愛知民報

【14.04.06】?前代未聞の反撃?を 人間らしい生活取り戻したい 「生活保護基準引き下げ反対愛知連絡会」が発足

 国は昨年8月から3年間、3回にわたる生活保護(生保)基準の引き下げを強行しています。引き下げ幅は総額670億円、平均6・5%、最大10%です。これは2012年8月に民自公各党が消費税増税と一体で成立させた、社会保障改革推進法によるもの。安倍政権のくらし破壊の暴走に対し、広範な市民、法律家、労働組合、日本共産党などが共同して反撃に立ち上がっています。3月22日に「生活保護基準引き下げ反対愛知連絡会」が発足しました。
 

 昨年9月、全国で1万人以上の生保受給者が保護基準引き下げに対して、不服審査を請求しました。愛知では反貧困ネットワークあいち、愛知県社会保障推進協議会(愛知社保協)などが呼びかけ、300人以上が大村秀章県知事に請求書を提出しました。
 連絡会結成総会で、生保受給者が次々に「国のやり方に怒っている」「不服審査請求への支援は心強い」などと発言しました。
 生保基準は国が制度として保障する生活の最低限度(ナショナルミニマム)です。基準引き下げにより、憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」が脅かされます。
 基準引き下げは、就学援助など生保基準に連動するすべての制度に影響します。住民税の非課税基準が下がり新たに課税されたり、家計負担が増えるおそれもあります。

行政の暴走 くいとめる

 総会で講演した吉田雄大弁護士(生活保護基準引き下げにNO!全国争訟ネット事務局)は、生保基準引き下げに?前代未聞の反撃?を訴え、当事者の声を届けて行政の暴走と制度改悪を阻止し、改善させることを呼びかけました。また、2014年度は個人住民税の非課税限度額が据え置かれたことを紹介し、「世論が国を動かした」と強調しました。
 不服審査請求について森弘典弁護士(反貧困ネットワークあいち)は、「生保基準切り下げは厚労省が決めたもので、自治体の裁量はない」とする県の裁決が届いていることを報告し、再審査請求を経て裁判の準備に進む方針を示しました。
 安倍自公政権は昨年12月、民主、維新、みんなの各党と一緒に、生活保護法の改悪を強行しました(日本共産党は反対)。口頭でも認められている生活保護申請を文書でしか認められなくしたり、親族の扶養義務を強化するなど、生活困窮者を生活保護から遠ざけるものです。
 参院厚生労働委員会は昨年11月、国民の世論と運動を反映し、国民に生保を申請させない?水際作戦?をしないよう地方自治体に周知徹底する付帯決議を可決しました。しかし厚生労働省は今年2月、書類の提出を大原則とする省令案を発表。決議の内容を骨抜きにしています。

国に抗議し 裁判闘争へ

 愛知社保協の小松民子事務局長は、厚生労働省に抗議を集中することと、月2回行っている「(社会保障改悪がこのまますすむと)困っちゃう宣伝」への参加、生活保護制度や不服審査請求、裁判についての学習促進を提起しました。
 内河惠一(よしかず)弁護士が弁護団を代表し「戦後の厳しい時代に国民が夢を持って生活できるように作られた素晴らしい生活保護制度がゆがめられてしまった。人間らしい生活を取り戻すためにたたかおう」と呼びかけました。

国連勧告に逆行 浅田光治さん(愛知県生活と健康を守る会会長)の話

 日本の生活保護行政の動向は、2013年に国連社会権規約委員会が日本政府におこなった「申請手続きの簡素化」「負の印象の払拭」という勧告に完全に逆行しています。
 福祉事務所の窓口で申請書類を渡さずに帰してしまう?水際作戦?が今でも行われています。
 健康条件などを考えない強引な就労指導や、親族への扶養照会を行い辞退に追い込む?硫黄島作戦?、生活保護に対する差別意識をあおりたて、必要な人が窓口に寄り付かなくなる?沖合作戦?もあります。
 福祉事務所への警察官OBの配置も、必要な人を窓口から遠ざけようとするものです。
 窓口は意思表示ができる人すべての申請を受け入れるべきです。申請をためらわせないためにも、市民の手が届くところに書類を置かせる運動を広げる必要があります。