愛知民報

【09.11.22】設楽ダム 「中止」か「継続」か綱引き 問題点を探る

 総選挙の結果発足した新政権の前原誠司国土交通大臣は10月9日、全国48の国直轄ダム事業の一時凍結を表明しました。

 愛知県の関係では、これまで建設の是非が問われてきた設楽ダムと木曽川水系連絡導水路がふくまれています。いま、「中止」か「継続」か、綱引きが展開されています。改めて設楽ダムの問題点を探ってみました。

 

中止へ議員ネット

 11月6日、設楽町議会(定数14)の田中邦利日本共産党町議ら4人の議員は「脱ダム設楽町議員ネット」を結成しました。うち3人は無所属。政治的立場の違いを超え、設楽ダム建設中止の一点での議員の共同です。

 同ネットはただちに前原大臣にたいし設楽ダムの建設中止や中止後の生活再建、地域振興策の実施を求める要望書を送りました。

 その前、10月18日投票の設楽町長選挙では建設中止を訴えた無党派候補が善戦。「この選挙で、町内が推進一本でまとまっているわけではないことがより明確になった」(「朝日」十月十九日付)と報道されました。

「無目的ダム」

 設楽ダムは総貯水量9800万トンのコンクリート製多目的ダム。建設費2070億円。

 2月に設楽町、愛知県、国の間で建設協定が調印されたばかり。建設資材を搬入する道路の造成工事が始まったところで、ダム本体はまだ設計段階です。

 東三河地方への水供給を主な目的とするダム計画でしたが、同地方の水需要が停滞するなかで2005年に計画変更され、利水容量が削減されました。計画変更では当初の総貯水量1億トンを約9800万トンに減らし、そのうち6000万トンを「不特定容量」に割り当てました。目的はますます不明瞭となり、「建設ありきの無目的ダム」と批判されています。

「本末転倒」

 国交省は豊川の渇水時に「不特定容量」の一部を放水し、川の環境を維持するといいます。これにたいし流域住民から「本末転倒」の批判が出ています。

 建設予定地の豊川上流(寒狭川)は、絶滅危惧種の天然記念物、ナマズ科の魚ネコギギが生息し、アユやアマゴ釣りの清流として親しまれています。これまでの渇水年でもダムなしでネコギギが棲む河川環境は維持されています。

 流域住民は、設楽ダムでせき止めること自体が河川を「用水路化」すると心配。「河川環境の維持」というなら、ダム建設こそ止めるべきだと訴えています。