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日本共産党愛知で大演説会開催ー志位委員長が演説

核密約、普天間ー米国にモノ言えぬ政権でいいのか

 
 日本共産党愛知県委員会は、3月12日大演説会を名古屋市公会堂で開催し、志位和夫委員長が演説しました。参加者は3階席まであふれて、ロビーでも多くの人たちがビジョンに見入りました。
 志位氏は、「鳩山内閣は『対等な日米関係』を築くということを『公約』にしてきたがこの半年間の実態はどうか。核密約問題、普天間基地という国政の二つの大問題で、米国にモノ言えぬ政権だということが明瞭になった」ときびしく指摘しました。
かわえ明美参院比例予定候補は、ふるさとの岐阜県上之保村(現在の関市)でも40数年ぶりに演説会が開かれ、元村長までが案内をしてくれるなど幅広い人たちのなかで変化がおきていると報告しました。
もとむら伸子愛知選挙区予定候補は、派遣法の問題で「民主党がザル法しかつくれないなら、共産党がやるしかない。全国でも非正規切りが多い愛知の共産党が頑張らなくてだれががんばるのか」と固い決意を表明しました。(2010年3月13日)


志位委員長の演説全文

みなさん、こんばんは(「こんばんは」の声)。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫でございます(大きな拍手)。
 きょうは広い会場いっぱいに、こんなにたくさんのみなさんが足をお運びくださいましてまことにありがとうございます。私からも心からのお礼を申し上げさせていただきます(拍手)。
 参議院選挙が三ヵ月半後に迫ってまいりました。いまお話しした二人の候補者、私が言うのもなんですが、とてもすてきですね(拍手)。
 比例代表では日本共産党と書いていただく方を広げに広げていただいて、かわえ明美さんはじめ五名の全員当選をどうか勝ち取らせていただきたい。そして選挙区では定数三を争う激しい選挙ですが、もとむら伸子さん。国会に出ましたら四十年、五十年と言っておられましたから当分安心です(笑い)。定数三といいましても、みなさん、かつては八田さんの議席をみなさんの力で堂々ともっていたじゃありませんか。ぜひ比例でも選挙区でも二つの勝利を勝ち取らせてください。よろしくお願いいたします(大きな拍手)。

1.参議院選挙の争点は何か

今度の参議院選挙で問われる問題は何でしょうか。
 去年の総選挙では自・公政権を終わらせるかどうかが最大の焦点でした。国民のみなさんは退場の審判を下し、日本の政治にとって前向きの一歩の歩みが始まりました。
 ただ、この前の総選挙は、ともかくも自・公政権を倒さなければというところで議論が終わっていますでしょう。倒したあとにどういう日本をつくるか。そこまでは去年はいきませんでした。
 しかし、今年の参議院選挙は、退場の審判が下った自・公政権にかわって、そういう古い政治にかわって、どういう新しい政治をつくるのか、政治の中身が正面から問われてくる選挙でございます。
中身で勝負となったら共産党の出番ではないでしょうか(拍手)。
 どの党が新しい政治の担い手になるか。総選挙後の半年間の事実を見て、見きわめていただきたいと思います。
民主党政権、どうでしょう。政治を変えてくれという国民の強い圧力がこの政権には働いていますから、高校の授業料の無償化など、部分的には前向きの仕事もこの政権は行います。
 しかし、肝心かなめの問題では、国民のみなさんの期待を裏切るいろいろな問題が噴き出ているのではないでしょうか。
普天間基地の問題。「県外、国外に移す」といっていたのに、けっきょく沖縄に基地を押しつけようとしているじゃありませんか。
後期高齢者医療制度。このひどい「うば捨て山」の制度は撤廃といっていたのに、四年後に先送りするといっている。「四年も待てないよ」というのがみなさんの気持ちではないでしょうか(拍手)。
 労働者派遣法の問題でも、改正をいっていたのに、中身が出てきたら財界にひざを屈した、抜け穴だらけの「使い捨て」労働温存法が出てまいりました。
 結局大もとにある外交では「アメリカ言いなり」、内政では「財界中心」という古い政治から抜け出せていないのが新しい政権の姿ではないでしょうか。
 それにくわえて、政治とカネをめぐる疑惑が次々と出てまいりました。
 私は先日の代表質問でこの問題を取り上げました。まず小沢さんの疑惑です。『しんぶん赤旗』が独自の取材で、水谷建設からのヤミ献金、紙袋に入った五千万円、五千万円を二度にわたって受け取ったという証言を私たちは得ているのだという話をして、厳しくまず小沢さんの追及をしました。
 そうしますと、こっちに座っている自民党の議員から「おー」といって拍手が起こるのです。民主党はしゅんとしています。ちょっと待ってよと。そのあと「金権政治の本家本元は田中金脈、金丸金脈、自民党ではないか」と言いますと、こっちがしゅんとして民主党から拍手が起こります(笑い)。金権腐敗という点でも体質がかわらないということがはっきりしてまいりました。
 昨年の総選挙は、民主党は政権交代の四文字さえ言っていれば勝てたのですね。この前は簡単だったけれども、今度はそうはいきませんね。政権党としてやってきた一年間の実績が厳しく問われてまいります。もうすでに半年以上たっているけれども、これをふり返れば、新政権は、政治を変えてくれという国民の期待にこたえる仕事ぶりとはいえないといわなければなりません。
 自民党はどうでしょうか。
 自民党は、国会におりますと、政治をもっと悪くする立場で新政権をむやみに攻撃する。こういう態度に終始しております。「名護に新基地を予定どおりつくれ」とか、予算案の組み換えを出したと思って中身を見ますと、「高校学費の無償化反対、消費税の増税を入れろ」、こんなとんでもない組み換え案を出してくる。「子ども手当は社会主義だ」といいました。あれが社会主義だったら苦労はしません(笑い)。
野党でも、あちらのほうは「破壊的野党」。私は、いまだに反省のない自民党には未来はないということをはっきり申しあげておきたいと思います(拍手)。
 そういうなかで、日本共産党がどんな問題でも国民のみなさんの立場に立って政治を前に動かす。これが光ってきているのではないでしょうか。
私たちは、外交では、「異常なアメリカ言いなり」から抜け出して、独立・平和の日本をつくりたい。内政では、「異常な財界中心」を正して、国民の暮らしをまもる「ルールある経済社会」をつくりたいという大きな展望を示しています。この建設的野党への期待が広がっております。
 私は今週の日曜日に福島県の郡山にまいりまして演説会を行いまして、たくさんの方々に聞いていただいたのですが、大変うれしい感想の手紙をいただきました。ちょっとご紹介したいのです。読み上げます。
 「さまよえる有権者。昭和九年生まれ、灰色の世代といわれる時代に生まれ、灰色の世相を歩いてきたわれわれの年代がいま光を失っている。長い間自民党政権に従属させられてきて、真綿で首を締めつけられるように、知らず知らずのうちに圧迫感を覚えてきた。それが民主党によって光を感じた。後期高齢者医療制度の廃止、もろもろの公約である。そして政治を変えるしかないと思った。それがかなえた。気持ちよかった。自分の一票が、選挙権を得て二十数年たったいま、初めて実ったと実感した。友人たちと喜んだ。しかし、それが半年もたたないうちに一夜の夢のように消えつつある。あっという間の裏切り。かならずやると言い続けた彼らの情熱は仮面だったのか。後期高齢者医療制度の廃止の公約を、廃止せずに四年先まで制度を続けていくと言う。もう末期症状か。自民党末期のコピーを見ているようである」
「信頼している友人のお誘いで共産党の演説会に初めて出席した。われわれの年代は共産党に対してのイメージに偏見をもっていた。暗い、怖い革命家、そして虐げられ続けた政党。それが演説会に参加して霧が晴れたように払拭された。その明るい雰囲気と、世話役の人たちをはじめみなさんの覇気さえ感じる挙動に、久しぶりにふつふつと血が騒ぐのを覚えた。志位委員長の明るい人柄のせいもあると思いますが、そればかりではない何かを感じた。残されたわずかな人生、共産党にかけてみようと思った」(拍手)。
 「近年、家内を亡くして、希望というたぐいの文字がすべて消えかかっていた。それにかわって失望という文字ばかりが心のなかを駆け巡っていた。そんなとき声をかけていただいた友人を女神のように感じた演説会参加でした。ありがとうございました」(大きな拍手)。
 ありがとうございます。きょうの演説会も、お誘いした方が?女神?のように感じられる演説会にしていこうということで、最後までお話していきたいと思います。そして、こういういろいろな体験を経ながら、今度は共産党という声が広がっておりますので、かならず参議院選挙では躍進を勝ち取る決意でございます。どうかよろしくお願いいたします(大きな拍手)。

2.日本の経済をどう立て直すか

 
さてみなさん、まず経済のお話から始めます。
 経済危機から国民の暮らしを守るために、いま政治は何をなすべきか。日本の経済危機というのは世界のなかでも特にひどいのです。二〇〇九年のGDPは日本の場合マイナス六・〇%ですが、世界の主要国のなかでもこんなに落ち込んでいる国はないのです。なぜか。
 この前、国会で経済のゆがみの論戦をやりました。きょう何枚かパネルを、国会で使ったもので恐縮ですが、一回ではもったいないので(笑い)もってまいりました。
 これが最初のパネルなのですが、左側はGDPの伸び率を先進七カ国でグラフにしたものです。日本以外の国はほとんどの国がこの十年間でGDPを一・三倍から一・七倍に伸ばしています。日本だけが全然伸びてないですね。十年間、成長がとまった国になっているのです。
 右側は働いている人の雇用者報酬、賃金の伸び率です。ほかの国はだいたいこれも一・二倍から、高いところでは一・七倍、十年間で伸びています。赤い棒は日本です。下がっていますでしょう。日本だけが賃金が下がり続ける、すなわち国民が十年間で貧しくなりつつある唯一の国なのです。ここに「リーマンショック」が襲ってきたわけですから、いまひどい状態になっている。まさにここに原因がある。
 

 
それではなぜこんなことになってしまったか。なぜ成長しない国になってしまったか。その原因を次のパネルでごらんください。緑の棒、大企業の経常利益がこの十年間に十五兆円から三十二兆円にべらぼうに増えた。トヨタなんかが増やしたわけですね。ところが、赤い棒、雇用者報酬は二百七十九兆から二百五十三兆に大きくドンと減りました。
 いったいこのもうけたお金はどこへいってしまったのだろう。
この青い棒、内部留保になって蓄積されました。大企業の内部留保は百四十二兆円から二百二十九兆円。倍近くになりました。この内部留保はみなさんが働いてつくった富が原資なのです。正社員を非正規社員に置き換え、賃下げを押しつけ、首切りを行い、リストラをすすめ、下請け中小企業の下請け単価を絞りに絞って、国民から絞りあげて得たお金がこうやって積もっている。そして、この内部留保の多くは、国内には回らないで、海外での子会社や海外での企業買収に回ってしまっている。
ですから、大企業がいくらもうけても、国のGDPは全然伸びなくなってしまった。内需・家計がやせ細り、成長しなくなってしまった国になったのは、ここに原因があるわけであります。ごく一握りの大企業が富を独占する。このシステムを改革しませんと、経済も暮らしも明日はありません。
 この大企業の過剰な内部留保や過剰な利益の一部を、全部とはいいませんが、国民に還元せよ、そのために暮らしを守る「ルールある経済社会をつくろう」というのが、私ども日本共産党の主張でございます(拍手)。
 この内部留保の問題を私どもが提起しましたら、だいぶ反響が広がってまいりまして、政府も否定できなくなってきたのですね。
私がこの内部留保を還元せよと最初にこの問題を取りあげたのは、二月二日の衆議院本会議でした。そのときの鳩山さんの答弁はこういうものでした。「内部留保につきましては企業がそれぞれの状況に応じて経営判断を下すものであり、一概にどうこうせよとは言えません」と、つまり還元を否定する答弁をしました。
私は、この答弁を聞いて、どこかで聞いた答弁だなと思って、一年前の議事録を見てみましたら、麻生首相が言った答弁と一言一句変わらない(笑い)。接続語まで一緒なんです。同じ官僚が書いているなと思いました。しかし、予算委員会でもこの問題を取りあげ、二月十七日、これはひざ詰めの党首会談を鳩山首相とやりましたところ、首相は「内部留保を還元させる具体的な方法を検討したい」ということを言わざるをえなくなりました。
ただ、鳩山さんというのは言っても実行力がないですから(笑い)、これは国民のたたかいで大企業のためこんだお金を暮らしに回せということを、ご一緒に実現させていこうではないかということを訴えたいと思います(大きな拍手)。
ではどういう方法でそういう経済のシステムを変えていくのか。私たちは、先ほど言ったように、暮らしを守るルールをつくる必要がある、「ルールある経済社会」が必要だと訴えております。きょうは三つの柱について訴えたい。

⑴人間らしい雇用のルールをつくる

第一は、人間らしい雇用のルールをつくるということであります。
日本ほど働く人が粗末に扱われている国はありません。「派遣村」ができたのは日本だけです。
NHKテレビでこの前、オランダの労働事情をやっていました。一人もホームレスがいない。雇用・失業手当がしっかりしているうえに、生活扶助のネットワークがはってあって、一人もいないということをテレビでやっておりました。本当かなと私、思いまして、そのあとオランダの首相が来日されたときに、この問題を同行していた方に詳しく聞きました。「本当ですか」「本当です。一人もおりません」と胸を張って言っておりました。こんな事態になっているのは日本だけです。
とくにヨーロッパでは、労働者全体に占める派遣など非正規雇用の労働者の比率は一割ぐらいなのです。日本では三人に一人でしょう。女性や青年は二人に一人です。ここまで不安定な働かせ方を広げてしまった国というのは、世界の主要国のなかでもないのです。
ですからいま、労働者派遣法の抜本改正をどうしてもしっかりしたものにしなければならないと、私は決意しております。
この問題で政府が法案を間もなく出そうとしている。その法案には「製造業派遣と登録型派遣の原則禁止」ということが入っているのです。ところが、これは私に言わせれば看板にいつわりあり。二つの大穴が開いている。この前、国会の質疑でそれを問題にしました。
一つ目は、「製造業派遣の原則禁止」といいながら、「常用型派遣」というものを禁止の例外にしているのです。「常用型」というと何となく安定しているような感じがするけれど、一年以上の雇用見込みがあれば、三ヵ月、三ヵ月、三ヵ月の短期契約の雇用を反復していても「常用型」だというのです。こういうのは常用といわないで、細切れというでしょう(笑い)。いつでも首切れる。そういうものを禁止の例外にしてしまったら、これはまたまた「派遣切り」がくり返されます。
みなさん、製造業の派遣がいざというときにどういう残酷な目にあうかは、さんざん体験しているじゃありませんか。トヨタとパナソニックとキャノンという世界に名立たるメーカーが「派遣切り」の引き金をひいた。どれも全部製造業の大企業ではありませんか。製造業の派遣労働者というのは多くが寮住まいです。仕事と同時に住居も失い、路上に放り出される。こんなことをくり返すわけにはいきません。ですから、製造業の派遣は例外なしの禁止をすべきだというのが共産党の主張でございます(大きな拍手)。
もう一つ抜け穴があるんです。これは女性の多くの派遣労働者にかかわる問題なのですが、「登録型派遣の原則禁止」というのですけれども、「専門二十六業務」なるものは例外だというのです。これがくせ者なのです。「専門業務」だから安定性が高いでしょうといって、これは何年働かせ続けてもいい派遣労働とされているのですけれども、この「専門業務」で働いている派遣労働者は百万人もいるのです。
ところが、とてもじゃないけれども、一つひとつみてみると「専門業務」といえないものばかりです。例えばそのうち四十五万人は「事務用機器操作」という業務です。
私、国会で聞きました。いったいこれはいつ決まったことで、「事務用機器」って何ですかと。そうしたら大臣の答えは「一九八五年に決めたものでありまして、事務用機器とは電子計算機、タイプライター、テレックス、ワープロでございます」。
テレックスなんて見たことないですよ(笑い)。ワープロといったらいまのパソコンだと思うのですけれど、パソコンを使っていたら「専門業務」だということになったら、みんな「専門業務」にさせられてしまう。
これはひどいでしょうという話をしましたら、厚生労働大臣が「実はパソコンに入力しているだけではだめで、グラフまでつくらないと専門とはみなさないという新しい通知を、きょうこれから出します」と言うんです。私が質問したそのあとに出すと言うのですよ。つまり、私が質問通告したので、あわててそういう通知を出したことになるわけで、一歩政治を動かしたということは言えますね(笑い)。そのあと、その通知が私の国会の事務所にすぐ届けられていました。
この「専門業務」については首相にも「見直し」を約束させました。これで泣かされている方がたくさんいます。「偽装専門業務」というのもたくさんある。
この二つの抜け穴をなくして、せっかくここまでもってきたわけですから、ぜひ実らせたい。そのさい、改悪部分もあります。事前面接解禁などという改悪部分は削って、派遣法を本当の意味で抜本改正し、「雇用は正社員が当たり前の社会」への一歩を踏み出そうではありませんか。どうかお力をお貸しください(大きな拍手)。
いま春闘がたたかわれております。最低賃金を大幅に引き上げ、働く貧困層をなくしていく。リストラ・賃下げに反対して、大幅賃上げを。これは私は日本の経済を考えても大いなる大義に立ったたたかいだと思います。
賃上げをめざす労働者のたたかいに、共産党は断固として連帯してたたかいぬく決意を申し上げたいと思います(大きな拍手)。

⑵大企業と中小企業の公正な取引のルールをつくる

第二は、大企業と中小企業の公正な取引のルールをつくるという問題であります。
働く人の七割は中小企業で働いています。ところが、大企業の労働者と中小企業の労働者の賃金の格差が広がっています。大企業のほうも落ちているなかでさらに格差が広がりますから大変です。小企業になりますと、大企業の賃金の半分しかお給料が出ていません。ここにもう一つのワーキングプアがあります。
なぜここまで中小企業で働く人たちの賃金が下がっているか。その一つの原因として、私は、下請け中小企業の下請け単価が際限なく切り下げられてきたことを言わなければなりません。
トヨタには有名な言葉がありますね。「下請けは乾いたタオルを絞るように絞れ」。残酷ですね。そういうやり方で下請けを絞り上げる。あるトヨタの幹部に「タオルを一回絞りぬいて、これでおわりと思っても、もう一回絞ればまだ水が出てくる」ということを言った人物もいたけれど、そういうやり方で単価の際限ない切り下げをトヨタもやっていますでしょう。
私たちは、質問に先立ちまして愛知県内の自動車関連の下請け企業の実態をうかがいました。この企業は四次ないし五次下請けで、末端の下請けです。金属部品の溶接加工をやっていらっしゃいます。溶接の長さで単価が決まるんですね。十年前に比べて加工賃は、一センチの溶接あたり六十五銭から三十銭に半分以下に下がった。ここから給料を出さなければならないわけですから、もうとてもじゃないけれどもやっていけません。
社長さんは「三人の従業員と話し合って、雇用保険も健康保険も年金も払っていない。法律違反だとわかっているけれど、払ったら従業員が食べていけなくなる」。ここまで追い込んでいるわけです。
私はこの実例を出しまして「こんな下請け単価の水準は公正、適正といえないと思うけど、総理どうですか」と聞きました。そうしましたら総理も「ご指摘は厳しい中小企業の現実をズバリ言いあてていると思います」と答弁をいたしまして、「下請法の厳格な実施をはかります」と約束しました。
それでは下請法は守られているのか。
公正取引委員長に聞きました。下請代金法というものがあります。「買いたたき」を禁止しています。ではその「買いたたき」の是正の勧告処分をしたのは五年半で何件ありますかと聞きましたら、公正取引委員長が出てきて「一件でございます」。全国でですよ。
もう一つ聞きました。「『下請け切り』、つまり一方的な発注打ち切り、この是正の勧告処分は何件やりましたか」。「ゼロでございます」。
みなさん、これだけ世間に「買いたたき」、「下請け切り」が蔓延しているのに、まったく公正取引委員会が機能していない。仕組みが機能していないのです。なぜか。
業者のみなさんにうかがいますと、いまの仕組みというのは、下請けのみなさんが無法を申告した場合、あるいは書面でそれを書いた場合、そのときに初めて公正取引委員会が動きだすのです。
しかし、下請けの業者の社長さんが親企業の不正を申告することができますか。できませんよね。そんなことをやったら仕事がすぐなくなります。倒産覚悟じゃなかったらできません。だからみんなモノが言えないのです。
モノが言えないんだったら、これを正すのは、政治の責任ではないでしょうか。政治が、そういう受け身のやり方ではなくて、主導的に検査に入る。必要な抜き打ち検査も行う。だいたい下請けいじめをやっているのはわかっているのですから、そういうところはボーリング調査に入る。下請け検査官の増員もして、大企業や親企業の無法をなくしていくのが政治の責任だということを私は主張していきたいと思います(「そうだ」の声、大きな拍手)。
みなさん、そういうことをやりながら、同時に中小企業の振興が必要です。
私、中小企業同友会に先日うかがいましたら、中小企業憲章を日本でもつくろうという運動をやっておられます。大賛成です。中小企業を日本の経済の根幹、根と幹と位置づけてしっかり振興をはかっていく。製品の開発や、販路の開拓や、後継者の育成に国をあげて乗り出す。そうしてこそ日本経済が土台からしっかりと発展するのではないでしょうか。
同時に、私も国会でも何度も訴えたのですが、緊急の対策としては、町工場の灯を消してはならないということを訴えたいのであります(拍手)。
東京の大田区、そして愛知県、東大阪、広島とずっと町工場の実態を調べますと、実に貸し工場が多いです。あるいは機械もリースで借りている場合が多いです。しかし、いま仕事がないわけです。仕事がなくても家賃は払わなければならない。リース代は払わなければならない。だからどんどんつぶれていっているわけです。
しかしみなさん、町工場というのは高い技術力をもっています。ロケットだって、新幹線だって何だってつくれます。すばらしい技術力をもっている。日本の経済を支えているのが町工場じゃないですか。いったんこの宝物を損なったら、経済は土台を失ってしまうことになる。ですから、町工場は日本の宝、灯を消してはならないということを私はくり返し訴えてまいりました。
そうしましたら鳩山さんも「町工場は日本の宝、灯を消してはならない」と同じことをくり返しました(拍手)。
言っているだけではだめですから、党首会談で、さらに具体的に求めたところ、「機械のリース代については支援を検討する」という答弁まで引き出したというのが到達点だということをご報告したいと思います(大きな拍手)。これもぜひ実現するまでがんばってまいりたい。
みなさん、中小企業は日本の経済の根と幹です。木というのは根と幹がしっかりしてこそ大きく茂っていきますでしょう。そこを大事にしてこそ経済が復活するということを訴えたい。この点でも中小企業のみなさんと共産党との共同を大きく広げてまいりたいと願っているしだいでございます(大きな拍手)。

⑶社会保障と税金の問題

さて、第三は社会保障と税金の問題です。とくに私たちが重視しておりますのは、自・公政権がつくった社会保障削減政策による傷を一刻も早く治すということです。この傷の治療が必要です。この点で鳩山内閣の姿勢に公約を裏切る一連の問題点があらわれているということを私は言いたい。とくにきょうは全国で大問題になっている医療崩壊について、四つの角度から医療崩壊を立て直す緊急提案を、この場をお借りしてさせていただきたいと思います。
一つは後期高齢者医療制度の撤廃です。
これをすみやかに撤廃し、老人保険制度に戻すというのが民主党の公約でした。ところが、新しい制度ができる四年先までこの制度を続けるということを、選挙後言いだしました。しかも保険料が今年の四月に上がります。これに対する手当てもやらない。二重に怒りが広がりました。
そして、きょう私がみなさんに訴えたいのは、それでは四年後につくる新しい制度とはどんなものか。まず『日経』が詳しく出し、この前の日曜日には共同通信が配信しました。厚生労働省の素案というものです。「高齢者医療新制度、六十五歳以上国保に加入」。そのあとが問題です。「現役世代と別勘定」。
「別勘定」。これこそみなさん、後期高齢者医療制度の差別医療としての最大の問題とされていた問題ではありませんか。お年寄りだけを「別勘定」にすれば負担が絶えがたくなっていく。そういう制度をまさに「うば捨て山」だといって批判したのではありませんか。この七十五歳を、今度は六十五歳以上にする。これはみなさん、「うば捨て山」の拡大ですね。これが新制度の案だとしたら、四年間先送りされたあげく、「うば捨て山」の入山年齢が十歳前倒しになる(笑い)。これは許すわけにいきません(「そうだ」の声、拍手)。
こういうことですから、この後期高齢者医療制度は一刻も早くなくさなければならない。その思いを今度の参議院選挙で日本共産党に託してください。よろしくお願いいたします(大きな拍手)。
二つ目は、みなさん、高すぎる医療費の窓口負担を下げるということです。
自・公政権、小泉政権の際に、サラリーマンの窓口負担が二割から三割になったでしょう。受診抑制、お金の心配でお医者に行けない方が広がりました。そのとき、当時の野党四党、これは民主党、共産党も入った野党四党ですが、「三割負担凍結法案」というのを出したのです。そのときに民主党の代表は何と言ったかといいますと、「三割負担はさらなる受診抑制を招く、国民の健康をそこなう」といって反対したのです。
そこで私、この前、国会で聞きました。「総理、三割負担になって受診の抑制が起こっている。必要な医療が受けられなくなっている。こういう認識はありますか」。そうしましたら総理は「必要な医療が妨げられているとは考えておりません」。こう言うんですよ。おかしいですね。野党のときには受診抑制があったのに、与党になったら受診抑制がなくなる。こんなに道理に合わない話はありません。
ヨーロッパへ行きますと、医療費の窓口負担というのは無料が当たり前です。ロンドンにいる特派員に調べてもらいましたら、イギリスの病院に行きますと会計窓口はあるけれど、これは患者さんがお金を払う窓口ではありません。病院が患者さんに交通費を払う窓口であります(「ほー」というどよめき)。これがヨーロッパでは当たり前。三割負担なんていうのは、みなさん、医療保険とはいえません。いざというときのために平素高い保険料を払っている。それなのに病気になったら三割負担でお医者さんに行けない。こんなものは医療保険とはいえません(「そのとおり」の声、拍手)。
ヨーロッパのように無料をめざして、窓口負担の軽減に踏み出そうではございませんか。力を合わせましょう(大きな拍手)。
三つ目の問題は、高すぎる国民健康保険料の問題です。
高すぎる国保料が払えない。保険証を取りあげられ、資格証明書に置き換えられる。資格証明書というのは残酷なものでありまして、お医者さんの窓口で医療費を全額、十割払わなければなりません。十割払うお金があったら保険料を払っていますよね。それが払えないから困っている。そういう方々に、まさに「死ね」といわんばかりの保険証取りあげをやっている。重病化して亡くなったり、自殺に追い込まれるといういたましいケースが後を絶ちません。
この問題でも民主党はこう公約していたのです。「政権をとったら、ただちに九千億円の国庫負担を増やし国保料を下げます」と言ったのです。では今度の予算で国庫負担を増やしたのはいくらですかと、この前、小池政策委員長が聞きました。「四十億円でございます」。ずいぶんと少ないですね。
九千億円とはいいません。その半分にちょっと欠けるぐらいの四千億円あれば、国民一人あたり一万円の国保料の値下げが国の責任としてできるのです。そのぐらいのことをやって当たり前ではないでしょうか(拍手)。
小池さんの質問に、首相は「何とか財源を見い出したいと」言いましたから、これもたたかいでぜひ勝ち取っていきたいと思います。
四つ目は診療報酬の問題なのです。診療報酬というのはお医者さんに支払われる医療費の給付ですけれど、これはけっしてお医者さんの問題ではないのです。診療報酬がどんどん下がって病院や診療所がつぶれてしまったら、地域医療が崩壊する。まさにそういう事態がいま引き起こされているわけです。自・公政権の六年間で診療報酬というのはどんどん下がって、なんと二兆六千億円削られたのです。地域医療がズタズタにされました。
民主党はこの問題で、「診療報酬を大幅に引き上げます」と公約したのです。では大幅に引き上がったか。二〇一〇年度を見ますと、増やしたのはたった七百億円。それもよく見たら、そのうちの六百億円は薬代、薬価の削減で消えてしまって、実質的に増えるのはたった百億円。〇・〇三%しか増えない。「ゼロ回答」です。これは怒りが広がっております。
しかも、「ゼロ回答」のうえに、高度医療を担う大病院に重点的に配分し、地域医療を担っている診療所や中小の病院は引き下げると、こっちを削ってこっちへ回すというやり方をとりました。
しかしみなさん、大病院と診療所、両方とも大事じゃありませんか(「そうだ」の声)。両方あってはじめて地域医療を支えていくことができる。こっちを削ってこっちに回す。こういうやり方ではだめです。これも大幅診療報酬の増額が必要です。日本医師会がそのことを求めております。
そうしますとすぐ政府の側は、診療報酬を上げたら患者さんの負担も増えると言うのです。そこで日本医師会は、窓口負担の軽減とセットで要求していますでしょう。これはいいですね(拍手)。診療報酬の増額と窓口負担の軽減をセットで要求すれば、国民みんなの要求になっていくじゃありませんか。
みなさん、この四つの点での医療崩壊のいまの事態の再建をご一緒にやろうではありませんか。
この前まちを歩いていましたらポスターがあって「公約実行」という大きな字を書いて、鳩山さんの顔がありました。これはみんな公約ですよ。後期高齢者医療制度、高すぎる国保料、医療費の窓口負担、診療報酬、みんな公約じゃないですか。公約を実行せよということを迫っていくたたかいを、大いに力を合わせてやろうではありませんか(大きな拍手)。

3.財源をどうするか

財源をどうするのかというのがすぐ問題になりますが、私たちはムダ使いをなくそうと言っております。ムダ使いということで最大最悪、もっとも危険なムダ使い、五兆円の軍事費に抜本的な縮減のメスを入れようということを訴えたいと思います。
わけても「思いやり」予算、SACO経費、米軍再編費合わせて三千四百億、ものすごく膨れあがった。これはゼロにすべきだというのが私たちの提案でございます(大きな拍手)。
そして、大企業と大資産家にはゆきすぎた減税を正して、もうけ相応の負担をしていただきます。とるべきところから税金をいただくというのが共産党の立場でございます。この二つをしっかりやる。
しかし、これだけでは先々に向かっての財源は出てまいりません。日本経済が健全に成長していきませんと、財源というのは出てきません。先ほど言ったように、成長がとまっていますでしょう。これでは財源にも限界があるのです。ちゃんと健全な成長をする経済にしなければいけない。この健全な成長をさせるうえで、先ほど言った大企業の巨額の内部留保を還元する。そして国民の暮らしを豊かにするなかで健全な成長を勝ち取っていく。そうすれば税収も増える。ここから財源をつくりだし、みなさんの暮らしをよくしていこうというのが共産党の立場でございます。
みなさん。大企業に出すべきものを出せと言える、ルールを守りなさいと言える、そういう大企業にモノを言える党でこそ暮らしを守れます。企業団体献金はびた一文、党をつくって八十八年受け取ってこなかった日本共産党でこそこの仕事ができるということを訴えたいと思います。どうかよろしくお願いいたします(大きな拍手)。

4.平和の問題

平和の問題についてお話をすすめたいと思います。
「異常なアメリカ言いなり」政治を正して独立・平和の日本へかじを切りかえたい。鳩山内閣は「対等な日米関係」を築くということを盛んに言いました。しかし、半年たちまして、私は、二つの大問題でアメリカにはモノが言えない政権だということがはっきりしたと考えております。

⑴「核密約」を廃棄して非核三原則を守る問題

一つが「核密約」の問題です。
この核兵器の密約の問題というのは、いまをさかのぼること五十年前の一九六〇年の日米安保改定時に、「討論記録」というかたちで、核兵器を搭載した米軍の艦船や飛行機が寄港したり飛来したりすることは、日米の事前協議、事前の相談の対象にしない。つまり、核を積んだ船や飛行機が寄港したり飛来したりすることは、アメリカの自由勝手にしてけっこうです。この密約を結んだ。これが「討論記録」という五十年前に結ばれた文書だったのです。
この文書を私たちはアメリカの公文書館から手に入れまして、十年前に当時の不破哲三委員長が国会でその現物を明らかにしました。そのときは政府は、知らぬ存ぜぬをくり返した。
この「核密約」は非核三原則を踏みにじるという大問題、半世紀にわたって国民にウソをついていたという大きな問題で、総選挙でも争点になりました。
私が「核密約」のこの文書を出して、鳩山さんに「政権をとったらどうしますか」と聞きましたら、鳩山さんは「密約を公開し、廃棄します」と言いました。田原さんが隣で「アメリカに行きますか」と聞いたら、「アメリカまで行ってオバマさんと交渉して、説得します」と言いました(どよめき、笑い)。そこまで言ったんですよ。
そこで私は、新政権ができた際に、党首会談で、私たちがもっている「核密約」に対する資料を全部提供して、この問題では協力すると言ったのです。
ところが、この九日に政府が発表した「調査報告書」というのは、一言でいってとんでもない歴史の捏造であります。
どういうことかといいますと、この「報告書」の最大の問題は、先ほど言った「討論記録」、これはもう隠し通せなくなって存在を認めた。ところが、この存在を認めながら、この「討論記録」が核兵器持ち込みの密約、すなわち核搭載艦船の寄港は事前協議なしに自由でいいですよという密約だとは認定しないという、密約の存在を認めながら密約だと言わないというやり方でした。
しかし、「討論記録」を読みますと、誰がどう読んだって、核兵器をもった船が寄港する際は自由でいいですよとしか読みようのないものなのです。これをそうではないと言う。日本とアメリカの政府の解釈が違った、解釈の違いをそのままにしているという言い方でごまかそうとしています。
しかし、これも成り立たないのです。
一九六〇年に「討論記録」が結ばれ、密約が結ばれた三年後に、当時の大平外務大臣とライシャワー大使が会談をして突き合わせをやって、両者は「完全な認識の一致に達した」ということを、ライシャワー大使が本国のラスク国務長官に詳しい電報で送っています。ですから、認識の違いなんかなかったんです。双方密約だとわかってやってきたのです。
みなさん、密約そのものである「討論記録」の存在を認めながら、それを密約だと言わない。密約を密約と認めない。こういうことになるとどういうことになるでしょうか。そうしますと廃棄できなくなってしまうのです。だって密約はないというわけでしょう。ないものは廃棄できません。ですから、アメリカに対してこの密約をやめますと言えないのです。
そうなるとどうなるか。非核三原則が守られる保障なんかないじゃないですか。
私たちが岡田外務大臣に「いったい非核三原則をどうやってあなた方は守ろうというんだ。密約を密約として認めず、廃棄もしないでどうするんだ」とただしますと、「一九九一年以後はアメリカの艦船は核兵器を積んでいません」と言うのです。「それはあなたの考え違いです」。事実ではない。
たしかに水上の艦艇からは戦術核兵器は撤去したのですけれども、攻撃型原子力潜水艦には核トマホークが随時配備できるような態勢は崩していないのです。たくさんの公文書がそれを物語っているし、そういう攻撃型原潜が核トマホークを積んでたくさん入港してきている疑いが大いにあるのです。
「今年だって入って来ていますよ。過去の問題じゃない、現在の問題なんだ。いったい非核三原則をどうやって守るんですか」と聞きますと、岡田外相は「具体的なことは言えません。しかし私は確信をもっている」と言うんです。アメリカにモノが言えない。密約があれだけはっきりしてもモノが言えない。
密約は密約と認めて葬らなければなりません。密約は密約としてしっかり認めてこそ廃棄することができます。廃棄してこそ本当の「非核の日本」がつくれるんじゃありませんか(大きな拍手)。そのことを求めたいと思います。

⑵普天間基地無条件撤去の問題

そしてみなさん、いま一つは沖縄の普天間基地の問題です。いよいよ待ったなしになってまいりました。
この間、政府・与党はあてのない「移設先探し」をやってきました。北海道の苫小牧とか、長崎だとか、佐賀だとか、たくさん名前があがって、どこでも全会一致で反対決議があがります。名前があがった分だけ反対決議があがります。普天間の苦しみは、沖縄はもとより、日本のどこに移したって同じ苦しみであることにかわりはないじゃないですか。
みなさん、移設先を探してどこかに移そうという考えそのものが間違っている。
沖縄ではもう怒りの声でいっぱいであります。名護で市長選挙が行われました。名護市の海にも陸にも新基地はつくらせないと、県内たらい回し反対を掲げた稲嶺ススムさん、私たちも応援しました。堂々と勝利を勝ち取りました。沖縄県議会が全会一致で県内たらい回し反対の決議をあげ、沖縄の怒りはいま沸騰し始めております。
みなさん、この問題で新政権は、けっきょくいろいろ探してみたけれど沖縄しかない、名護しかないというところに結論をもっていこうとしているけれども、私は、少なくとも鳩山さんは総選挙で「県外、国外」と言ったのですから、沖縄にはつくらないと言ったのですから、これはどんな理由をつけようと公約違反だということを言わなければなりません(大きな拍手)。
解決の方法は、私どもが一貫して言ってきているように、移設条件なしの撤去、無条件撤去を求めてアメリカと交渉することです。
だいたい沖縄の基地がどうしてつくられたか。本土の基地とは成り立ちが違います。米軍が占領したときに、住民を十二の収容所に囲い込んだ。そして好きなところを好きなだけとったのです。
普天間基地があったところには。集落もあった。学校もありました。墓地もあったしサトウキビ工場もあった。人が住んでいたところです。田んぼもつぶした。田んぼはあとからつぶしたのですけれども、田んぼは蚊が出るという理由でつぶしたのです。そしてそこもまた基地にした。
みなさん、民有地のそういう強奪というのは、戦争中であってもやってはいけないというのが国際法の決まりです。無法に奪った土地ですよ。無法に奪った土地を返すのに、別の土地をよこさなかったら返さないというのは、盗人たけだけしいと言わなければなりません(「そうだ」の声、大きな拍手)。
だいたい鳩山首相自身が二〇〇五年の本会議の質問で、普天間基地については「代替移設なき返還をアメリカに求めるべきだ」と小泉首相に迫っていたのですよ。いいことを言っていたんです。赤嶺さんが、それならばいまこそ実行せよと沖縄を代表して言いました。そうしましたら首相は「米軍との交渉をかんがみたときに、現実的に不可能です」と言いました。
そこで私は、総理になると「不可能だ」と態度を変えた理由は何か、はっきり言いなさいと問い詰めました。そうしましたら鳩山首相は「海兵隊は日本の平和を守る抑止力だ」と言いました。
とんでもありません。海兵隊というのは何をやってきたか。ベトナム戦争、アフガニスタンの戦争、イラクの戦争、あらゆるアメリカの侵略戦争の先兵として殴り込んだ、いちばん獰猛な侵略部隊ではありませんか。日本を守る平和の「抑止力」なんかじゃない、戦争のための「侵略力」だというのがこの軍隊の正体であります(拍手)。
沖縄に行きますと、「抑止力」と聞いただけで、?基地の押しつけ?というふうに翻訳してみんな聞くそうです。「抑止力」という三文字で未来永劫、基地の苦しみを押しつけるなどということはもう通用しません。
どうかみなさん、海兵隊は沖縄にも日本にも必要ない、米国本土に帰ってもらおうという声を大いにあげようではありませんか(大きな拍手)。
そしてみなさん、問題は普天間の基地だけではない。沖縄全体の基地が問題ですし、本土の基地も問題です。沖縄にはたとえば嘉手納基地もある。
私、嘉手納町に先日うかがいました。嘉手納基地というのは嘉手納町の面積の八三%を閉めているのです。つまり住民はわずか一七%の狭いところにへばりつくようにして住んでいるのです。
ここの町長さんは宮城さんとおっしゃられて、保守系の方なのですが、大歓迎してくれました。基地被害がいよいよひどくなっています。世界中から米軍機がやってきて、外来機と呼んでいるそうです。渡り鳥だったらかわいいけれども、アラスカやハワイからどんどん米軍機がやってきて、嘉手納の上の訓練空域で好き勝手に訓練をやっている。危険な状態だ。普天間が世界一危険だというけれど、嘉手納が世界二というわけにはいかない。こっちも世界一なんだというふうにおっしゃられていました。
そして、私にこう言いました。「これだけひどい状態なのに、嘉手納町を訪れた政党の党首は歴史上二人しかいません。一人は不破さんで、二人目が志位さんです」と言うのです(笑い、拍手)。「歓迎します」ということを言ってくださいましたけれども、宮城町長が、私は保守ですがと言いながら「安保条約の是非に関する新たな議論をぜひ起こしてほしい。いつまでも五十年前の安保体制でいいのか問い直すべきだ」。と、ここまでおっしゃいました(拍手)。
戦後五十年、六十年と結ばれてきたこの従属的体制は、もうそろそろやめるべきときです。
私たちは反米ではありません。本当の友好を願っています。友好のためにも日米安保条約という言いなり体制はもうやめて、日米友好条約に置き換えようではないかというのが共産党の提案でございます(大きな拍手)。

5.共同の条件は広がっている

千葉県医師連盟と懇談
きょうはずっと暮らしから平和まで、いろんなお話をしてまいりました。だいたいいいことを言うなと思っていただけた方々が多いのではないかと思います(「そのとおり」の声、拍手)。
共産党はいいことを言うけど、ちょっとという声もまだときどきいろいろと耳にいたします。しかし同時に、私は最近、ああ、時代は変わったなと思うのです。とくに自民党政権の壁が崩れたために、これまで保守といわれてきた方々がものすごい大きな変化をしていて、今度は共産党という流れが広がっていることを感じます。
昨年十月に、私、JA全中(農協)の全国大会に招待されまして、初めてごあいさつする機会がありました。NHKホールでやりまして、全国の農協の組合長さんがズラーッと並んでいるわけですね。ほとんどが初対面の方です。相手も共産党の委員長の顔を見るのは最初だから、どんな顔をしているんだろうというような感じで緊張しておりました。
しかし、私がおコメは一俵一万八千円は保障しようと言ったところでワッと拍手が起こって、農業を壊す日米FTA絶対反対と言ったらもう歓声です。たいへん温かく迎えていただきました。
なぜ私を呼んだのかなと思いましたら、一枚の特別決議が私の前のテーブルに上に乗っているのです。?これからは自民党支持を改めて、すべての政党と全方位でおつきあいをする?と書いてある。全方位外交に切り替えます。これを大会で決めたのです。とてもいいことですね。
私たちは、自民党支持をやめたからといって、農協として共産党を支持してくれというつもりはないのです。個々の人たちはぜひ支持してほしいのですけれども、団体支持というのはどの団体であれ求めない。やはり政党支持自由というのがいちばんいいのではないでしょうか(拍手)。
そういう方向で変わった。そういうふうにして自民党の壁が崩れてみたら、実は共産党がいちばん近いところに立っていたということになってきています。
一月に私どもが党大会をやった際に、こっちもお呼びしないと失礼にあたると思いまして、JA全中に招待状を出しましたところ、JA全中の冨士重雄専務が来賓でおみえになり、茂木会長のメッセージを読みあげてくださいました。
メッセージには「再生産可能な価格保障と所得補償、国境措置の維持強化、日米FTA反対、食料主権の確立、こうした方向はわれわれのめざす方向とまったく同じであり、心強いかぎりです」と書いてありました(大きな拍手)。
本当に大きな変化が起こっております。
昨年十一月に、今度は全国森林組合大会に初めて招待されましてごあいさつする機会がありました。日本の面積の七割が森林なのです。この森林は雇用でも環境でも大変大きな役割を果たしている。ぜひ国をあげて基幹産業として重視すべきだという話をしましたら、ここでも大変温かい反応が返ってまいりました。
最近、高知県で林業再生シンポジウムが大成功したのですけれども、そこにおみえになった県森連会長の戸田会長はこうおっしゃった。
「厳しい話が続き重苦しいムードだったが、志位さんの力強いエールに会場が一変するくらいの拍手がわきました。私は帰るとすぐ、そのことを伝えようと、すべての組合に翌日のしんぶん『赤旗』記事をカラーコピーして送りました」(笑い)。
うれしいことでございます。
それから、今年に入りまして、二月に私の地元の千葉県で県の医師連盟の方々と懇談する機会がございました。これは大変おもしろい取り組みでありまして、県の医師連盟、医師会のみなさんと共産党の県委員会が共催で懇談会を開くというものなのです。
ですから、行ってみますと、県の医師会長さんから市町村の医師会長さんまで、ズラッと医師会長さんがみんなおみえになっている。共産党のほうもズラッと地方議員がおりまして、地域ごとにテーブルがあって大懇談となったのですけれども、そこで千葉県の医師連盟の藤森委員長が「千葉県医師連盟は全国にさきがけて日本共産党と懇談します。患者のためという点で共産党とはまったく一緒で、一から十まで納得できます。私は自民党を支持してきましたが、医療費抑制がどんどん行われ、一党支持ではいけないと教えられました」。
そうして次々と医師会長さんがスピーチをするのです。ある方は「私はまだ自民党籍が残っているようだが、しんぶん『赤旗』を最近すすめられ、読んでみると実にいい新聞です。文化の香がする。ぜひ読んでいただきたい」とみなさんに訴えてくださいました。
この懇談会の記事が翌日の『赤旗』に載りました。そうしましたら、なんとその『赤旗』の記事が各市町村の医師会や開業医に医師会ルートでファックスで全部送られている。ですから、ずっと訪問しますと、ファックスでいただきましたということで知っている。
こういうわけでありまして、ぜひしんぶん『赤旗』のご購読をよろしくお願いいたします(拍手)。
いまは、国民のみなさんがいろいろな新しい政治の激動のなかで、いろいろな体験をしながら、本当に日本の政治を変える政党はどこかということを探求し、発見しつつあるという過程ではないでしょうか。
最期に、ここへ来る直前にこういうメールが来たのです。郡山の演説会に出た若い方からのメールです。
「はじめまして。よろしくお願いします。僕は昨年の総選挙で民主党に期待し一票を投じました。これで日本は変わる、そう思いました。しかし変わらない。そのことがわかるときがこんなに早くくるとは。いまようやく共産党に肩入れする気になりました。で、どうすればいいのでしょう。入党するのにどのぐらい費用がかかりますか」(爆笑)という質問なんです。
入党費は三百円ということになっております。党費は収入の一%ということでありますが、党をつくって八十八年、私どもの立党の精神というのは、国民の苦難軽減と反戦平和のためにがんばりぬくというところにあります。共産党が怖いということではないのです。共産党を弾圧してきた特攻警察のほうが怖いのですね。
私どもは一貫して皆さんのお役に立ち、平和のためにがんばってきた政党でございます。「困ったときは共産党」ということがいわれますね。生活に本当に困ったとき、役所に行ったら、ああ、それは共産党に行ったほうがいいですよ(笑い)。サラ金に追われて警察に駆け込んだら、ああ、それは共産党だ。こういうことはずいぶんあるんです。
そういう温かい連帯の人間的ネットワークをつくっているのが日本共産党ですので、きょうの私の話に共感していただけた方は、ぜひ入党をおすすめしたいと思います(大きな拍手)。
最後に、私は委員長として、今度の参議院選挙こそみなさんとご一緒にかならず躍進という立派な結果を出すために、先頭に立ってがんばりぬく決意を申し上げましてきょうの話を閉じさせていただきます。ありがとうございました(大きな拍手)。