愛知民報

【11.10.23】許すなTPP参加 暴走許さぬ共同を 幅広い行動呼びかけ

 稲を刈り取る中島義雄さん=16日 愛西市
 野田内閣は11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議にむけて、TPP(環太平洋連携協定)交渉参加を決定しようとしています。

 昨年、JA愛知と愛知県がTPPに参加した場合の影響を試算しましたが、県の試算(別項の表)では県内農漁業で937億円も生産額が減少します。

 TPPは農林漁業だけでなく、医療や雇用、食の安全・安心など国民生活全般に影響することから、JAや漁連、医療関係者、消費者団体などが共同した反対運動が、全国各地ですすんでいます。

 14日、TPP参加反対を表明してきた日本共産党は「TPPへの暴走を許さない国民的な共同を呼びかけます――くらし・食料・農業・地域経済を守るために力をあわせましょう」と題するアピールを発表しました。

 全国農業協同組合中央会(JA全中)は、9月末までにTPP参加反対署名1166万8809人分を集約したと発表しました。

 同党愛知県委員会は、?共産党のアピールを活用して、農林水産業や医療、建設業、中小企業団体、労働組合、自主的な共済制度を持つ団体などへ申し入れや共同を呼びかける、?宣伝、地域集会やデモなどを行う、?共産党のパンフレット「10問10答 これならわかるTPP」やのぼりを活用して、宣伝と対話、署名活動を行う―ことにしました。

農漁民・消費者が怒り

 愛知県内の農漁民と消費者団体の代表から、TPP参加への怒りや危惧の声が寄せられています。

 春日井市農業委員の川地隆正さんは「去年はコメ1俵(60キログラム)1万円だった。生産コストは1万5000円で大赤字だ。TPPに参加すれば価格は半額から3分の1に下落する」と指摘します。また「経済界はコメだけでなく農地も投機の対象にしようとしているが、農家がつぶれると農地も荒廃し、環境に悪影響をおよぼす」と話しました。

 愛西市でコメ農家を営む中島義雄さんは、10軒分の土地、約5ヘクタールを耕作しています。「点在する田んぼをトラクターやコンバインで巡回する状態で効率が悪い。アメリカやオーストラリアの広大な農場には太刀打ちできない。TPPに参加すれば転廃業に追い込まれる農家が続出する」と強調しました。

 南知多町で、ノリ養殖業を営む山下芳弘さんは「東日本大震災の影響で東北地方からの出荷が途絶え商品が不足ぎみなのに、ノリの価格は上がっていない」と言います。業者の平均年齢は60歳を超え後継者不足です。燃料代や機械修繕費の高騰に耐えられず、今でも廃業に追い込まれる人が多い実態を話し、「TPP参加でこれ以上価格が下がれば、漁業は続けられない」と語気を強めました。

 「自国民の食料を国内でつくることは政治の役割。自給率を上げることが重要」と話すのは、県消費者団体連絡会の中村敏子さん。「世界は食料不足で、日本国民に必要な食糧を安定的に供給できるとは限りません。食の安全も不安。残留農薬や食品添加物でアメリカの基準が押し付けられても政府はノーと言えないでしょう。TPPは消費者にとってもよいことはありません」と述べました。

TPP参加―県内農漁業への影響 生産減少額937億円(愛知県が2010年11月30日に発表した試算)

TPP加盟による県内農漁業生産への影響(愛知県試算)
品目 2008年生産額(億円) 生産減少額(億円) 減少率(%)
農業 346 311 90
小麦 8 8 99
25 4 14
かんきつ類 70 6 9
牛乳・乳製品 214 214 100
牛肉 97 71 73
豚肉 226 158 70
鶏肉 28 4 13
鶏卵 247 44 18
農業生産額 3210 820 26
水産業 ノリ 51 35 68
ウナギ 116 74 64
イワシ 10 5 50
アジ 3 1 52
イカ 3 2 46
漁業生産額 402 117 29
農水産業合計 3639 937 26

国民皆保険を壊す 医師 土井敏彦さん

 
 私は2月の愛知県知事選挙に立候補し、TPP参加反対で論戦をいどみました。大村現知事をはじめ、私以外の4人の全候補者がTPP賛成でした。

 豊橋市で行われた公開討論会で、ある水産加工業者が、TPP反対の立場で発言したことが印象に残っています。

 TPPは全品目の関税撤廃だけでなく、物品、サービスなどすべての貿易の障壁を取り除く目的があります。当然、医療界にも大きな影響があります。

 日本を世界一の長寿国に導いた優れた医療制度である国民皆保険制度が、「外資参入の障壁」としてアメリカからの圧力により壊されようとしています。

 日本医師会は、株式会社の参入や、保険外診療と保険診療がミックスされた「混合診療」の全面解禁となるとして反対し、日本薬剤師会も医薬品規制緩和の懸念などから反対しています。

 「命の沙汰も金次第」の典型、アメリカの医療がそのまま日本に入ってくる不安をみんなが感じています。

 ふるさとをこわし、日本国民のいのちを犠牲にしてまで、自動車産業等の一部輸出大企業の利益を優先するのがまっとうなことなのかと訴え、反対運動を盛り上げていきたい。