愛知民報

【11.08.07】大村県政どう見る 「構造改革」ねらう 県民福祉の増進から企業利益の増進へ

 大村秀章知事の愛知県政が発足して半年。これをどう見るか、日本共産党愛知県委員会の林信敏自治体部長に聞きました。

県政変質

 
 ――大村県政をどう見ますか。

 林 愛知と日本の仕組みを多国籍企業がもうけやすいようにつくり変える「構造改革」県政です。

 「稼げる大都市をつくる」という橋下徹大阪府知事、「世界からヒト・モノ・カネを呼び込む」という大村知事、「名古屋市株式会社をつくる」という河村たかし市長。大企業利益優先の新自由主義「構造改革」トリオです。

 地方自治法は自治体を「住民福祉増進の機関」と位置づけています。これを徹底的に「企業利益増進の機関」に変質させる方向です。

「中京都」

 ――中京都構想の姿が見えません。

 林 「改革」ポーズの看板で世論を引きつけようとしています。

 橋下大阪府知事の大阪都構想は、大阪市と近隣市をバラして大阪都知事の支配下に置く。都知事の号令で、インフラ整備、減税、規制緩和特区といった“大企業天国”をつくる。そうすれば、世界から多国籍企業が集まり、大阪経済が再生する―と。

 橋下改革も大村・河村改革も、“大企業・多国籍企業天国”をつくるという点では同じです。「庶民革命」は、実は「多国籍企業革命」ということです。

地震対策

 ――大村県政は今年度予算で約201億円の地震防災対策関連事業費を組みました。

 林 県民の不安と要求が反映しています。県立高校耐震改修費23億円、民間住宅耐震改修費補助金11億円は当然です。さらに、東海・東南海・南海3連動など巨大地震に耐えるレベルに高めなければなりません。

 地震防災関連予算でもっとも多いのは道路事業費66億円です。地震対策に名を借りたゼネコン型公共事業の加速・拡大ではないか、県民の立場からチェックが必要です。

福祉後退

 ――大村知事は「医療・福祉に集中投資」を公約しました。 

 林 後退です。市町村の国民健康保険の県補助金を減らし、国保広域化を推進します。国保料値上げにつながります。救急勤務医支援補助金も削減です。

 心身障害高校生の奨学金・入学準備金・技能習得奨励金は県の事業評価でも必要・有効とされているのに廃止されました。

 子ども医療費無料化は通院小学校入学前、入院中学卒業まで。前進していません。

TPP賛成

――外需依存から内需拡大へ経済政策の転換が求められています。

 林 大村県政にリーマンショックで露呈した極端な外需依存型の県経済の体質を変える方向は見えません。

 中小企業予算は融資が中心。町工場支援の固定経費補助や民需拡大の住宅リフォーム助成はありません。

 県は中小企業基本条例制定のための懇話会を開催します。実効ある基本条例にするために中小企業・業者団体の参加が必要です。

 大村知事は国内農業の衰退につながるTPP(環太平洋連携協定)参加賛成です。農業への企業参入を促進します。市街化調整区域の開発規制を緩和し、工場進出ができるようにしました。農地減少が懸念されます。

大型開発

 ――大型公共事業はどうでしょうか。

 林 中身は、中部国際空港2本目滑走路、名古屋港の国際戦略港湾開発、それらにつながる広域幹線自動車道、リニア新幹線開通を起爆剤とした名古屋駅再開発です。

 知事、名古屋市長、大企業代表が参加した「中京独立戦略本部」を設立し、大型インフラ整備の推進体制をつくろうとしています。

県民と矛盾

――県民が期待する県のあり方は。

 林 愛知県の県民意識調査(2009年)によると、第1位が医療・介護で53・7%、第2位は大規模地震・風水害対策で49・2%です。

 一方、大村県政が力を入れる空港や高速道路などのインフラ整備は5・9%でした。

 福祉・防災の愛知づくりこそ、県民の願いにこたえる県政です。