愛知民報

【18.06.03】名古屋城天守閣 「入場禁止」に 木造化より耐震補強 博物館機能の充実を

 河村たかし名古屋市長は5月7日から名古屋城天守閣への市民や観光客の入場を禁止しました。「天守閣木造復元事業に伴う調査および工事」のためです。閉鎖は竣工予定の2022年12月まで。4年半に及びます。日本共産党の田口一登名古屋市議団長に聞きました。

 ―いまある名古屋城天守閣は。
 田口 徳川家康が大名を動員して1612年に築いた名古屋城は、1945年に太平洋戦争の米軍空襲で焼失しました。59年に「二度と焼けないように」との願いを込めて鉄筋コンクリート造りで再建されました。当時の建設費6億円のうち約2億円が寄付。「戦後復興のシンボル」です。
 ―木造化のためにすぐ解体するのですか。
 田口 市はまずは天守閣の地下1階の石垣調査のためと言っています。名古屋城の石垣は国の特別史跡ですから、調査するには文化庁の許可が必要です。まだ許可申請すらおこなっていません。
 ―河村市長は「史実に忠実な木造化」にこだわり、エレベーターを設置しない方針を示しています。
 田口 時代逆行です。天守閣というものはもともと殿様など少数の権力者が登った建物です。今日、車いす使用者をふくめ多数の市民や観光客が登れるようにするには無理があります。「史実に忠実」はありえません。
 エレベーターの代替はあるのか。市当局は、5月15日の市議会経済水道委員会で、「代替の新技術は現時点であるか」という質問に対して「ない」と答弁しています。いわば見切り発車の入場禁止です。
 ―バリアフリーの方針に反するのでは。
 田口 市民要望や市の方針との矛盾が深まっています。名古屋市福祉都市環境整備指針(2017年3月)は、「公共建築物をはじめとする市民の皆様が利用される施設についてバリアフリー整備」をうたっています。
 ―木造化の費用は。
 田口 木造化の建設費は505億円、維持費を含めると1000億円の財政支出が予想されます。市長は、入場料収入でまかなうと表明していますが、現在の年間192万人の倍近い346万人が50年間続くという空想的な計画です。赤字になれば税金投入です。「中日」の世論調査では、7割以上が「入場者予測は過大で信頼できない」と回答しています。
 ―木造化について市民の声は。
 田口 市長は2017年の市長選公約で「木造復元化」を掲げましたが、市民の反応は冷静です。
 16年に市がおこなった「2万人アンケート」や17年の市長選挙中の世論調査で、「22年木造化賛成」は2割にとどまり、「時期にこだわらない木造化」「現天守閣耐震補強」が6割を超えました。
 ―市議会各会派の態度は。
 田口 自民、名古屋民主(旧民進と立憲民主)、公明、減税日本の各会派は3月19日におこなわれた市議会2月定例会で天守閣木造化を急ぐ予算案に賛成しました。日本共産党は反対しました。
 ―共産党の提案は。
 田口 木造化は急がず、現天守閣の耐震補強をすべきです。エレベーターの改修や博物館機能の充実をおこなって名古屋の歴史、未来、名所が分かる情報発信施設にすることを提案しています。

 

河村市長「エレベーターなし」 障がい者が抗議 

「絶対必要エレベーター」「誰もが登れるエレベーター」「市長は差別をやめろ」などと訴える車椅子使用者たち=5月21日、名古屋市役所前

 「絶対必要エレベーター」「市長は差別をやめろ」「誰もが登れる名古屋城」―河村市長が木造復元後の名古屋城天守閣にエレベーターを設置しない方針を示したことへの抗議行動が5月21日、名古屋市役所前でおこなわれ、約150人の車椅子使用者らが約4時間にわたり声をあげました。
 愛知障害フォーラム(ADF)の辻直哉事務局長は、「名古屋市役所西庁舎と同じビルの12階の高さにエレベーターをつけないなんてありえない。障がい者や高齢者を締め出すことになります。公共空間で新たな差別を生み出します」と怒りました。