ニュース

TPP参加是非問う 市民が政府と意見交換会

愛知

 
 環太平洋連携協定(TPP)交渉による、日本の「食」と農業への影響を考える「市民と政府の意見交換会」が17日夜、愛知県一宮市で開かれました。愛知、岐阜両県の市民団体が、市民の率直な疑問や不安を出し、対等な立場で政府と議論しようと企画したもの、中部地域では初めてです。仕事帰りのサラリーマンや農業従事者、学生ら約100人が参加しました。
 
市民側有識者として池住義憲(立教大学特任教授)、神田浩史(西濃環境NPOネットワーク副会長)、市來圭(共立総合研究所主任研究員)の各氏が出席。政府側kら、安東隆(内閣官房参事官)、牛草哲朗(農林水産省上席交渉官)、土屋武大(内閣官房参事官補佐)の各氏。各氏が出席しました。

四つの不安

 主催者側から「四つの不安」が示され、政府側が答えました。

 一つめは、現在約40%の食料自給率がさらに低下する「不安」です。牛草氏は、全世界の国に対し関税をゼロにした場合、農産物の生産減少額は4兆1000億円にのぼり、食料自給率はカロリーベースの14%になるとの試算を示し、「試算は政府が何も対策を講じなかった場合のもの。今の時点ではどんな影響があるのかは想定できない」と述べました。

 二つ目の食品の安全性への「不安」には、日本の食品検査の科学的正当性をしっかり主張していきたいと述べました。

 三つめの農業が果たしてきた環境保全機能が喪失することへの「不安」には、影響額の試算方法は世界共通認識となっておらず、輸出入国間でせめぎ合っている状況だとしました。

 4つ目は、農業従事者の減少や耕作放棄地の増加など、農業基盤そのものの崩壊への「不安」は、「農業基盤は一度失われたら、二度と取り戻すことができない。これを踏まえて考えていく必要がある」と述べました。

参加者次々 

これを受け、池住氏は「例外なき関税撤廃は、食の安全はもとより、多様な自然環境や地域の食文化をも破壊する。交渉参加は反対だ」と語りました。
 
神田氏は、農村の衰退は農業貿易自由化と密接な関係があり、交渉参加で国内農業は全滅する恐れがあると指摘し、世界の飢餓人口は9億人にのぼるのに、耕作地を放棄して食料を大量に輸入するのは許されないと述べました。

 市來氏は「貿易ルールをきちんとつくるために交渉に参加すべきだ。政府間だけでなく、民間レベルでの連携、交渉が必要だ」と語りました。

 会場からは「一部の輸出大企業のための条約なら、交渉参加は拒むべきだ」「交渉に参加したら、食品の遺伝子組み換え表示はなくなるのか」「本交渉に入ったら、交渉から抜けることは可能か」「TPPでメリットはあるのか」などの質問が相次ぎました。

 職場の先輩に誘われて参加した男性(28)=岐阜県大垣市=は「食料自給率の異常な低さなど、日本の農業の深刻な状況に驚きました。なぜこんなに衰退したのか、TPP問題とあわせて自分なりに調べたい」と語りました。

共同をさらに

 参加した日本共産党のもとむら伸子参院選挙区予定候補は「政府側の説明は、四つの不安を解消するものではありませんでした。情報公開も不十分で、これでは交渉参加はできません。TPPに不安や懸念を持つ人や団体と共同を広げ、歯止めをかける国会議員を増やさなければなりません」と話ました。(12月21日)