愛知民報

【12.01.15】航空宇宙特区 県民の監視を 兵器産業の基盤強化 財界・政権・自治体が連携

 愛知・岐阜両県や名古屋市などが共同で、国に指定を求めていた「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」が12月22日、民主党政権が創設した「国際戦略総合特区」に指定されました。日本の航空宇宙産業の国際競争力の強化が目的と言われますが、武器輸出や宇宙の軍事利用をねらう兵器産業の基盤強化に直結しています。県民のきびしい監視が求められています。
 

“軍需産業都市”に

 今回指定されたのは、航空宇宙機器の主要メーカーである三菱、川崎、富士各重工業の生産拠点と名古屋大学など研究開発機関のある10地区=図。

 大村県政と中部財界は、航空宇宙産業を愛知の次世代成長産業に位置づけています。

「クラスター」は花や実などの房の意味。特区の優遇措置で、航空宇宙関連の企業集積やネットワーク化をはかるのがねらいです。

 欧米の航空機の生産拠点である米シアトルや仏トゥルーズに匹敵する「アジア最大・最強の航空宇宙産業集積地域の形成」をめざすとしています。シアトルやトゥルーズは軍需産業都市です。

     
 今回の航空宇宙産業特区指定に前後する時期に、民主党・野田内閣は、2012年度国家予算案への軍事偵察衛星の研究開発費40億円の計上、F35の次期戦闘機採用決定、戦闘機などの国際共同開発・生産への参加と輸出を解禁する「武器輸出三原則」の緩和を打ち出しました。

 海外派兵・軍拡路線をすすめる民主党政権、軍事大国化にもうけ口を求める大企業・財界、航空宇宙産業を次世代成長産業に位置づける大村愛知県政・河村名古屋市政が事実上連携し、愛知の?軍需産業都市化?がすすむおそれがあります。

 ここにきて、大村知事・河村名古屋市長の「世界と闘える愛知・名古屋」という共同スローガンは軍事的意味を持つようになってきました。

    
 特区内の航空宇宙関連企業には、国・県・関係市町村による規制緩和や税制優遇などの支援策が総合的・集中的に実施されます。

 愛知県などが検討している支援措置の柱は、輸出入航空機部品の関税撤廃と手続きの簡素化、名古屋市港区の三菱重工業大江工場周辺地区への部品製造中小企業の集中とネットワーク化、航空宇宙産業への国有地売却、緑地規制緩和による既存敷地の最大限活用、名古屋大学を中心としたCFRP(炭素繊維複合材)の研究開発拠点の形成など。

 愛知県や名古屋市などは、航空宇宙関連など高度先端産業立地補助金など従来の企業支援に加え、特区企業への新たな支援措置を検討しています=表。特区形成に自治体を動員し、住民の税金を投入するものです。

    
 民主党政権にたいし「国際戦略総合特区」の指定を働きかけてきた「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区推進協議会」に参加しているのは、三菱重工業、川崎重工業、富士重工業、東レ、中部経済団体連合会、名古屋商工会議所、愛知県、岐阜県、名古屋市、半田市、春日井市、常滑市、小牧市、弥富市、豊山町、飛島村、各務原市、名古屋港管理組合、名古屋大学、中部国際空港(株)など。

航空宇宙産業への新たな財政措置

 検討されている措置  実施自治体
 法人県民税10%相当額を基金に積み立て、 国際戦略総合特区にかかわる企業立地・研究開発
 実証実験等に対する補助制度の新設
 愛知県
 国際戦略総合特区関連事業に対する財政的 支援制度の検討・創設  名古屋市
 岐阜県企業立地促進事業補助金の拡充  岐阜県
 法人市民税の引き下げの実施に向けた取組  名古屋市
 国際戦略総合特区緑地面積率等条例の検討・制定  名古屋市
 半田市、
 常滑市、
 弥富市、
 各務原市
 中部国際空港島内での超大型貨物輸送にかかわる許可手続きの合理化・期間の短縮化  愛知県、
 愛知県企業庁、常滑市、中部国際空港?等