導入の影響はどうか。労働運動総合研究所(代表理事・牧野富夫日本大学教授)の試算(2月公表)によると、1人当たりの残業代減少額は平均166万円、総額10・5兆円。残業依存の大きい愛知の家計影響は甚大です。
 労働者の賃下げは、大企業の内部留保に回るだけで、景気回復に役立ちません。過剰な内部留保を活用し、サービス残業根絶と賃上げこそ必要です。
 日本共産党の小池晃参院議員は5月29日の参院厚生労働委員会で、田村厚労相に「残業代ゼロ」の提案を撤回するよう求めました。   

残業代ゼロ政策は歴史逆行 労働運動総合研究所顧問 愛知労働問題研究所理事 大木一訓さん

 今回の残業代ゼロ政策は、前回よりさらに悪質です。
 ?あらゆる職種の労働者に適用しようとしている、?賃金と労働時間を切り離し、賃金が労働の対価であること自体を否定しようとしている、?長時間労働に対する制限を事実上なくしてしまおうとしている、?前回の場合をはるかに上回る莫大な残業代をただ取りしようとしている、?財界の一方的な要求に従い、民主的手続きを無視して、安倍首相の「指示」で事をすすめている、など。
 国際的にも日本の長時間労働の是正が強く求められている時に、これは世界と歴史の流れに逆行する暴挙です。

 怒 過労死増やす 決起集会とデモ

 「残業代ゼロ法案」、労働者派遣法改悪など、労働法制・雇用制度の改悪に反対する決起集会とデモ行進が5月27日、名古屋市で行われました。
 集会は東海労働弁護団と愛知全労協、名古屋ふれあいユニオン、労働法制愛知連絡会(愛知県労働組合総連合などが参加)が共催。労働組合の上部団体の違いを超えた取り組みになりました。
 樽井直樹弁護士(東海労働弁護団)が「残業代ゼロ法案が通れば過労死が増える。改悪に反対する世論は多数」と情勢報告しました。