愛知民報

【13.09.22】JR武豊線 無人駅拡大に不安 乗り越し精算もカメラ越しに

 JR東海は10月1日からJR武豊線(大府~武豊19・3??)の半田駅以外を無人化します。沿線の利用者から「駅員がいないと防犯上不安」「息子は車椅子生活です。今でも不便なのに介助はどうするのか」など、不満と怒りの声が上がっています。同線は1886(明治19)年に東京と大阪を結ぶ鉄道の資材運搬を目的に開業した歴史をもちます。(本紙・村瀬和弘)
 

「指定券や定期券が買えない」 アンケートに意見続々

 
 武豊線は知多半島東部の市町と名古屋市を結ぶ通勤通学路線。とくに東浦町では唯一の鉄道です。朝夕は名古屋までの直通列車もありますが、朝夕以外の時間帯は2両編成のワンマン列車。全線単線で列車本数は毎時2~3往復です。

 現在、東海道本線と接続する大府駅を除くと、有人駅は5駅。10月からは駅員配置は半田駅だけになります。

 尾張森岡、石浜両駅を除く無人駅には近距離切符用の自動券売機と自動改札機、インターホンを使った「旅客集中システム」を導入します。定期券や長距離乗車券、指定券は購入できなくなります。

 自動改札機を通過できない切符の処理やICカードのチャージ(入金)、乗り越し精算はインターホン越しに係員の遠隔誘導によって行われます。

 安全面の不安が指摘されています。唯一、有人が維持される半田駅も子会社への委託で、踏み切りや列車事故対応は大府駅が行うことになります。

 駅のバリアフリー化も遅れています。今回無人化される緒川駅は、近くの大型ショッピングセンターの買い物客も利用する東浦町の拠点ですが、高架駅でエレベーターはありません。地上からホームまでの階段は52段。列車から降りてきた子ども連れの女性はベビーカーを手にぶら下げもう片方の手で子どもを抱え階段を降りていきました。

 同線にはほかにも、改札口から跨線橋(こせんきょう)の階段を上り下りしないとホームにたどり着けない駅が残されています。

 国鉄労働組合名古屋地方本部(国労名古屋地本)は今年6月、各駅でアンケート葉書つきのビラを4000枚配布。130件を超える返信には、無人化への不満やサービス改善を求める意見がびっしり書かれていました。

 「定期券、特急券購入が不便になる」「分かりにくい切符の購入や払い戻しに困る」「駅員は緊急時に必須」「高齢者にとって機械操作は不安」「駅で倒れたときに救急車を呼んでもらえるのか」

 また、「日本一古い駅舎の亀崎駅は郷土の誇り」「駅員さんの親切で寝台列車の切符が取れ、思い出深い旅ができた」と、駅を大事に思う意見もあります。

 同労組は8月、半田市役所、東浦、武豊両町役場を訪問。アンケート結果を知らせ、行政からJRにサービス充実を働きかけるよう要請しました。

JRは地域輸送に力を 国労名古屋地本書記長 伊藤耕二さん

 アンケートでは、安全、バリアフリー、サービス、混雑、治安など利用者の不満や要望が寄せられました。私たちの活動を「この葉書がたくさんの人に届くように」と評価する声もありました。自治体の担当者との話し合いでも、武豊線を大事にすることで意見が一致しました。

 旅客集中システムによる機械化は、人員をコストとして削り、乗客は自己責任で列車に乗れという発想です。駅員は保安要員、サービス要員、そして?町の核?です。

 武豊線は朝のラッシュ時にはホームに人があふれ、積み残しが出るほど混雑します。列車の増発や車両の増結の要求も切実です。

 JR東海にはリニア中央新幹線を建設する9兆円の資金があります。その資金を地域輸送にもっと振り向けるべきです。労働組合としても、しっかり目を光らせていきます。