愛知民報

【13.09.01】徳山ダムは必要ない 浪費と環境破壊

 
 浪費と自然破壊の大型ダム計画に反対する国民的世論の高まりの中、「コンクリートから人へ」を掲げ2009年に政権に就いた民主党。しかし同党は、ダムの「再検証」を始めたものの、八ツ場ダム(群馬県)の建設容認に転換し国民を裏切りました。

 設楽ダムについても、国土交通省中部地方整備局は検証結果としてダム建設継続の原案をまとめ、大村秀章知事に意見を求めています。

 これに対し、同知事は意見表明を保留しています。この背景には設楽ダム建設に反対する県民の運動があります。

 復活した自公政権の公共事業バラマキ政策のもと、自民党などダム推進勢力は県に、計画の継続賛成の意見表明を迫っており、設楽ダムをめぐる情勢は緊迫しています。

 あらためて設楽ダムの問題点を見てみました。

過大な予測

 設楽ダム計画は国の直轄事業。高さ129?の重力式コンクリートダムで、建設費は2070億円。関連事業をふくめると3000億円を上回ります。そのうち、愛知県の負担は約1400億円と巨額です。
 設楽ダムの有効貯水量9200万?のうち、600万?(7%)を水道用水にあてる計画ですが、水需要見通しと供給目標は過大です。
 節水型生活機器の普及や水の循環利用の進展で、給水実績は横ばいか減少傾向です。
 ところが設楽ダム計画は、水需要が大幅に増える想定をしています。
 水道用水の水利権を買い取る形になる愛知県営水道の負担は152億円。県営水道が?売れない水?をかかえて、経営が悪化すれば、水道料金値上げとなって県民にツケが回ることになります。
 

利水改善

 東三河地方の水道用水、農業用水、工業用水は、豊川用水によって供給されています。
 豊川用水は2002年に、従来の水源である宇連ダム(新城市)に加え、大島ダムや4つの調整池など新たな水源施設をつくる豊川総合用水事業が完了し、供給能力が大幅に増強されました。
 今年は異常少雨で7月26日から節水が行われていますが、設楽ダム反対運動の関係者は「水量が十分ある大島ダムや佐久間導水の活用などで十分に対応できる。将来的にも設楽ダムなしで大丈夫」と語っています。

自然破壊

 設楽ダムの有効総貯水容量の65%に当る6000万?が「流水の正常な機能維持」のための容量。豊川の正常な流量を維持し、河川環境を保全するのが目的といわれます。
 環境運動のメンバーは「水余りで要らなくなったダム容量を流量維持に振り替えて巨大ダム計画を維持しようとしている。設楽ダムは天然記念物のネコギギ(ナマズの一種)が生息する自然環境を根こそぎ破壊する。河川環境を改善するというのなら建設をやめるべきだ」と批判します。

河川改修で

 国が建設目的の一つとする「洪水対策」はどうか。ダムの建設予定地は豊川の最上流部のため、中・下流部の洪水調節効果は小さいといわれています。
 河川の専門家は、ダム建設費を豊川の改修工事に振り向ける方が洪水防止に役立つと指摘しています。
 設楽ダム建設予定地の地盤のもろさも問題です。地質の専門家は「ダム建設は岩盤崩壊をひきおこし、ダム湖は水漏れする恐れがある」と指摘しています。

運動の強化へ

 設楽ダムはまだダムの本体工事に至っていません。8月18日に、設楽町内で行われた「設楽ダムの建設中止を求める会」の総会では、建設の必要性はないとして中止を求める運動の強化が確認されました。