愛知民報

【17.07.16】設楽ダム 必要ない 総事業費2400億円 日本共産党県議団「撤退」を主張

 「国土強靭化」を掲げ、大型公共事業のバラマキを進める安倍自公政権は、民主党政権が建設の是非の再検証をはじめた83ダムのうち、豊川(とよがわ)上流の設楽(したら)ダム(愛知県)を含む46ダム建設を継続としました。設楽ダムの事業主体である国土交通省中部地方整備局は6月3日、設楽町内で ダムの施工が乾いた状態でおこなえるよう、河川の流路を変更して流水を導く仮排水路「転流工」の工事に着手しました。一方、同ダムの建設に反対する市民運動や日本共産党の議会論戦で、水需要の予測が過大で、建設に根拠がないことが明らかになっています。

設楽ダムの建設中止を求める会の総会で市野和夫代表の話を聞く人たち=2日、豊橋市

 

膨らむ事業費

 設楽ダム計画は国の直轄事業。高さ129㍍の重力式コンクリートダムです。貯水容量は9800万立方㍍。設楽町の中心集落のすぐ横に巨大なダム湖を造る計画。
 ダム本体と付け替え道路を含む総事業費は当初、2070億円でした。ところが昨年5月、国は設楽ダムの建設に関する基本計画を変更。物価上昇や消費税増税を理由に事業費を2400億円に引き上げました。関連事業を含めれば3000億円を超すと言われています。愛知県の負担は721億円から809億円に88億円増額されました。2020年度までの工期は26年度までに延長されました。
 愛知県の大村秀章知事は、基本計画の変更について国からの意見照会に同意。県議会の自民、民進、公明の各党も賛成しました。日本共産党の、しもおく奈歩愛知県議は、昨年6月24日の県議会振興環境委員会で、国と一体でダム事業を推進する県の対応を批判。事業からの撤退を主張しました。

 

過大想定

 東三河の水道用水、工業用水、農業用水は、2002年の豊川総合用水事業(大島ダムや調整池など整備)の完成で供給能力が大幅に増強されています。
 国の豊川水系水資源開発総合計画(フルプラン)は、東三河の上水道について2015年の1日平均給水量を26万8000立方㍍と予測しましたが、実績は23万3000立方㍍にとどまりました。1日平均給水量・1日最大給水量は07年を境に減少傾向です。フルプランの想定需要量は著しく過大であったことが明瞭になっています。
 設楽ダムの建設中止を求める会の市野和夫代表(元愛知大学教授)は、2日豊橋市でおこなわれた同会の総会で、「愛知県は県営水道を通じて各市町に水道用水を供給するために設楽ダムの水を利用する権利を設定しています。今後水需要は伸びる見込みはありません。県が水道用水の使用権を取り消すと表明すれば、ダムは止められます」と強調しました。

 

大島ダム=2日、新城市

 

夏に署名運動

 同会はこの夏、知事に設楽ダム事業からの撤退を求める要請署名に取り組みます。