愛知民報

【18.05.20】憲法施行71周年記念市民のつどい 自衛隊明記で9条死文化 渡辺治氏 「3000万署名で改憲発議阻止を」

約2700人の聴衆が集まった「憲法施行71周年記念市民のつどい」

 愛知憲法会議が5月3日名古屋市内で開いた憲法施行71周年記念市民のつどいで、渡辺治一橋大学名誉教授が「改憲問題の新局面と私たちの課題」と題して講演し、9条に自衛隊を書き加える自民党の改憲案を厳しく批判しました。講演を紹介します。

講演する渡辺治一橋大学名誉教授=3日、名古屋市熱田区

 

より右寄りに

 安倍首相の「憲法9条を変えても変わらない」というのは真っ赤なウソだと思います。何の変わりもない改憲にチャレンジするはずがない。彼は「戦争する国」をつくることができるという確信のもとに挑戦をし、必ず夏以降支持率が回復すれば、自民党総裁選挙に出てくる構えです。
 9条の1項2項を存置して自衛隊を明記する案は、自民党の憲法改正推進本部の細田さんが執行部案としてつくりました。執行部案は安倍首相が言った案そのものと思います。
 3月25日の自民党大会で大々的に改憲案を決定して、一気に憲法審査会に持ち込む予定でした。しかし、「森友・加計」疑惑が追及される中で、そっとやらざるを得なくなった。
 自民党は危機になるほど、戦力不保持・交戦力否認を定めた9条2項の削除を主張する右派が元気になります。安倍さん自身がやろうとしていることは「改憲そのもの」です。 「9条1項、2項を残し必要最小限度の実力組織として自衛隊を保持する」という〝柔軟〟な案を出してきた。
 しかし、大会案には右派の意見が反映し、条文に「必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織」として自衛隊を保持すると書いてきた。「必要最小限度」の文字は削除されました。執行部案も大会案のどちらも危険です。

 

集団的自衛権

 憲法9条に自衛隊を明記することによって、9条の根本的な改変が起こります。
 9条1項2項が、なぜ日本の国民や世界の人々に大きな支持を得たのか。それは9条1項2項が「武力によらない平和」を日本政府に義務付けたからなんです。
 9条に「自衛隊を保持する」と書くと、堂々と「武力によって日本の平和を守る」という規定が入ります。9条が世界に何をアピールしているのかまったく分からなくなります。 しかも新しいほうが強いということになれば、「武力による平和」が9条のアピールになります。日本国憲法全体が変わります。憲法に軍事組織が明記されるからです。
 戦争法で海外で武力行使できる自衛隊が憲法に明記されれば、堂々と軍法や軍法会議がつくられ、人権が制限されるでしょう。軍事情報へのアクセスは厳しく制限され、情報を漏らした者は特定秘密保護法で処罰されるでしょう。災害復旧も「消防と警察に任せる」ということになります。
 戦争法でも合憲化されなかった全面的な集団的自衛権行使が可能になります。
 今こそ安倍政権を倒し、改憲発議をつぶすチャンスです。3000万署名の成功こそがカギです。いまこそ市民の出番です。