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深刻な土壌汚染の危険 トンネル掘削 JR東海、調査・対策応じず

 リニア中央新幹線のトンネル掘削工事によって深刻な土壌汚染を引き起こす可能性がある―。愛知県環境調査センターの元主任研究員・大沼淳一さん(73)は、36年にわたって水質汚染に関する調査研究をしてきた経験からその危険性を訴えます。

名古屋市 大沼淳一さん

 大沼さんが指摘するのは、愛知・岐阜県などに広く分布する「美濃帯」を掘削する危険性です。「美濃帯のなかに含まれる黄鉄鉱という鉱物は、水と酸素と反応して硫酸を生成します。それが環境汚染につながる危険があります」

 実際、これまでに美濃帯掘削によって環境汚染が引き起こされています。大沼さんは、過去に関わった調査の実例をあげます。

■ 汚染事件を調査

 一つは、愛知県犬山市でおきたカドミウム汚染米事件です。1970年代、犬山市で米が重金属のカドミウムに汚染される事件が発生し、原因究明調査を行いました。調査の結果、周辺の採石場から重金属が溶出していたことが分かりました。岩石中に存在する成分が水と空気に反応して硫酸を生成し、硫酸が重金属類を溶かしだしていたのです。その硫酸を生成したのが黄鉄鉱でした。

 農水省は、この地域を農用地土壌汚染対策地域に指定し、巨費を投じて作土の入れ替えを行いました。92年には指定解除しましたが、モニタリング調査は継続されています。

 もう一つは、岐阜県可児市でおきた水質汚染事件です。2003年、可児市の久々利川水系の新滝ヶ洞溜池で、放流された魚約1000匹が大量死しました。調査の結果、上流に設置された東海環状自動車道建設残土のストックヤードから強度に酸性をおびた浸出水が久々利川に流出していることが判明しました。

 この道路建設は国土交通省の直轄事業で、ストックヤードには88・7万立方㍍の残土が搬入されていました。

 このヤードの地中で犬山市の事件のときと同様の化学反応が起き、重金属を溶解させていたのです。

 現在、重金属を含む浸出水を、多額の税金をかけて水処理プラントで処理して放流しています。しかし、ヤード地下の状態はいまだ未掌握で、いつまで処理が続くのか分かりません。しかも、これまで2回も水処理プラントの事故が発生し、汚染水が放流されました。地域住民は汚染土の全量撤去を要求していますが国交省は応じず、事件発生から14年を経ても問題は解決していません。

 リニア工事では、愛知県春日井市や岐阜県多治見市、御嵩町、可児市などを通るさいに美濃帯にぶつかる可能性があります。大沼さんは「環境汚染を繰り返さないためには、工事段階で細心の注意を払い、モニタリング体制や危険な残土の処置の仕方などきちんとした対策が必要です」と指摘します。

 しかし、JR東海の環境影響評価書ではこの問題についてほとんど記述がありません。春日井市は、美濃帯の掘削土砂によって重金属の流出が生じないよう、十分な調査・対策を求めていますが、JR東海はこうした声にまったく応えていません。しかも、その残土の処分地も決めずに工事を進めています。

汚染事件を起こした東海環状自動車道の残土ストックヤードと浸出水処理プラント=2003年、岐阜県可児市

■ 地方の疲弊警告

 大沼さんは「美濃帯は、そのまま置いておけば問題がないのに、掘り起こすことで汚染が起きる。一度起きると何十年という単位で汚染が続くことになる」と警告します。

 「深刻な汚染を引き起こすリスクをおい、自然環境を破壊してまで、リニアを推進する意味は何なのか。もう一度立ち止まって考える必要がある。新幹線が開通すると在来線が粗末にされ過疎化に拍車がかかってきた。リニア開通がもたらすのは、さらなる都市への集中と地方の疲弊でしょう。目指すべき日本のかたちとは何なのかが問われていると思います」

(2月18日 しんぶん赤旗)