愛知民報

【16.07.31】最低賃金1500円 愛知 消費拡大4337億円 生産誘発、雇用増に効果 労働総研試算

 実質賃金も個人消費もマイナスの?アベノミクス不況?。どう抜け出すか。最低賃金(最賃)引き上げが有効策として注目されています。全労連のシンクタンク・労働問題総合研究所は20日、最賃引き上げが日本経済・地域経済にもたらす波及効果の試算を発表しました。最賃引き上げは、消費を拡大し、生産活動と雇用を増やして、日本経済全体に大きな効果をもたらすことが明らかになりました。

労働総研の試算は「賃金構造基本調査」などの政府統計にもとづくもの。時給1000円に引き上げた場合、消費需要は2兆4800億円、1500円の場合、16兆2200億円増えます(表)。
 都道府県別の試算によると、愛知県では、現行の時給820円から1000円に引き上げた場合、645億円の消費拡大が見込まれます。時給1500円に引ぉ上げた場合は、4337億円になります。対象は時給1500円未満で働く118万3000人です。
 労働総研は現行の最賃820円未満で働いている労働者の数は9・8%、約11万6000人いることを明らかにし、最賃引き上げだけでなく、守らせることも重要と指摘しています。
 

最低生計費調査

 最賃引き上げを求める運動が広がっています。愛知県労働組合総連合(愛労連)は今年の春闘で、25歳単身者が名古屋市内で自立した生活を送るために必要な賃金は時給換算で「男性1302円」、「女性1304円」とする最低生計費調査の結果を発表。最賃引き上げの根拠としました。今後、「夫婦と子ども2人」などの核家族世帯を対象にした調査が予定されています。

厳しさ実感

 愛労連は今年2月、2015年に改定された現行最賃の時給820円、週休2日で月22日就業して得られる14万4320円から税金と社会保険料を差し引いた11万8011円で1カ月生活する「最賃生活体験」を実施しました。参加した組合員から「赤字続出」と厳しい実態が次々と寄せられました。
 愛労連の最賃ロングラン宣伝行動には賛同が広がりました。「社会的正義」を掲げ、最賃引き上げをアピールする若者グループ?エキタス?が誕生。同グループは最賃1500円をめざしています。

運動ヤマ場 今年度改定の答申迫る

 最低賃金制度(最賃)とは「最低賃金法」にもとづき国が賃金の最低額を定め、使用者は最賃以上の賃金を支払わなければならないという制度です。最賃の額は都道府県ごとに異なります。
 6月14日にスタートした厚生労働省の諮問機関、中央最低賃金審議会(中賃審)の議論が、参院選の中断を経て7月14日に再開され、同審議会の小委員会は26日に全国平均で24円引き上げる目安を示しました。
 愛知地方最低賃金審議会は目安を受け、8月上旬に愛知県の最賃引き上げの額を決定します。
 愛知県労働組合総連合は、全国一律最賃実現を求める請願署名や最賃生活体験の声を審議会に突きつけ、今すぐ時給1000円以上の最賃引き上げを求めています。

いますぐ1000円、1500円めざす 日本共産党愛知県 若者雇用対策部長 すやま初美

 パート・アルバイトなど非正規労働者は最賃ぎりぎりで募集されています。働く貧困層をなくし労働者全体の賃金を底上げするためにも、最賃の引き上げは不可欠です。
 安倍首相は参院選後、経済財政諮問会議で今年度の最低賃金の改定は「3%引き上げに最大限の努力を」と指示しましたが、毎年3%引上げても1000円に届くのは2023年までかかります。20年までに時給1000円をめざすとした政府目標さえ達成できません。
 「いますぐ、どこでも1000円、1500円をめざす」要求の実現へ全力をあげます。
 都道府県ごとに異なる現行の最賃を全国一律に改める必要があります。県境を隔てただけで賃金が異なるということになれば、若年労働者は流出し、地域の活力低下につながります。
 最賃の引き上げにあたって、中小企業が最低賃金を支払えるように支援を抜本的に強化するべきです。