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設楽ダム必要ない 豊川下流の市民らシンポ

 
 愛知県豊橋市で21日、「豊川下流域の住民として設楽ダムをどう考えたらよいか」公開シンポジウムが開かれました。東三河地域の住民や自治体労働者、研究者でつくる東三河くらしの自治研究所の主催。100人が参加しました。

 設楽ダム(設楽町)は国と愛知県が豊橋市、豊川市など下流地域の水資源が必要だと1973年に計画。総貯水容量は9800万平方?で、県内一大きなダムです。民主党政権時に「見直し」の対象になり凍結しましたが、自公政権になり着工を決定。現在、水没地域の賠償を終え、資材搬入用道路の建設中です。ダムの本体工事は始まっていません。

 パネリストの伊藤正志さん(農民運動愛知県連合会会長)は、1980年より、豊橋市の農地面積が32%も減り、農業従事者が57%も減っている現状を報告。異常気象、渇水期の用水確保も対応できると述べ、「豊川用水の水は足りているから、設楽ダムは必要ない」と話しました。
 鈴木輝明さん(名城大学大学院特任教授)は国産アサリの6割を占める三河湾のアサリについて、」稚貝大量発生のメカニズムを紹介。「ダム建設によるアサリ稚貝の影響は不明だが、河川流量は三河湾東部海域に大きな影響を与える。県は調査、研究し、不安を持つ漁民に説明すべきだ」と述べました。
 市野和夫さん(元愛知大学教授)は、ダム建設予定地周辺で活断層の疑いの濃い東西方向の断層、岩盤のゆるみや漏水が見つかったことを指摘。「まだ中止はできる。愛知県が『水は必要ない』と水道用水の水利権を返上すればいい。大村秀章県知事、県議会への要請や署名運動に取り組もう」と強調しました。
 司会の宮入興一・愛知大学名誉教授も発言。「総事業費は基本設計(2008年)の2070億円から昨年9月に変更が発表され、330億円増え2400億円になった。今後も『人件費、建材料費高騰』を理由に増額が予想される」と懸念を語りました。

 参加者から「事業費が東京五輪のように大幅増にならないよう監視する必要がある」、「矢作川は上流にダムができ、アユやアサリが取れなくなった。環境の悪化が原因。一度建設したら取り返しがつかない」、「農業、漁業、環境など関係する各分野で草の根から運動をおこそう」などの発言が相次ぎました。
 シンポジウムに先立ち、市野氏が「市民が再検証する設楽ダム事業」と題して記念講演しました。
(1月24日 しんぶん赤旗)