
日本共産党の井上さとし参院比例候補(参院議員)は、子育て支援について保育所や、小学生が放課後に通う学童保育をめぐる問題を国会で何度も質問してきました。学童保育をめぐる課題について、全日本建設交運一般労働組合(建交労)全国学童保育部会の田村一志事務局長と名古屋市内の学童保育に勤める、指導員歴40年の立嶋美穂さんと語り合いました。
井上 「こども家庭庁」が発足して、私の所属する内閣委員会の所管になり、学童保育の現場の皆さんの声をお聞きして質問してきました。保育所に通っていた児童の大半が小学校入学で学童に通うのに、職員の処遇や施設環境の面で保育所以上に問題がある学童に光が当たっていないことから、取り上げる必要があると思いました。 田村 「こども家庭庁」の今年度予算は、全体で7兆3000億円です。そのうち学童保育の予算は1296億円と全体の1・7%にすぎません。しかも昨年度と比べて100億円以上削られています。そのことが低賃金による職員のなり手不足や不十分な施設などの問題を生み、本来学童保育に求められる役割を果たすことができません。
●不十分な環境で
立嶋 私の地域では需要が増え、次つぎと一軒家やビルの一室を借りて学童をつくり、運営しています。老朽化した建物や急な階段、狭い部屋にトイレが1つしか無いような所もある。そうした学童に、1室あたり25人が入所しています。指導員は衛生面や安全面に神経をすり減らしながら子どもたちと生活しています。
井上 学童保育の面積の最低基準は児童一人あたり1・65平方メートルで保育所の乳児室と同じです。活発に動く小学生と乳児が同じ面積で良いわけがありません。
田村 現場からは職員の処遇に関する声も多く寄せられています。専門性が求められる職業にもかかわらず給与が低いため、人が集まらないことに加え、短期間で辞めてしまう人が多く、人手不足に陥っています。
立嶋 指導員が短期間で入れ替わってしまうことの弊害もあります。例えば、子ども同士で衝突が起きた時、私たちはその衝突がなぜ起きたのかをひもときながら、子どもの気持ちをくみ取っていきます。長年やっていればそれは当たり前のことですが、短期間勤務の人にその重要性や経験を伝えるのは難しいです。
田村 指導員には、子どもの一瞬一瞬の気持ちの変化を読み解くスキルが求められます。それには経験や職員間の情報共有が要り、継続して働ける労働条件が必要です。
井上 指導員の専門職としての資格要件や配置基準は、子どもたちの保育を受ける権利を公的責任で保障するために欠かせません。ところが国は、営利企業の参入を拡大するため、2019年に「従うべき基準」を参酌基準(参考にすべき基準)に後退させました。

●親の就労を保障
田村 学童保育には親の就労を保障するという面もあります。保護者にとって子どものために充実した保育環境があることは、安心して働けるということにつながります。
井上 コロナ禍でいっせい休校になった時も、保育所と学童は開所し続けました。親が就労しながら子どもたちを通わせる場所として、保育所と同様に大事だということが明らかになったわけです。学童保育を児童福祉法上の「児童福祉施設」として明確に位置づけ、しっかりと保障するべきです。
田村 児童福祉法6条では、学童保育を含む「放課後児童健全育成事業」は、保護者が昼間家庭にいない小学生に「適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る」と規定しています。国には、学童保育が生活の場であるという視点が欠けています。
井上 私の子どもも、かつて学童でお世話になりました。子どもが「行きたい」と思える環境で専門性を持った指導員がいることが学童の魅力です。それでこそ保護者も安心して子どもを預けて働くことができます。学童保育への思い切った支援が政治の役割だと思います。
(6月28日しんぶん赤旗)