市民の監視、今後も必要
「聖域のない行財政改革」をすすめる名古屋市の河村市政は昨年11月、市の環境科学研究所(名古屋市南区)を2011年度末をメドに廃止する方針を打ち出しました。環境保護や公害被害者などの運動で当面の存続は決まりました。しかし河村市長は議会で「ゼロベースでの見直し」と表明し、機能縮小や再編を検討しています。同研究所の充実に向けた運動が重要になっています。
昨年11月16日、名古屋市は市幹部職員で構成する経営会議に河村市長も出席。「民間でできることは民間で」と同研究所の廃止方針を打ち出しました。
この廃止方針に対し、市民から「耐震偽装など民間業者のデーターねつ造が頻発している」「市は市民の健康と安全に責任をもて」と批判の声があがりました。
昨年12月、環境保護や公害被害者などの団体や研究者らが「民間任せでは環境行政の衰退を招く」と同研究所の存続を求める要望書を河村市長あてに提出しました。
市民の運動に押され、河村市長は2月議会で「廃止ではなく見直し」と苦しい答弁をしました。
名古屋市議会総務環境委員会は14日、市民から出されていた同研究所の存続を求める請願を審議しました。
同委員会で日本共産党の、くれまつ順子市議は「市民の生活環境の保全や科学的なデータを提供してきた研究所の役割は大きい。安易に民間委託するのではなく、あくまでも公設公営を堅持して充実を図るべき」と存続を強く求めました。請願は全会一致で採択されました。
同研究所は当面、存続することになりましたが、市の担当者は「業務内容を精査し、今年度中に再編計画を検討する。12年度から新たな体制に移行したい」と今後の方針を説明しました。観測や研究部門の機能縮小が懸念されます。
健康と環境を守れ!愛知の住民いっせい行動実行委員会事務局の村上誠治さんは「採択は市民的な存続の意思が確認されたことで大変結構。調査分析部門だけ残し、研究業務から撤退してしまわないか心配。市側にはよりよい研究所にするよう、働きかけたい」と話しています。
みなと公害患者と家族の会の古川巌会長は「公害裁判には勝ったが、街はまだきれいになっていません。研究所の存続は当然です。今後も汚染物質の除去のためもっと高度な研究をやってもらいたい」と期待しています。
【環境科学研究所】
名古屋市の環境行政を科学的、技術的に支える試験研究機関として、1971年に公害研究所として発足。92年から現在の名称に。大気中の汚染物質や酸性雨、幹線道路や鉄道の騒音、河川や海での水質汚染などを調査。公害防止のための研究活動を実施。