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新美南吉が「蟹工船」オマージュ? 愛知 企画展 来月3日まで

新美南吉の自筆原稿などが展示された記念館=愛知県半田市

 愛知県半田市にある新美南吉(にいみ・なんきち)記念館で、企画展「『一枚の葉書』は『蟹工船』のオマージュか?」が開催されています。7月3日まで。

 「一枚の葉書」は新美南吉(1913~43年)が東京外国語学校3年生だった時に書いた、400字詰原稿用紙7枚の童話です。

 物語は、東京の少女が北海道の親戚にリンゴの礼状を書く場面から始まります。葉書の宛先は「北海道××郡△△村蟹江」。病の父に代わって配達する少年が北海道の雪山で遭難し、命を落としてしまう話です。

 企画展のきっかけは、愛知県蟹江町の住民が「なぜ蟹江という地名なのか」と地元紙に疑問を投げかけたこと。新聞社からの問い合わせをうけた遠山光嗣館長が改めて南吉の作品原稿などを調べてみると―。

 当初は、「リンゴ」ではなく「蟹の缶詰」となっていました。後で書き換えたものです。北海道で蟹の缶詰と言えば、プロレタリア作家の小林多喜二の「蟹工船」が思い浮かびます。「蟹工船」は「一枚の葉書」の5年前に発表されています。

 遠山館長は「『蟹工』にサンズイを付ければ蟹江です。『蟹の缶詰』は消したものの、地名を『蟹江』として『蟹工船』を暗示しようとしたのでは」と話します。

 会場には「一枚の葉書」の自筆原稿、南吉とプロレタリア文学との関わりなども展示されています。安城高等女学校の教員をしていた当時の日記も紹介され、「国民教育は先ず啓蒙であった筈だ。今の社会に都合よく馴致(じゅんち)された驢馬(ろば)のような人間を造りあげることではなかった筈だ」と書いた南吉の教育観も取り上げられています。

 入館料220円(中学生以下無料)。問い合わせは新美南吉記念館0569(26)4888へ。

(6月4日 しんぶん赤旗)