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国と東電は生活を返せ 福島原発事故避難で愛知・岐阜に 控訴審へキックオフ集会

 「原発事故の責任は国と東電にある。私たちの生活を返してほしい」―。東京電力福島第1原発事故から9年半。福島県から愛知県や岐阜県に避難してきた人たちが涙ながらに訴え続けています。「だまっちゃおれん!原発事故人権侵害訴訟・愛知岐阜」の原告団です。

 裁判は、全国約30ある避難者訴訟の一つです。愛知、岐阜、静岡に避難した42世帯128人が2013年に国と東電を相手取り、約14億4000万円の損害賠償をもとめて提訴。しかし昨年8月、名古屋地裁は国の責任を認めず、東電は無過失責任にとどめ、原告109人には1人当たり最大100万円の慰謝料を、19人の請求は棄却しました。

 この一審判決に対し、7世帯23人が「国の責任が認められないのは納得いかない」として控訴し、原告団を立ち上げました。昨年10月には弁護団も新しく結成されました。

■ 重大な人権侵害

 原告団は、この訴訟を人権問題としてとらえ、「被曝(ばく)防護、脱原発、被曝を避ける権利」の三つを強調し、「幸福追求権や生存権がある日本では当然の訴え。日本国民全体の問題」と訴えています。

 伊達市から愛知県に避難している原告代表の岡本早苗さんは、「控訴審は原告や弁護団の力だけでは勝てない。多くの人が一緒に声をあげてほしい」と呼びかけています。

 原告団は13日、控訴審勝利に向けたキックオフ集会をオンラインで開催しました。

 岡本さんは、「福島県民だけが被害者じゃない。事故による強制的な被曝は重大な人権侵害です。ともに『だまっちゃおれん』とたたかいましょう」と訴えました。

 弁護団長の宮田陸奥男弁護士は、「原告の強い思いを聞いて、弁護士13人で弁護団を立ち上げた」と経緯を説明。「一審の弁護士の協力を仰ぎながら、控訴審では独自の視点で訴えていく。ふるさとや生業(なりわい)を奪われたという原告の思いを真正面からぶつけたい」と話しました。

■ 働く夢奪われた

 いわき市から避難した男性は「家族の仕事も学校もなくなった。国の責任もなく、正当な賠償もない。脱原発の社会に転換しなきゃいけない」。白河市から避難した女性は「地元で進学し、働くという夢を奪われた。私たちの失われた過去を認めて補償してほしい」と語りました。

 別の原告も「今も子育てのなか、被曝という見えない敵とずっとたたかっている」、「原発は今でも健康を脅かし、土壌汚染を続けている」と語りました。

 弁護団の田巻紘子事務局長は、「一人ひとりの声が裁判所を動かす。原告だけでなく、多くの人がそれぞれのやり方で声をあげてほしい」と呼びかけました。

 第1回期日は11月下旬の予定。オンライン集会はYouTubeで視聴できます。https://youtu.be/Vehsc_mWh00

(9月19日 しんぶん赤旗)