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公益性も、火災避難対策もない リニア認可するな 次々 大深度地下使用 公聴会開く

公聴会で意見を述べる公述人(右端)。傍聴席は空席が目立った=6日、名古屋市中村区

 リニア中央新幹線工事の大深度地下使用申請について、国土交通省は東京と名古屋で公聴会を開きました。6、7両日の名古屋市での公聴会では、公述人から「大深度地下使用を認可すべきでない」との声が出されました。

 大深度地下の使用申請は、地下40㍍より深いところにリニアトンネルを建設するためJR東海が国に対して行っています。認可されれば地権者に工事の同意は不要で、原則的に補償も用地買収もしないですみます。対象は東京、神奈川、愛知の3都県約50・3㌔㍍。愛知県内は名古屋市~春日井市の約17㌔です。

 名古屋市の公聴会では2日間で13人が公述しました。

 JR東海や中部経済界などの公述は「大災害に備え中央新幹線による二重系化が必要」「東京、名古屋、大阪を1時間で結ぶリニアで巨大都市圏ができる」など従来の主張を繰り返し、大深度地下法の認可要件である「公益性のある事業」だと強調しました。

 一方で沿線住民などからは「とても公益性のある事業とは言えない」との声が続出しました。

 中京大学名誉教授の中川武夫さんは、ルート上の住民に説明会開催を直接知らせないなどJR東海の住民軽視の姿勢、環境影響評価書の不備、採算性など多岐に渡る問題を指摘。「公益性のある事業とは到底言えない。国にとって必要な事業というなら国民の合意、手続き、環境保全が不可欠。軽々に認可すべきでない」と訴えました。

 リニアはいくつもの活断層、構造線を横断し、南アルプスを貫通します。春日井市の川本正彦さんは「地震で断層がずれたら、トンネルやガイドウエイが損傷しリニアは走行できません。とても地震の備えにはならない」と指摘。「地震や火災が起きた場合、乗客が大深度地下から地上に出るまでにかかる時間もJR東海は説明できない。安全に避難する対策もない」と述べ、JR東海に認可を受ける資格はないと主張しました。

 「3兆円もの財政投融資がされ、国家的プロジェクトとなったのに契約情報などは公開されず、談合で起訴されたゼネコンにも発注を続けている。公益性のある事業なら情報を明らかにすべき」などの意見が続きました。

 日本共産党のすやま初美参院愛知選挙区予定候補も公述し、「大深度トンネルは春日井市の亜炭鉱跡の下を通る。陥没や家屋被害が起きる危険があるのに家屋調査もしようとしない」と批判。同じ大深度地下工事を行う東京外環道では、家屋調査が行われていることも示し、「家屋調査もしないで万が一被害が出たらどうやって立証するのか」と語り、「国交省は認可をすべきではない」と求めました。

(7月14日 しんぶん赤旗)