愛知民報

【11.01.23】厳しい新卒就職 雇用確保は企業、行政の責務

 長期化する不況の影響で、大学生・高校生の就職状況は「超氷河期」といわれています。数年前までは「就職難とは無縁」と言われた愛知県の実態を取材しました。
高校生、大学生、青年の雇用を考えるシンポジウム=12月26日

過去最低の内定率

 愛知労働局が1月に発表した今春卒業予定の県内大学・短大生の昨年11月末の就職内定率は55・9%。就職協定が廃止された1996年以降、最低の水準です。とりわけ短大の女子は47%と厳しい状況です。

 高校生も大学生同様に厳しく、昨年11月末の求人数は前年比5・9%減で過去最低。就職内定率は82・3%。統計を取り始めた1986年以降4番目の悪さです。

授業に出られない

 日本福祉大学の古川大暁全学学生自治会委員長は自治会が実施した学生生活アンケートの回答から深刻な就職活動の実態を告発します。

 「多くの学生が3年生の秋から就活をしている。学校で学んだことや自分の能力を生かせる職場を探す以前に、職に就けるかどうか不安をもっている。卒業後は福祉職をめざして入学した学生が多い。就職難のなかでも福祉職場は人手不足で求人が比較的多いといわれている。しかし給与等が悪く、借りた多額の奨学金の返済が困難で福祉職を断念し他業種に行く。福祉職の労働条件改善が必要」

家庭の貧困

 高校では、成績が良くても家庭の経済的理由から進学を断念し、就職を希望する生徒が急増しています。
 名古屋市内の工業高校では、自営業の親から「不況で多額の借金をした。進学をやめて働いてくれ」と言われた生徒がいます。

 推薦で大学進学が決まった生徒から「家計が苦しいので推薦を辞退したい」の申し出も。教師は言います。

 「求人数は昨年の半分しかなく競争が激しい。進学を断念した生徒は最初から就職希望の生徒より遅れて就活に入るのでなかなか就職先が決まらない」。

 普通科・職業高校以上に就職が厳しいのは定時制高校や養護学校など特別支援学校です。

 名古屋市立の定時制高校では12月になっても1割しか就職が決まっていません。

 名古屋市内の養護学校高等部の教師は「大企業ほど障がい者の雇用率が低い。大企業は社会的責任を果たし、障がい者の雇用を促進するべきだ」と強調します。

中小企業に目を

 春日井市内で装飾業を営む男性は「学生は大企業志向が強く、中小企業が合同面接会を開いても学生は来ない。将来性のある中小企業にも注目してほしい。自分たちも積極的に中小企業の魅力をPRしていく。大企業は2月頃から面接を始め4月には内定を出す。
年々早くなる。中小はその後からなのでいい人材を確保できない。就職協定など以前のようなルールを作ってほしい」と語ります。

公的支援策

 愛知県高等学校教職員組合(愛高教)などでつくる実行委員会が昨年12月開いた「高校生、大学生と青年の雇用を考えるシンポジウム」で、基調報告した熊澤知加夫愛高教書記次長は「就職相談から職場定着までの一貫した就職支援、3年以内既卒者のトライアル雇用奨励金制度の創設など公的支援策が必要」と訴えました。

 日本共産党は昨年7月、就職難打開と過熱する就職活動の是正をめざし、「働くルール確立」の提言を発表しています。