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名古屋で「事業仕分け」実施ー利用者抜き現場みず1時間で

 

 名古屋市が実施した「事業仕分け」(10月21日~23日)に、傍聴した市民から「利用者の声も聞かず、納得できない「ムダな大型開発事業こそ仕分けすべきだ」など怒りの声が上がっています。
 対象となった30事業の結果は、「廃止」6、「見直し」20、「継続」4。無作為抽出された市民判定員(定員20人。実際の出席者は17人から18人)が、所管部局による事業内容の説明と「学識経験者」の質疑を聞いて「判定」したものです。

私立女性会館、市立休養温泉ホーム松ヶ島ー廃止、

 「市立女性会館」が「廃止」とされたことについて、新日本婦人の会愛知県本部の安藤満寿江会長は「ほとんどの市民が知らされないなかで『判定』するやり方は間違っています。納得できません」と語ります。同会館はジェンダーの視点で多彩な社会教育講座を開くとともに、女性学習グループへの支援も行い多くの市民が利用しています。「ジェンダー平等が大きく立ち遅れている日本社会で、これを補う重要な役割を果たしています。教育は本来、目先の効率性で評価できるものではありません」

 三重県桑名市にある「市立休養温泉ホーム松ケ島」も「廃止」の「判定」に。6��歳以上の高齢者や障害者などの、休養と心身の健康の増進を図ってきた施設で、障害向けの食事や個室浴室を設け、利用率は100%近くに達しています。
 傍聴した男性(72)は「『判定』に憤りを感じます。1泊2食で6000円(60歳以上)と安く、会議室など設備も充実しているので、仲間といっしょにこれまで何度も利用しました。本来なら、利用者の声を聞き、時間をかけて慎重に議論すべきです」と語ります。

敬老パスー見直し

「敬老パス」の「見直し」判定に全日本年金者組合愛知県本部の吉田昂弘(たかひろ)委員長は、「けしからん話です。高齢者の健康増進にとどまらず、街の活性化や公共交通機関の維持にも役立っており、市の政策全体の観点から検討すべき問題です。河村たかし市長は『市民参加型』と言い張りますが、中部空港第2滑走路建設など中部財界が要求するムダな大型開発事業の財源づくりが本当の目的であり、『仕分け』はそのカモフラージュにすぎません」

 「事業仕分け」の会場前では連日、市民団体や労働組合が福祉・市民サービスの切り捨てに反対する宣伝を繰り広げました。市が事前に公募したパブリックコメント(意見公募)を発表しなかったことへの批判もあります。

 日本共産党の山口清明市議は「当事者を抜きに、現場をみることもなく、わずか1時間で『判定』を下させる手法はおかしい。『判定』を事実上誘導するかたちとなった、『学識経験者』のあり方も問題だ」と批判します。そのうえで、「『判定』結果はあくまで市の参考にされるだけで、これで決まったわけではありません。パブリックコメントをすみやかに公表させ、市民の声を来年度予算に反映させるよう全力を尽くします」と話します。(10月26日)