愛知民報

【13.11.03】取り戻せ!生存権 人間らしい生活 国民の権利を 社会保障解体に 反撃の国民運動

 
 安倍自公政権は、先の通常国会で廃案になった生活保護改悪法案を臨時国会に再提出しました。その内容は、生活保護を権利ではなく「恩恵」「施し」に変えるものです。安倍政権の社会保障解体攻撃を許さない国民運動が大きく広がっています。8月に強行された生活保護引き下げに対する不服審査請求は全国で1万件、愛知でも274件にのぼりました。10月16日から19日まで「反貧困全国キャラバン」が愛知県入りし、 街頭宣伝や自治体への要請、学習会などが取り組まれました。

朝日健二さんが講演

 
 全国キャラバンの企画として、「反貧困ネットワークあいち」が19日に開いた集会で、朝日健二さん(朝日訴訟の会理事)が「取り戻せ!生存権 『人間裁判』から学ぶ」と題して講演しました。

 朝日さんは、義父・朝日茂さんが憲法25条を根拠に生存権の保障を求めておこした「朝日訴訟」が、権利としての社会保障を実現する大きな力となったと強調。現在の生活保護法や社会保障の全面改悪に反対する国民運動にエールを送りました。

国民が支えた ?人間裁判?

 1957年に始まった「朝日訴訟」は、岡山県の結核療養所の重症患者で日本共産党員だった朝日茂さん(1913~64)が生活保護行政の抜本的改善を要求し、国を相手どって起こした行政訴訟のこと。
 茂さんは、生活保護法にもとづく医療扶助と月額600円の生活扶助を受けていました。健二さんは「月600円の生活は肌着2年に1着、1年に1枚のパンツというものでした。加えて病状悪化で病院食が口に入らず、補食に必要な金もなかった」と言います。
 60年に東京地裁で、憲法25条の「健康で文化的な生活」は国民の権利であり、国は国民に具体的に保障する義務があること、それは予算の有無によって決められるのではなく、「指導支配」しなければならないという判決が下され、茂さんが勝利しました。
 健二さんは「60年の勝利判決後、国の生活保護政策が変わりました。83年まで23年間、
生活保護基準の引き上げが行われ、今日の保護基準に到達しました」と述べました。
 朝日訴訟は?人間裁判?と呼ばれ、思想・信条をこえた広範な団体や国民に支えられました。

保護法改悪は 廃案に

 安倍内閣は10月15日、保護申請を厳格化する、生活保護法の改悪案と生活困窮者自立支援法案を提出しました。
 健二さんは「朝日訴訟をたたかった者として、生活保護改悪は許せない」と力説。5月31日の衆院厚生労働委員会で、生活保護法改悪法案について参考人として意見陳述し「申請を抑制し、生存権を否定し、生活保護法の根幹を前近代的に改悪するもの」と批判したことを紹介しました。
 健二さんは申請手続きに同行した市民団体の事務所が警察に捜索されたことに強い怒りを示し、「最初から弁護士に依頼しなければ申請ができなくなる中身だ。法律は廃案にしなければならない」と強調。講演の最後を「権利はたたかう者の手にある」と、茂さんの言葉で結びました。

生活保護 削減根拠 インチキ 森弘典弁護士が指摘

 集会で森弘典弁護士は、厚生労働省が生活扶助費引き下げの根拠とした消費者物価指数の計算に「重大なインチキがある」と、次のように指摘しました。
   ◆
 厚労省が580億円の保護費引き下げの根拠にしたのは、生活保護に関わる物価指数が08年から11年までの間に4・78%下がったという数字です。しかし、貧困層が購入する生活必需品はほとんど値下がりしていません。
 11年7月のテレビの完全デジタル化を前に買い替えがすすみました。厚労省は生活保護受給者がデジタルテレビを「買ったことにして」過去の生活費を水増しました。そしてデジタルテレビの大幅値下がりが厚労省計算の物価指数に影響しました。しかし生活保護世帯には買う余裕はなく、総務省がチューナーを配布したのです。
 ほかに大幅に値下がりしたパソコンや携帯電話なども、生活保護受給者のほとんどが購入できません。厚労省は「生活扶助切り下げありき」の数字作りの批判を免れません。