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「日本教科書」ノー 各地で行動 市民運動で不採択

「日本教科書」社版不採択を求め、採択会場前でボードを掲げる女性ら=20日、名古屋市中区

 来年度から中学校で「道徳」が教科になり、各地で使用する教科書の採択が始まっています。各地では日本教科書社版など「戦争を肯定するような教科書はやめて」の声が高まり、運動の成果が生まれています。

■ 名古屋

 愛知県では、元教員や市民らでつくる「子どもたちに『戦争を肯定する教科書』を渡さない市民の会」が運動を続けてきました。その中で、名古屋市では教員や保護者から「日本教科書社のものは採択しないで」の声が広がり、不採択となりました。

 市民の会は、県内すべての教育委員会に日本教科書を採択しないよう要請書を提出してきました。事務局の小野政美さん(元小学校教員)は、「県内最初の名古屋で不採択が決まった。私たちの運動や市民の声が届いた成果だと思う。全県で不採択になるよう、運動を続けたい」と話します。

■ ボードを掲げて

 名古屋市教育委員会が20日に開いた会議には、市民や出版関係者が詰めかけました。傍聴席(40席)に入りきれない女性らが「道徳の教科化反対」「子どもの心を評価しないで」とボードを掲げて見守りました。

 教科書市民の会の三浦明夫事務局次長が口頭陳述。「日本教科書の教科書は戦前・戦中教育を復活させ、侵略戦争の反省もないまま、現職首相の宣伝を盛り込み、憲法の価値観、理念と対立している」と批判しました。

 教育委員会は、職員が市民から464通の意見や感想があったと報告するだけで、市民の声は公開されませんでした。

 委員からは「個人的には、首相のハワイ演説が載っている日本教科書版が一番いい」という声も出されましたが、「現場の教員の意見を優先すべきだ」との意見が出され、無記名投票で教育出版が採択されました。

■ 話しあって学ぶ

 傍聴した女性(40)は「息子が来年から中学生になので、日本教科書版が採択されず、ひと安心。中学生に自己評価させるのは乱暴じゃないのかと思う。もっと子どもの感性が大事にされ、自由であるべき。決められた物差しではかるものじゃない」と話しました。

 新日本婦人の会愛知県本部は27支部で88回の教科書カフェに取り組みました。6月から7月にかけて開かれたほとんどの教科書展示会に積極的に足を運んで感想を出し合い、「誤った『愛国心』を押し付ける教科書を採択しないで」と意見を書いてきました。20日の市教員の会議には多くの人が傍聴に駆け付けました。

 緑支部では、改装された緑図書館が展示会場にならなかったことから、「なぜ改装後から会場ではないのか。市民から意見を求めるなら、少なくとも行政区には一つは会場をつくってほしい」と、杉崎正美教育長に要請しました。

 新婦人では、展示会に行く前にカフェを開き、子どもたちに「愛国心」を押し付ける「教科化」は問題だと学習しました。話しあって学ぶことが行政に働きかける力につながっています。

(7月29日 しんぶん赤旗)