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【05.12.18】耐震偽装 安全より利益 背景に「官から民へ」 弱まる行政のチェック

12月18日「愛知民報」

 マンションやホテルなどの耐震強度偽装問題は、国民の関心と不安を強めています。問題はどこにあるのでしょうか。

県内7ホテルで

 愛知県は4日、姉歯建築設計事務所が構造計算に関与した半田市などの3ビジネスホテルについて構造計算書が偽造され、震度5強の地震で倒壊の恐れがあるなど耐震基準を満たしていないと発表しました。

 これで愛知県が先に書類の偽造を確認したビジネスホテル名鉄イン刈谷を含め同県が建築確認審査した4つのホテルのすべてで偽装が判明。岡崎市や民間検査機関の日本ERIが建築確認審査をしたものを含め愛知県内では7つのホテル(別表)で構造計算書の偽装が判明しました。

 これらのホテルの耐震強度を再計算した結果、ホテル新永新館(豊田市)以外の6ホテルは必要な耐震強度が不足していることが判明しました。

民間検査が急増

 1998年に建築基準法が改悪され、民間検査機関が建築確認審査できるようになりました。今回の耐震強度偽装問題で名前のあがったイーホームズや日本ERIなど民間検査機関が参入するようになりました。現在は全国に約120の民間検査機関があります。

 建築確認審査をどこに依頼するかは施工主が決めるので「建築確認が早い」「検査が甘い」といわれる検査機関に依頼が集中しがちといわれます。

 名古屋市でも行政側が扱った建築確認申請審査件数が激減しています。99年度10278件(全体の確認検査数の95%)でした。ところが04年度には1161件(全体の11%)に激減しました。同市の審査・検査担当職員は99年度の49人から04年度は23人に半減しています。

 行政側の審査数が減った分、民間検査機関の審査数が増加しています。

政治献金も

 民間検査機関が審査できるようにした建築基準法改悪に反対したのは日本共産党でした。佐々木憲昭衆院議員は「日本共産党は営利を目的とする民間検査機関が参入すると『安かろう。悪かろう』の『手抜き検査』など安全より利益優先になると反対しました。自民党などは民間検査機関の日本ERIや建築会社のヒューザーなどから政治献金をもらっています。耐震強度偽装関連企業から献金をもらっている政党では問題の解決はできません」と話しています。

 自民党は「21世紀に向けた大きな基準法体系の再構築」、民主党は「50年ぶりの見直し」などと民間審査を推進しました。これらの党の責任が問われています

構造計算書の偽造が確認された愛知県のホテル






 

 ホテル名 耐震性  審査 
センターワンホテル半田(半田市) 未達成  愛知県 
アズイン大府(大府市)  未達成  愛知県 
エースイン刈谷(刈谷市)  未達成  愛知県 
名鉄イン刈谷(刈谷市)  未達成  愛知県 
岡崎第一ホテルイースト館(岡崎市)  未達成  岡崎市 
岡崎サンホテル(岡崎市)  未達成  岡崎市 
ホテル新永新館(豊田市)  達成  日本ERI 


名古屋市の建築物の確認申請の推移

   1999年度  2000年度  2001年度 2002年度  2003年度  2004年度 
行政分   10,278  6,979  4,676  2,202  1,440  1,161
民間検査機関分    562  3,336  4,879  7,096  8,780  9,420