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「平和の少女像」作家夫婦 名古屋でトークイベント「不自由展」の再開で関わった人々に感謝

「平和の少女像」制作の意図についてトークイベントを行う(左から)会田氏、岡本氏、キム・ソギョン氏、キム・ウンソン氏=8日、名古屋市東区

 「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」に「平和の少女像」を出品した韓国の作家、キム・ウンソン、キム・ソギョンさん夫妻が9日、名古屋市東区の芸術文化センターでトークイベントに出席し、制作の意図や背景などを語りました。主催はトリエンナーレ実行委員会。約100人が参加しました。

 トリエンナーレキュレーター(展示企画者)の会田大也氏が「芸術作品には、作品を作るにあたっての文脈がある。文脈を知ることで分かることもある。今日は『平和の少女像』を作った文脈を聞いていきたい」とあいさつ。

■ 相手傷つけず交流できる場

 不自由展実行委員の岡本有佳氏は、「日本社会に広がる排外主義、いまだ解決していない性差別、日本の植民地支配の否定を背景にした不当な攻撃によって、社会的な少数者に関わる表現が消されようとしている危機感が不自由展の出発点」と述べ、「違う意見をもっていても、相手を傷つけず、お互いに交流できる場が不可欠。その空間を作りたかった」と強調しました。

 キム夫妻は通訳を通して、「不自由展再開のために連日の行動に取り組んだ市民のみなさん、抗議の意思を示した作家のみなさん、関係者、日本の良心的な知識人のみなさんなど、関わってくれたすべての人に感謝したい」と話しました。

 夫のウンソン氏は、全斗煥独裁政権下の学生時代から、「社会から見えなくなるもの、隠されてしまうものを社会にあらわにし、見る人たちと共有することをコンセプトに作品を作ってきた。その作品の一つとして、『平和の少女像』を作った」と語りました。

 妻のソギョン氏は、夫が元日本軍慰安婦などによる水曜デモに遭遇したことがきっかけだったと説明し、「年間たたかってきたハルモニたちを記録したかった」と述べました。

■ 歴史をともに記録する意味

 1991年に初めて被害を証言したハルモニは、今日の「#MeToo」運動の最初のものだと思うと語り、「隣の空いたいすに鑑賞者が座り、手を握ってくれたその瞬間に、本当の完成をみることになる。歴史をともに記録する意味を込めた。次に何をするべきなのかを考えてもらうための場所として空けている」と話しました。

 質疑応答で「今までにあった困難なエピソードは?」と問われ、ウンソン氏は「今、ここで起きていることがエピソードだ」、ソギョン氏は「展示再開でも限定的な公開。見る人にも作品にも申し訳ない」と語りました。

 「平和の少女像が政治活動に利用され、作品の意図が伝わらなくなったのでは」との質問に、ウンソン氏は「作品が批判されることはこわくない。見る人には批評する自由がある。芸術は本来、政治的なもの。人権、平等、差別など多種多様な問題を目に見える形で表現する。許されないのは、政治をしているものが芸術を抑圧すること。芸術文化がたくさん発表され、認められる社会になってこそ、民主化が実現されると思う」と話しました。

 会場のスクリーンには、「平和の少女像」を見られなかった人のためにと、再開当日の朝に撮影した写真も映し出されました。

(10月13日 しんぶん赤旗)