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神田県政と「ポスト万博」政策批判

もくじ

【国の悪政いいなり、万博・空港など大型開発優先の神田「オール与党」県政は県民に何をもたらしたか】

(1)福祉・くらし・教育・防災の施策の切り捨てで、格差拡大を助長

(2)大企業中心、大型開発優先で、地域経済の破壊と借金大県に

(3)「環境重視」のかけ声のもとで、すすむ環境破壊

(4)「戦争する国」づくりに対応し、自衛隊基地強化と戦争規定の国民保護法の具体化による「戦時体制」づくり

(5)小規模な自治体を押しつけ合併でつぶし、地方政治を破壊する道州制を推進

(6)県民に情報を公開せず、県民参加を拒否する暗闇県政に

【「ポスト万博」で神田「オール与党」と中部財界がめざすもの―「新しい政策の指針」「あいち行革大綱2005」批判】

(1)国際交流大都市圏構想で、駅前再開発と徳山ダム導水路、設楽ダム、伊勢湾口道路など大型開発推進。

(2)外国企業の誘致や産業立地への助成等大企業中心の産業政策

(3)自動車との共存による環境戦略の名で、自動車優先、産廃放置の環境施策

(4)「スーパーハイスクール」「先端医療技術施設」など県民の切実な要求とはかけ離れた教育・医療施策

(5)道州制の導入と「協働」という名で自治体の役割放棄

(6)県民サービスを大幅に低下させる「行革」

【国の悪政いいなり、万博・空港など大型開発優先の神田「オール与党」県政は県民に何をもたらしたか】

神田「オール与党」の8年間の県政は何だったのか県民の立場から検証することが求められています。神田「オール与党」県政は、一言で言えば、国の悪政に追随し県独自の施策を最小限にした県政でした。

?万博の成功は「ホント」?

同時に、神田県政の最大の目玉とされた愛知万博には、愛知県を中心として多くの人が参加をし、イベントとしては大きな成功であるとの評価が、県、博覧会協会、マスコミを挙げてされました。その大きな一つに、2000万人を超える観客の動員によって100億円を超す黒字が生まれたことが言われています。しかし、愛知万博には会場建設費を含め基盤整備に多くのお金がつぎ込まれています。博覧会協会自身が経済効果の計算のため算出した数字では低く見積もって、3051億円。中部国際空港建設も含め一連の公共事業をあわせて2兆6362億円の建設投資がされています。これらの半額近くが県債(県の借金)となっており、今後の県政に否定的な影響を与えるものとなっています。これを考えれば決して「黒字」ではなく、経済的に成功とはいえません。観客の動員についても、県内の小・中・高校生の万博への参加が事実上強制として行われ、多大な負担を教師や子供に強いたこと、県職員の万博参加券の購入と販売の押しつけ、トヨタをはじめ中部企業の社員の動員など自主的でない参加が少なくなくあったことも見ておかなければなりません。

?新空港の前島の未契約地は6割以上

中部国際空港建設も、トヨタの「カイゼン」路線で経費の大幅な削減がされ、PFI事業(公共性のある事業を民間主導で行うこと)として成功したように宣伝されていますが、低金利が国民に押し付けられる中で、当初計画していた借金の金利が大幅に下がったことが大きく反映しているにすぎません。空港を常滑沖に建設するため、県企業庁が強引に開発した前島(空港対岸部)は県が借地料を半額にしたにもかかわらず、いまだ進出企業は3社(?)にとどまり、未契約地は6割以上残されています。これらの事実を冷静にみつめた神田県政の検証が必要です。

?県民犠牲の神田県政

この検証を行えば、神田「オール与党」の8年間のもう一つの特徴は、大型開発の起爆剤である、愛知万博開催と中部国際空港建設のために、県民の税金をつぎ込み、「行革」による県職員削減や施設の統廃合をすすめ、県民の福祉・くらし・教育・防災・環境など県民が切実に願っている施策を切り捨て、借金を大幅に増やした県政でした。

(1)福祉・くらし・教育・防災の施策の切り捨てで、格差拡大を助長

 神田県政の以前の鈴木県政は「道路の上を福祉が走る」と豪語し、大型開発をすすめればおのずと福祉・教育の施策がすすむといいながら、実際には、福祉・教育の施策はなおざりになれ、全国的にも低い水準にとどめられていました。神田県政は、鈴木県政時代に誘致計画が決まった愛知万博計画と中部国際空港建設のために、人員も金も注ぎ込み、県民の福祉・くらし・教育・防災の施策をいっそう最低水準へと押し下げ、県民の中での格差拡大を助長しました。

?県民サービスを低下させる「行革」

具体的には、福祉・くらしの施策の予算を切り捨て、「行革」(第3次行革大綱、改訂第3次行革、あいち行革大綱2005)の名で県の職員を削減し、施設を統合しました。この間、民間社会福祉施設運営費補助、民間保育所運営費補助、子ども会活動費補助、過疎地域スクールバス運営費補助、文化活動事業費補助など補助金が縮小・削減されました。国民健康保険所業費の補助金は2000年度と比べて三分の一まで引き下げられ、市町村の保険料引き上げの原因となっています。長年、愛知県のために苦労されてきた高齢者をねぎらう敬老金支給の費用も六分の一以下に削減され、百歳のみの支給とされました。福祉・教育・防災の予算についてはもっと顕著です。歳出に占める民生費の割合は7・32%(03年度 全国39位 全国平均8・11%)、児童福祉費の割合は1・68%(03年度 全国39位 全国平均1・96%)、生活保護費の割合は0・27%(03年度 全国43位 全国平均0・71%)、災害復旧費の割合は0・05%(03年度 全国43位 全国平均0・42%)、その一方で警察費の割合は7・77%(03年度 全国8位 全国平均6・78%)と高いものになっています。特に、民生費の割合は神田県政以前の98年度は全国16位であり、神田県政のもとで民生費の抑制が大幅に進められた結果、全国最低クラスになりました。県職員の削減も大幅にすすめられた。99年度以降、増減あわせて2540人の定員が削減されました。県関係団体でも60人近い職員定数が削減されています。マスコミ報道等で警察と教員は定数が増加しているように報道されますが、一貫して増加しているのは、警察のみであり、教員は04年度のみの増加であり、99年度以降で見れば約900人の定数減となっています。本来、県民サービスのために必要とされる県職員の雇用からみれば、約1万1000人を超える職員が失われ、県民サービスが低下させられたのです。

?福祉、教育は全国最低クラス

こうした県政の結果、福祉の面では、特別養護老人ホームの入所待機者数は増加し、2005年2月1日時点で4万1562人であり、02年3月調査時点と比較して、1・4倍に増加しています。老人ホームの定員数(老年人口1000人当たり)が全国44位、児童福祉施設定員数(人口1万人当たり)が全国38位、身体障害者更正援護施設定員数(人口10万人当たり)が全国39位(98年度は36位)となっています。
教育の面では、小学校教員数(児童1人あたり 全国44位)、中学校教員数(児童一人あたり 全国46位)、保育士数(在所児童1人当たり 47位)と全国最低クラスを続けて、文化施設も、公民館数(人口100万人あたり)が全国43位、図書館数(人口100万人あたり)が全国46位、勤労青少年・婦人福祉施設数(人口100万人あたり)が全国43位と同様です。

?医療、防災の遅れは深刻

県民のいのちに直結する医療、防災の面も深刻です。
全国的に医師不足が自民党の医療費抑制政策のもとで助長されましたが、愛知県の医療施設に従事する医師数(人口10万人あたり)は全国37位、保健師数(人口10万人あたり)も全国43位、一般病院病床数(人口10万人あたり)が全国43位となっており、大都市の名古屋圏、尾張東部圏を除けば、県内の医療圏は軒並み全国平均を大きく下回る医師不足となっています。その結果、東三河の拠点病院の一つである新城市民病院が、産婦人科の閉鎖、小児科の縮小を行い、休日や夜間の救急医療に対応できなくなったことをはじめ、多くの公立病院が診療科の縮小・廃止や他の病院との統合を余儀なくされています。とりわけ、産婦人科、小児科は深刻で、県が調査した県内の小児科155病院のうち19、産婦人科76病院のうち13が医師不足のため診療が困難になっています。逆に、国の指導のままに産婦人科の医師を集約した名古屋第1赤十字病院では、患者が殺到し受け入れることができなくなっています。県はこれまで実態の調査もせず、放置してきたのです。
全国の最優先の地震対策が東海地震対策となっていますが、防災の面でも、救急自動車数(人口10万人あたり)が全国43位、消防ポンプ自動車台数(人口1万人当たり)が全国43位、消防吏員数(人口10万人あたり)は全国41位と、全国的位置づけとはかい離した異常な事態となっており、耐震診断した1981年以前に建てられた木造住宅の57・1%が「倒壊または大破壊の危険あり」と判定され、そのうち7%弱程度しか改修していないにもかかわらず、民間木造住宅耐震診断補助が減らされ、耐震改修費補助の補助額も現状維持にとどまっています。
 
まさに、福祉・教育・防災施策を遅らせた神田「オール与党」の責任は明確です。

(2)大企業中心、大型開発優先で、地域経済の破壊と借金大県に

 神田県政のもとで、「万博・空港」を最優先課題として、その口実のもとに大規模な大型開発がすすめられました。先にも述べたように、万博・空港関連で県自身の資料でも、万博関連では2132億円(この他に貸付金が88億円、06年3月)、中部国際空港関連では906億円(この他に貸付金268億円、04年2月試算)の県民の税金が投入されました。多大な経済効果があったと強調した博覧会協会が試算した基礎資料には、万博・空港関連で、東部丘陵線(1021億円)、愛知環状鉄道(183億円)、名古屋瀬戸道路、猿投グリーンロード4車線化など地方道、街路の整備(1857億円)、東海環状自動車道(6700億円)、第二東名高速道路(4910億円)、名古屋高速道路(1789億円)、中部国際空港周辺整備(2277億円)、空港連絡道路(440億円)、知多横断道路(1150億円)の事業と万博・空港の本体事業で、2兆6362億円の建設投資がされたとされています。この巨額の建設投資に多額の県民の税金がつぎ込まれ、その半数以上が県債として、今後の借金として残されたのです。

?壮大なムダ、ダム事業

無駄な公共事業はこれだけではありません。壮大なムダとして、全国各地でダム事業の見直しがすすめられましたが、愛知県では、名古屋市の「オール与党」と一体となって、徳山ダム建設と設楽ダム建設がすすめられています。愛知県でも年々水需要は低下しており、開発水量に対して最大取水量は水道用水で6割程度、工業用水で4割程度にとどまっています。県の担当者も「阿木川ダム(1991年概成)、長良川河口堰(1994年完成)、味噌川ダム(1996年概成)の開発水量はいらない」と言っている始末です。洪水防止のために必要といわれますが、実際はダムだけでは洪水対策にならないことは世界的にも明らかになっており、アメリカではダム撤去が始まっています。しかし、ダム建設は着々とすすめられ、06年9月25日から徳山ダムの試験湛水が始まりました。08年から本格稼動すると言われていますが、徳山ダムの水を愛知県で利用するための導水路は早くても15年にしか完成しません。水の利用ができなくても08年より県民への負担は押し付けられます。県民負担の合計額は、利子を含めて680億円もの多額なものとなります。これに加えて導水路事業(700億円~900億円)、設楽ダム建設(2000億円)の負担が押し付けられようとしています。

?すさまじい大企業優遇

大企業への優遇も同様にすさまじい。都市再生の名の下に、名古屋駅を中心とした高層ビル建設が相次いでいます。名古屋駅前には99年にJRセントラルタワーズが建設されたのに続いて、ミッドランドスクエア(豊田毎日ビル 2007年春完成 総事業費700億円 事業者 東和不動産・トヨタ自動車・毎日新聞)、名古屋ルートセントタワー(2007年完成 事業者 名鉄・中電・トヨタ・住友生命・大成建設ほか)、モード学園スパイラルタワーズ(2008年完成 事業者 モード学園・三井不動産)の建設がすすめられていますが、これら大企業が建設するビルに国・県・名古屋市合わせて60億円を超える補助金がつぎ込まれています。06年度県予算をみても、高度先端産業立地促進補助金として、11億7253万円が豊田自動織機、和光純薬工業、三菱重工、富士重工、オムロン5社に投じられ、三菱重工への補助金は4年分割で計10億円の補助金が出されることとなりました。外国企業の誘致を中核とする国際交流大都市圏構想関連事業に40億円余の予算が投じられ、県内に進出する外資系企業に事務所賃貸料や進出準備経費などを半額補助する制度までつくられています。最近では、トヨタが事実上のオーナーとなっている第3セクター「蒲郡海洋開発会社」(レジャー施設「ラグーナ蒲郡」の経営や分譲住宅の販売などを行っている)の赤字をうめるために、42億5000万円もの増資に応じています。

?万博・空港では地域経済は活性化しない

その一方で、中小企業や地域経済への援助はどうか。神田県政になって、中小企業や地域経済を支援する商工業振興の予算は大幅に削られました。98年度約2300億円の予算は06年度約1900億円の予算へと約400億円近く削減され、一般会計に置ける構成比は9・9%から8・8%に1ポイント強引き下げられたのです。
万博・空港は多大な経済効果をもたらしたというが実際はどうでしょうか。万博開催地である瀬戸市の商工会議所中小企業相談所がまとめたアンケートでは、期間中の売上高は、前年同期と比べ「増加」は10.3%、「減少」が48.0%、「横ばい」が39.1%となり、当初の予想と比べて「下回った」が46.7%、「予想通り」が46.4%と地元への経済効果は限られたものでした。閉幕後の売上高は、「横ばい」が60.6%、「減少」が27.8%、「増加」が8.3%となり、瀬戸商議所は「万博効果は残念ながら、小規模事業者の大半で少なかったと総括できる」としています。空港建設地の常滑市も同様で、常滑市の土地価格の下落に歯止めはかからず、06年9月に県が公表した基準地価の下落率「ベスト5」に住宅地、商業地とも常滑市が半数を占めています。逆に、万博のアクセスのために建設した東部丘陵線(リニモ)は万博開催後の1日乗客数が予定の半分1万6000人程度にすぎず、赤字を広げており、小牧市桃花台のピーチライナーが多大な借金をつくって廃止に追い込まれたように、新たな借金を県民におしつけようとしています。

?予算規模の1・8倍の借金(県債残高)

このように、大企業奉仕、大型開発優先、地域経済なおざりの県政のもとで借金は大きく膨らみました。神田県政になってから県債を1兆4000億円(県民一人あたり20万円)増やし、県債残高は一般会計の06年度末見込みで3兆8344億円(県民一人あたり54万円)と、予算規模の1・8倍にふくれあがり、利子払いだけで毎日1億8千万円が消えています。県債の半数は「建設債」(以前の土木債)であり、その大部分は道路となっています。まさに、トヨタを中心とする中部財界に奉仕するために多くの借金が県民に背負わされたのです。

(3)「環境重視」のかけ声のもとで、すすむ環境破壊

 愛知県は「環境万博」の実施県として「環境先進県」をめざすといって、2002年に「自動車環境戦略」を策定し、05年度までに、二酸化窒素による大気環境基準の達成、10年度までに浮遊粒子物質による大気環境基準の達成、温室効果ガスの6%削減をかかげました。

?地球温暖化の促進

しかし、自動車の生産台数、保有台数とも愛知県は全国一であり、先に述べたように次々に道路建設がすすめられ、その結果、自動車走行量は大きく伸びています。窒素酸化物の36%、浮遊粒子物質の46%を自動車が排出しており、個々の排出ガスの規制がされ、低排出ガスを含むエコカーの普及が80万台を超えたといっていても、総量規制がされない施策では改善はすすみません。実際、二酸化窒素、浮遊粒子物質の年平均値は「ここ数年横ばい」(05年度県環境白書)にとどまっています。逆に温室効果ガスの主因である二酸化炭素は削減どころか、基準年度90年度と比較して01年度は6・1%増加しており、代替フロンなどを含めて温室効果ガス自体も5・7%増加し、02年度は10%増加している始末で、地球温暖化を促進しています。

?海や土壌の汚染も深刻

水環境の悪化も同様です。中部国際空港建設は伊勢湾の常滑沖にヘドロを沈殿させ、伊勢湾における赤潮、苦潮の発生を促進しました。赤潮の発生のべ日数は97年の177日から04年には2倍の334日となっています。その結果、近年、ナミガイ、タイラギなどの貝類が激減していることが潜水漁業の漁民から報告されています。
 工場の跡地のトリクロロエチレンなど化学物質による土壌汚染は県内各地で報告されており、放射性物質であるフェロシルトを埋め戻し材として県が容認したことにより、多大な埋め立てがされ今日も全量撤去されずに残されています。産業廃棄物の発生量は全国6位の産廃大県となっており、不法投棄や過剰保管があとをたちません。産廃業者に処理委託をしてことをすますのではなく、排出抑制を大企業に求め、最終処分に至る経済的負担を含めて排出業者に責任を負わせなければ改善はすすみません。

?万博の名で自然破壊

自然環境の保護についても、万博のための会場整備で、オオタカの営巣の減少、自然植生のシデコブシやモンゴリナラ、サクラバハンノキなど6000本の木が伐採され、ギフチョウ、ハッチョウトンボ、ダルマガエルなどの生息数も大幅に減り、イタセンパラは生息を確認できなくなりました。
 
「環境先進」どころか、神田県政のもとでの大型開発、道路建設の促進により「環境破壊」がすすめられたのです。

(4)「戦争する国」づくりに対応し、自衛隊基地強化と戦争規定の国民保護法の具体化による「戦時体制」づくり

神田県政のもとで、国の日米軍事同盟の世界規模の拡大と再編戦略に沿って、自衛隊の小牧基地を先頭とする県内の自衛隊基地の軍事強化と在日米軍との共同行動の拠点基地化がすすめられました。

?県内の自衛隊基地強化

小牧基地に所属するC―130H輸送部隊は、イラク特措法に基づき、米軍への占領支援を行っているが、島しょ部に対する侵略への対応など新たな作戦を遂行できる、ヘリ用の空中給油機能を付加した改良型のC―130H輸送機も小牧基地に配備しようとしています。また、小牧基地が併設する県営名古屋空港は、米軍機による飛来・軍事利用を含め、自衛隊機の離発着が大幅に増えています。さらに、米軍は先制攻撃戦略支援に不可欠な空中給油部隊の役割を同盟国にも肩代わりをさせ、共同訓練・演習を行っていますが、航空自衛隊初の空中給油・輸送機が07年2月に1機目が配備され、09年度までに4機が配備され150人の部隊が予定されています。また、06年10月に戦傷者などを素早く治療する機能を持つ「航空機動衛生隊」が発足し、09年度までにさらに2隊の設置が予定されています。
 さらに、海外での戦争準備として渥美半島・大山自衛隊通信所跡地に三重県明野基地のヘリ・パッド(着陸訓練場)がつくられ、06年9月に本格訓練の実施が行われようとしたこと、万博を口実とした海外の軍艦の名古屋港への寄港や海上自衛隊の展示訓練など名古屋港をはじめとする県内の港湾の米軍及び自衛隊の軍事利用の強化、三菱重工などによる「ミサイル防衛戦略」推進がすすめられています。

?自治体の役割を否定する国民保護体制づくり

同時に、国民保護法のもとで、県民を戦時体制に組み込む、国民保護対策本部が作られ、国民保護計画が策定されました。国民保護計画は、第1に、米軍と自衛隊の軍事行動を最優先するための県民動員計画です。第2に、アメリカの戦争に、県や公共機関、その職員を動員する計画です。第3に、「高度の公共の福祉のため」(02年7月14日政府見解)に国民の自由と権利を計画です。まさに、県民をアメリカの戦争に協力するために、行動も財産も奪う計画であり、「住民の福祉の増進をはかる」という自治体の役割を真っ向から否定するものです。

(5)小規模な自治体を押しつけ合併でつぶし、地方政治を破壊する道州制を推進

 旧合併特例法と新合併特例法のもとで、県のイニシアチブによって、急速に市町村合併がすすめられました。多くの市町村では住民から「押しつけ合併反対」の声が寄せられ、合併が白紙に戻った例や、住民投票が実施され合併反対が多数を占めて、合併が撤回された美浜町、南知多町などの例も生まれています。しかし、県の強力な指導と推進のもとで、99年4月に88あった市町村は現在、63市町村となっています。押しつけ合併が強行されたところでは、福祉・くらしの施策が低い水準の自治体にあわせて後退させられたところが多く見られました。一宮市に編入された木曽川町では、国保税や保育料の値上げがすすみ、小中学校全学年で行われていた30人学級が、一宮市の水準にあわせて小学1年生は33人学級、他の学年は40人学級に後退させられました。稲沢市に編入された祖父江町でも、学童保育の有料化、町内巡回バスの路線縮小・有料化など住民に負担増がおしつけられました。また、最終的に三町が合併した田原市や四町を吸収した豊田市などでは、吸収された町役場の職員がなおざりに扱われて、職員が減り新たなサービス低下が生まれています。このように神田県政のもとで強引にすすめられた押し付け合併は、自治体の住民のくらしへの施策を後退させ、新たな住民負担を押し付けたのです。
 そのうえ、神田知事は、国と地方の形を変え、地方政治をつぶす道州制の導入を積極的にかかげ推進してきました。まさに県という地方自治体の役割の否定の先頭にたったのです。

(6)県民に情報を公開せず、県民参加を拒否する暗闇県政に

 神田県政の以前の鈴木県政は、「オール与党」とともに県民への情報公開を徹底的に拒否し、愛知万博の開催の是非を問う県民投票を求める直接請求運動を否定するなど県民の声に背をむけつづけてきました。神田県政になり、当初は国の流れと軌を一にして情報公開制度がつくられ、形式的には県民への情報公開がすすんだかに見えました。しかし、県民への徹底した情報公開をないがしろにし、県政への県民参加を拒否する暗闇県政の本質は変わっていません。神田県知事はその後、31万人余の県民が署名した万博県民投票の県民の要求を、「県民投票という形で国際博覧会開催の是非を問う本条例案については、これを制定する必要はないものと考える」と拒否しました。県民投票を求める署名をするにいたりませんでしたが、愛知万博計画に意見をもつ多くの県民の声を無視するものであり、県民の声に基づく県政という民主主義の当然のあり方を否定したものです。また、県知事が市民の代表と直接会って意見に耳を傾けるのは「健康と環境を守れ!愛知の住民いっせい行動実行委員会」の交渉のみです。

?情報公開暗闇度ワースト5

06年3月に全国市民オンブズマン連絡会議が発表した、全国情報公開度ランキングによれば、愛知県は全国43位の公開度、いいかえれば暗闇度ワースト5と評価されました。その内容は、警察・公安情報の非開示とともに、新たな「官から民へ」を促進する指定管理制度、政務調査費の情報公開が極めて悪いことが指摘されています。
 県政の調査研究費である政務調査費は、議員一人あたり月額50万円支給され、年間総額6億円余が所属会派に支給されています。しかし、使途については、会議費、資料購入費など項目の結果報告がされているだけで、議員としての活動報告もなければ、領収書公開もなされていません。この間、半田市や常滑市などで、政務調査費を使った視察で会議を抜けて観光していたことや、自民党名古屋市議団がプールしたお金を選挙費用として個人に分配するなど、政務調査費の不正使用が住民から厳しい批判を浴びています。県民の代表である県議会が議会のお金の使いみちを県民に明らかにできないようでは、暗闇県政の共犯とならざるをえません。日本共産党が県会に議席があった時には、領収書を自主公開し、県政の透明化に全力をあげたものです。

【「ポスト万博」で神田「オール与党」と中部財界がめざすもの

 しかし、神田知事と「オール与党」はこれまでの県民犠牲の県政に反省するどころか、「ポスト万博」として中部財界が、国とともに推進する「グレーター・ナゴヤ・イニシアチブ(GNI)」構想にのって、外国企業の誘致を軸とした大名古屋経済圏をつくるために、いっそう大型開発をすすめ、県民の福祉・くらしの施策をきりすてようとしています。その具体化が、06年3月に決定された「新しい政策の指針」であり、05年2月に策定され推進されている「あいち行革大綱2005」です。

(1)国際交流大都市圏構想で、駅前再開発と徳山ダム導水路、設楽ダム、伊勢湾口道路など大型開発推進。

 「新しい政策の指針」は愛知の将来展望として、人口減少社会と未曾有の高齢化社会が到来するとしながらも、「2025年に向けて、一人当たりの県民所得は増加し、県経済全体でもプラス成長が実現できる」と述べています。先にも述べたように勤労者の雇用者報酬が年々低下しています。何を根拠に県民所得が増えていくと述べているかといえば、「女性や高齢者等の労働参加を高める」「生産性の向上」「企業によっては正社員の比率を高め」ることを前提にしているのです。子育てや高齢者への支援をないがしろにし、非正規社員の増加に対して何ら抜本的な対策を県としてうたないままの空虚な見通しです。
にもかかわらず、「指針」は、2%強の経済成長ができるとして、グローバル化がすすむため、空港・港湾、高速道路を活用した国際交流拠点が不可欠という立場で「産業や文化を世界に発信する国際交流大都市圏づくり」を基本課題の第1にかかげました。
この課題を具体化したものが、国際見本市など国際イベントの開催、中部国際空港の第2滑走路の実現、名古屋港で「スーパー中枢港湾」強化として水深16メートル岸壁への次世代高規格コンテナターミナルの整備、三河港で自動車専用埠頭の拡張、「伊勢湾口道路や三河湾口道路の構想の推進」をはじめ第2東名・名神、名古屋環状2号、名古屋高速、名豊道路など広域道路ネットワークの形成、「リニア中央新幹線実現をめざした取り組み」、徳山ダム及び木曽川水系連絡導水路の建設促進、設楽ダム建設の手続きの着実な推進など「国際交流基盤の強化」という大型開発のいっそうの促進であり、ミッドランドスクエア、名古屋ルートセントタワーなど名古屋駅周辺を中心とする大規模な民間再開発支援による「国際ビジネスの一大交流拠点の形成」です。

(2)外国企業の誘致や産業立地への助成等大企業中心の産業政策

 「指針」は基本課題の第2に、「産業技術の世界的中枢性の強化と成熟社会を担う産業展開」をかかげています。その内容は、「外資系企業の誘致、外国人技術者・研究者の集積などが地域活力の源」という認識にたって、地域の中小企業の活性化という地域経済活性化の本道ではなく、国内外企業の戦略的誘致をかかげ、そのために必要な産業用地の確保、誘致準備のための助成や減税措置など企業にとって魅力ある地域環境づくりをすすめる「環伊勢湾地域における次世代産業クラスター(群れとか集団という意味)」の形成をめざしています。このクラスターを形成するための具体化として、産学と行政による共同研究の展開、大学発のベンチャー企業100社の達成、中小企業センターをつぶし新たに建設される、産業労働センター(仮称)に企業の国際展開を支援させる、万博会場跡地に建設される科学技術交流センターに高度技術人材育成をさせるなど「知の拠点」整備をかかげています。
 その一方で、愛知の経済の中心である、中小企業育成・活性化についてはほとんど何も語らず、逆に基幹産業である農林漁業については「企業的経営体の育成や民間資本の活用」「生産機能強化」と大企業による参入の促進を提唱し、日本独特の家族経営支援を否定しています。

(3)自動車との共存による環境戦略の名で、自動車優先、産廃放置の環境施策

 神田知事は「環境先進県」を強調しますが、「指針」では、「行政だけでなく県民や事業者も環境意識をよりいっそう高め、主体的に関わり」と意識改革を強調し、遅れている地球温暖化の防止については「温室効果ガスの排出削減が進んでいない民生部門、とりわけ家庭における脱温暖化の具体化が求められる」と家庭と住民に努力を求め、「住宅用太陽光発電の普及、家庭用コジェネ・燃料電池、風力発電の導入、屋上や壁面等の緑化」の促進をいっています。
しかし、温室効果ガスの中心である二酸化炭素の排出割合は、民生部門が21・8%に対し、産業部門が52・1%、運輸部門が17・7%と大企業と自動車による排出が7割近くを占めており、ここを改善しなければ、削減できないことは明らかです。
「指針」は企業に対しては、「資源循環がビジネスとして成り立つ」ことが必要と排出削減に取り組まないことを合理化し、逆に、先導的な循環ビジネスの創出・育成を「あいちエコタウンプラン」としてすすめることを強調しています。自動車についても、「自動車と公共交通機関が共存する地域づくり」と自動車温存を強調し、「自動車産業の世界的拠点として、脱温暖化をめざすクルマ社会」を発信するとして、全自動車の「エコカー」への転換をめざし、トヨタ自動車の次期販売戦略である、「燃料電池自動車の普及拡大」を述べています。自動車の総量規制のない対策では温暖化防止ができないことはこれまでの実績からも明らかです。
 産廃問題についても、「ゼロエミッション」を強調し、廃棄物の埋め立て処分量を10年度までに03年度の54%に削減するとしていますが、具体的には「リサイクル技術の向上」「廃棄物の適正処理」をかかげるだけで、肝心な排出業者による抑制についてはいっさい触れようとしていません。

(4)「スーパーハイスクール」「先端医療技術施設」など県民の切実な要求とはかけ離れた教育・医療施策

 県民の多くは、国の医療改悪や教育環境の悪化から、子どもの医療費無料制度の対象の拡大、全小中高校での少人数学級の実現など、安心して医療を受けることができ、子どもの健やかな成長を育む教育環境の整備を切実に願っています。しかし、「指針」がかかげる教育や医療・福祉はこの県民の切実な願いとかけ離れたものとなっています。
 教育の面では教員定数増や少人数学級は否定され、「家庭の教育力の回復・向上」が強調されるともに、モノづくり愛知の「DNA」を受け継ぐ人材づくりをめざし、高度な知識・技能、資格を習得できる「愛知版スーパーハイスクール」、「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール」、「愛知版マイスター制度(仮称)」などの創設が掲げられています。
 医療の面でも、「あいち健康の森」整備やがんの最先端医療・専門医の育成・研修の全国的拠点とするなどハード面での充実はかかげられますが、地域医療にとって深刻な医師不足問題への対策は全く考えられていません。

(5)道州制の導入と「協働」という名で自治体の役割放棄

 こうした施策をすすめるために「指針」は、「世界的な地域間競争に対応した、自立的な地域づくりを行う単位」としては、「道州制」がふさわしいとして、「県独自」に、「道州制の積極的な推進を図る」としています。しかし、道州制の導入は、国と地方政治の形を変え、軍事や外交、司法、金融などに国の役割を重点化し、財界が地方での大型開発をやりやすくすることを狙ったものです。県は、「住民の福祉の増進を図る」地方自治体ではなく、国の施策を地方に押しつける出先機関の「道州」に変質させるものにほかなりません。道州制導入の促進は地方自治体としての県の「自殺行為」にほかなりません。
 また、「指針」は、あらゆる行政分野で、NPOやボランティアとの協働を拡大し、市町村での行政との協働の本格的展開を強調しています。しかし、「新しい公共」の名で提唱される協働は、行政、企業、NPO、県民・ボランティアが等距離で公共の仕事にかかわり責任を果たしていくというもので、「住民の福祉の増進を図る」という自治体の役割や、企業の社会的責任を、県民と等距離にあるとして事実上低減し、その分、県民負担が増えることにつながりかねません。この点できちんとした役割の分担が必要ですが、その点はあいまいなものとなっており、この点でも自治体の役割の放棄につながりかねないものです。

(6)県民サービスを大幅に低下させる「行革」

 以上、指摘したように「新しい政策の指針」が示す方向は、万博・空港まですすめられてきた大型開発優先・大企業奉仕・県民犠牲の「愛知2010計画」の延長線上にあるものにほかなりません。
 県がこの路線をすすめるためには、いっそう予算の重点配分を行い、県民の福祉・くらしの施策を削って、職員の大合理化をすすめなければなりません。それが、今日すすめられている「あいち行革大綱2005」です。
 「あいち行革大綱2005」は、05年度から10年度までの「行革」計画で、07年度までに900億円、10年度までに2700億円の経費削減を図るとしています。そのために、1500人以上の県職員の削減、「適正化」の名による給与の引き下げの検討、ふれあい広場、勤労福祉会館、産業貿易館の廃止など04年度の4分の1以上の公共施設の廃止・民営化、県営住宅を含む県の80施設の指定管理者制度の導入とその6割の民間から公募、中高年齢離職者再就職支援事業の民間委託など事業の民間委託やNPO・県民との協働事業への転化などを実施するとしています。
 まさに、県民の福祉・くらしの施策に直結する職員を削減し、県民が利用していた様々な公共施設の廃止や民営化、事業の民間委託は、県民サービスをいっそう低下させることにほかなりません。

以上