愛知民報

【13.04.21】ホームレス経験のある生活保護受給者 孤独 健康悪化 行き届かぬ行政の自立支援 日本福祉大の研究会が調査

 定まった住居を持たないホームレスの人たちが生活保護を受給し、アパート生活に移行した後も、地域で生活をつづける上で、孤独や健康状態の悪化など、新たな困難に直面しています。受給者の自立を助ける生活保護行政のあり方が改めて問われています。(本紙・村瀬和弘)

 
 日本福祉大学の山田壮志郎准教授が主宰する研究会は、昨年秋にホームレス状態からアパート生活に移行した人の生活状況を調査しました。同会が3月31日、名古屋市で開いた報告会では、生活物資や人とのつながりの不足、健康状態の悪化、貧困の連鎖などが明らかにされました。

 調査対象は名古屋市内で活動する3つのホームレス支援団体が把握していた約800人。334人から回答を得ました。その90・7%は、年金や就労収入との組み合わせも含め、生活保護を受給しています。

近所の人とも会わず

 調査では、困った時に援助を受けられる人が少ないことが浮き彫りになりました。

 さびしい時に会って話をしたり、自分のことを相談する相手がない人は5割前後。

 「食料や医療品をくれる人がいない」は68・1%、「いざという時お金を貸してくれる人を持たない」71・6%、「病気の時に世話をしてくれる人がいない」75・8%にのぼります。

 人との交流も希薄。子どもを持つ人の84・8%の人が子どもに会ったり電話や手紙をやり取りすることが「まったくない」と回答。友人、親戚、近所の人に会うことは「まったくない」が全体の50・5%。「月1回未満」が10・9%でした。

 健康状態では、全体の47・4%が生活習慣病の経験者。「治療中」の疾病は、高血圧24%、糖尿病13・5%、肝臓病9%、心臓病5・7%などでした。
 

 

行政の親身さ感じられず

 自立が困難な生活保護受給者に対して、行政は十分に対応できているのか。

 福祉事務所のケースワーカーの訪問頻度、相談の親身さについても質問しました。

 訪問頻度は「1カ月に1回」「2カ月に1回」の合計が全体の31%。「3~6カ月に1回」が32%、「7カ月~1年に1回」が16%でした。

 合計52%の人が「ケースワーカーは親身に相談に乗ってくれる」と回答。一方、親身さを「あまり感じない」が22%、「まったく感じない」が16%ありました。

 山田准教授は「福祉事務所のケースワーカーに疲弊感が積もっている。生活保護バッシングを助長させないために支援のあり方を考えたい」と述べました。

 調査は4年間継続して行い、経年変化を分析する予定です。

ケースワーカー大幅増員で 福祉最優先に転換を

 生活保護法第1条は、保護によって最低限度の生活を保障し、自立を助長すると定めています。今回の調査結果は、自立支援の不十分さを浮き彫りにしています。

 その最大の原因は、福祉事務所のケースワーカー不足といえます。社会福祉法で定めた配置基準は、80世帯に1人です。名古屋市の現状は、1人のケースワーカーが120世帯以上を担当。超過重労働で自立支援が十分にできない状態です。

 日本共産党名古屋市議団は今年度予算で、福祉事務所の21人定員増を実現させました。福祉最優先の市政への転換が望まれています。