愛知民報

【08.01.20】変だよ「森林環境税」?

弱者に重く 強者に軽い

 愛知の神田県政が2008年度に導入し09年度から実施しようとしている「森林環境税」。

 予定税収は年間22億円。森林・里山保全と緑化推進に充てるという県独自の新税です。5年間ひと区切りの時限税で、税収は基金に積み立て活用するといいます。

 「森林環境税」の聞こえはいいけれども、その中身を踏み込んで見ると、「えっ!これなんなの?」と疑問だらけ。問題点を探ります。

 今回は税のとり方。

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 個人と法人の県民税の均等割と所得割の税額のうち、均等割に「森林環境税」を上乗せ課税します。

 個人の場合、現行の均等割は一律1000円。これに「森林環境税」500円を上乗せします。合わせて年間1500円。1・5倍の増税です。

 2005年度に均等割を課税された県民は約321万人。2007年度は約356万人に増えました。主因は、あの小泉増税の老年者非課税措置廃止などで、さらに広い低所得者から均等割をとるようになりました。「森林環境税」は低所得者ほど負担の重い庶民増税です。

 法人の方も不公平です。現在、法人県民税の均等割税額は、資本金額に応じて2万円から80万円の6階層に分かれています。資本金約4千億円のトヨタ自動車は最上階層ですが、均等割は年間80万円です。「森林環境税」はどの階層でも一律5%。世界のトヨタが負担するのは年間わずか4万円です。

 愛知県は、岡崎市と豊田市にまたがる660ヘクタール(ナゴヤドームの492倍)の山林・里山に、トヨタ自動車の研究開発施設とテストコースの用地を造成します。県は07年度予算で、調査費に14億円を投じました。山林・里山の開発で多大な恩恵を受けるのはトヨタです。なのに「森林環境税」はたった4万円。余りの不公平、大企業優遇ではないでしょうか。

 もうおわかりのように、神田県政の「森林環境税」は、森林を減少させた責任に応じた課税ではありません。地球温暖化に温室効果ガス排出量を考慮した「環境税・炭素税」でもありません。大企業や開発政治による森林破壊のツケを庶民に回す増税です。

 現行の税制を活かす財源確保策はあります。愛知県は防災費の財源として大企業の法人事業税に超過課税を実施しています。その上乗せ税率はだんだん下げていま3%。東京、大阪並の5%に戻せば、「森林環境税」を上回る税収がえられるのです。

(日本共産党元県議・林信敏)